自律神経の科学

「身体が整う」とはどういうことか
未読
自律神経の科学
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「身体が整う」とはどういうことか
未読
自律神経の科学
出版社
出版日
2023年04月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

最近「自律神経」という言葉をよく耳にするようになった。

「自律神経が乱れているかも?」「自律神経のバランスを整えよう!」などとよく言われるが、自律神経について、科学的根拠をもって説明できる人はなかなかいないのではないだろうか。

自律神経は、内臓の働きを調整し、身体の働きをバランスの良い状態に保っている神経である。日頃から私たちの無意識下で、眠っている間にも休まず働き続けてくれている。心拍や血圧が上下すること、胃腸が消化を進めること、涙や唾液や汗が出ること……。自律神経は全身で起こるさまざまな反応に関わっているのだ。本書では、そんな自律神経のメカニズムについて、歴史的な研究や身近な例について触れながら、丁寧に解説している。

著者によれば、自律神経は無意識下で働くが、私たちの意識や行動によっていくらか調整することもできるという。朝起きたらまず日の光を浴び、昼間は適度に運動する。仕事の合間にリラックスする時間を作り、時々はスマホやPCから離れる。自律神経を知ることで、「当たり前」とも思われるような生活習慣がなぜ大切なのかが見えてくる。「疲れが取れない」「よく眠れない」といったあなたの体の悩みも、自律神経を理解することで解決されるかもしれない。

本書の内容は専門的かつ網羅的だが、図解や具体例、易しい表現が用いられ、専門知識のない人でも読みやすいよう工夫されている。自律神経について「きちんと」学んでみたいという方に、ぜひおすすめの一冊である。

ライター画像
藤井亜子

著者

鈴木郁子(すずき いくこ)
1962年、北海道生まれ。幼少期を米国、ドイツで過ごす。お茶の水女子大学理学部生物学科卒業。東京医科歯科大学大学院歯学研究科高齢者歯科学専攻修了。歯学博士・医学博士。専門は生理学。東邦大学医学部生理学講座助手・講師を経て、現在、日本保健医療大学保健医療学部教授、昭和大学医学部生理学講座客員教授兼務。主な著書・編著書に『やさしい自律神経生理学 命を支える仕組み』(中外医学社)、『やさしい環境生理学 地球環境と命のつながり』『人間と生活 地球の健康を考える』(いずれも錦房)、『生理学をめぐる旅 研究を紡いだ若者たち』(中外医学社:近刊)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    自律神経は、身体の内側の環境をある一定の状態に保つための仕組みである。交感神経と副交感神経の「二重支配」と「拮抗支配」によって、常に変化する身体に対応し、巧妙な微調整をし続けている。
  • 要点
    2
    交感神経は活動に適した状態をつくる。緊張・興奮しているときに心拍が上がったり手に汗をかいたりするのは、交感神経の働きによるものである。副交感神経はリラックスしているときや食事中・睡眠中に優位になり、次の活動に備えて栄養分を蓄え、消化や排泄を進める働きを持つ。
  • 要点
    3
    健康増進と病気の予防のためには、よい生活習慣の継続によって自律神経のバランスを整えることが重要だ。

要約

自律神経の仕組みと特徴

自律神経の位置づけ

心身の不調は自律神経が原因だと言われることもある。自律神経への理解を深めれば、身体の悩みから解放されるかもしれない。

神経とは、身体の内外の情報を運ぶ器官である。神経系は、人体をつくる何十兆個もの細胞を協調的に動かすために、情報を伝えている。

神経系のうち、脳と脊髄を中枢神経系、そこから出ている個々の神経を末梢神経系と呼ぶ。末梢神経系のうち、身体の「外側」に働きかけるのが体性神経系であり、感覚神経と運動神経の2つからなる。そして、身体の「内側」に働きかけるのが、自律神経系である。

自律神経とホメオスタシス
ThitareeSarmkasat/gettyimages

生理学者のキャノンは、自律神経の役割について、「内部環境の恒常性の維持」であると説明した。内部環境とは、細胞同士の隙間を埋めている、血液やリンパ液などの細胞外液のことだ。海水によく似た成分であり、細胞が活動するための材料を供給するだけでなく、不要になったものを回収する役割を持ち、生命維持に不可欠なものである。この内部環境の成分割合がほぼ一定に保たれることを、「内部環境の恒常性の維持」と言っている。

キャノンは、このことを「ホメオスタシス」という言葉で言い換えた。内部環境は常に厳密に一定なのではなく、「ある範囲にゆらぎをもって保たれている」ことを示している。この「ゆらぎ」は「リズム」と呼んでもよい。

たとえば血圧や心拍は、日中は高く夜間は低いというリズムを持ちながら、「ある範囲内」で変動している。体温も同様に、36℃〜37℃付近を上下している。

自律神経は、この「ほぼ一定」の状態、ホメオスタシスを維持するための仕組みに関係している。

情報の伝わり方にも種類がある
solvod/gettyimages

体性神経系と自律神経系はそれぞれ、求心性神経と遠心性神経に分けられる。

求心性神経とは、末梢(各器官)から中枢(脳や脊髄)に情報を届ける神経である。目や耳からの情報を脳に届ける感覚神経は、体性神経系の求心性神経だ。

遠心性神経とは、中枢から末梢に情報を届ける神経のことで、手足につながる運動神経は、体性神経系の遠心性神経である。

自律神経系の求心性神経は、空腹など内臓の状況を教えてくれる「内臓求心性線維」だ。よく聞く「交感神経」と「副交感神経」はどちらも自律神経系の遠心性神経である。この後者2つの特徴について詳しく見てみよう。

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要約公開日 2023.08.24
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