心身の不調は自律神経が原因だと言われることもある。自律神経への理解を深めれば、身体の悩みから解放されるかもしれない。
神経とは、身体の内外の情報を運ぶ器官である。神経系は、人体をつくる何十兆個もの細胞を協調的に動かすために、情報を伝えている。
神経系のうち、脳と脊髄を中枢神経系、そこから出ている個々の神経を末梢神経系と呼ぶ。末梢神経系のうち、身体の「外側」に働きかけるのが体性神経系であり、感覚神経と運動神経の2つからなる。そして、身体の「内側」に働きかけるのが、自律神経系である。
生理学者のキャノンは、自律神経の役割について、「内部環境の恒常性の維持」であると説明した。内部環境とは、細胞同士の隙間を埋めている、血液やリンパ液などの細胞外液のことだ。海水によく似た成分であり、細胞が活動するための材料を供給するだけでなく、不要になったものを回収する役割を持ち、生命維持に不可欠なものである。この内部環境の成分割合がほぼ一定に保たれることを、「内部環境の恒常性の維持」と言っている。
キャノンは、このことを「ホメオスタシス」という言葉で言い換えた。内部環境は常に厳密に一定なのではなく、「ある範囲にゆらぎをもって保たれている」ことを示している。この「ゆらぎ」は「リズム」と呼んでもよい。
たとえば血圧や心拍は、日中は高く夜間は低いというリズムを持ちながら、「ある範囲内」で変動している。体温も同様に、36℃〜37℃付近を上下している。
自律神経は、この「ほぼ一定」の状態、ホメオスタシスを維持するための仕組みに関係している。
体性神経系と自律神経系はそれぞれ、求心性神経と遠心性神経に分けられる。
求心性神経とは、末梢(各器官)から中枢(脳や脊髄)に情報を届ける神経である。目や耳からの情報を脳に届ける感覚神経は、体性神経系の求心性神経だ。
遠心性神経とは、中枢から末梢に情報を届ける神経のことで、手足につながる運動神経は、体性神経系の遠心性神経である。
自律神経系の求心性神経は、空腹など内臓の状況を教えてくれる「内臓求心性線維」だ。よく聞く「交感神経」と「副交感神経」はどちらも自律神経系の遠心性神経である。この後者2つの特徴について詳しく見てみよう。
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