食欲人

未読
食欲人
出版社
サンマーク出版

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出版日
2023年06月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

食事のあと、お腹はいっぱいなのに「なんとなくもの足りない」と感じ、つまみやお菓子に手が伸びることはないだろうか。このとき、カロリーは十分摂っているはずだが「何か」が足りていないのだ。その何かとは、おそらく「タンパク質」である。

本書によると、昆虫も動物も人間も、ある一定のタンパク質量を摂取するまで食べ続けてしまうのだという。タンパク質量が足りていないと、それが満たされるまで食べ続けるため、カロリー超過となるケースもあるそうだ。

では、タンパク質だけ摂ればいいのかといえば、そうではない。炭水化物が少ないと寿命を縮めてしまうからだ。しかも、タンパク質の摂取量が過度に増えると、寿命や生殖にも悪い影響を及ぼすという。あくまで必要なのは「適正な量のタンパク質」なのである。

本書は、科学者である著者たちが自ら行った実験と研究を通して導き出された結果をもとに、生物と食欲の関係性を解き明かしたエキサイティングな一冊だ。実験対象はバッタ、コオロギ、ショウジョウバエ、ヒヒ、人間など多岐にわたる。生物が生まれ持った本能的な「食欲」は、私たちが想像する以上に完璧で、生存に基づいてプログラミングされていることに驚かされる。

本書はエビデンスに基づいたノンフィクションでありながら、謎を1つずつ解き明かす推理小説のようなワクワク感がある。「食欲」にまつわる壮大なストーリーを楽しんでほしい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

デイヴィッド・ローベンハイマー(David Raubenheimer, PhD)
シドニー大学生命環境科学部栄養生態学教授およびチャールズ・パーキンス・センター栄養研究リーダー。オックスフォード大学で研究員および専任講師を10年間務めた。世界中の大学や会議で講演を行っている。スティーヴン・J・シンプソンとの共著に『The Nature of Nutrition: A Unifying Framework from Animal Adaptation to Human Obesity』(未邦訳)がある。シドニー在住。

スティーヴン・J・シンプソン(Stephen J. Simpson, PhD)
シドニー大学生命環境科学部教授およびチャールズ・パーキンス・センター学術リーダー。主な受賞歴に王立昆虫学会ウィグルスワースメダル、オーストラリア博物館ユーリカ賞、ロンドン王立協会賞、オーストラリア勲章第二位など。イギリスやオーストラリアのメディアやテレビにたびたび取り上げられている。

本書の要点

  • 要点
    1
    タンパク質と炭水化物の配分が異なる餌をバッタに与えたところ、すべてのバッタが「理想的なタンパク質量」に達するまで餌を摂取した。人間も同様の実験では同じ反応を示した。生物の食生活は「タンパク質」に支配されているのである。
  • 要点
    2
    寿命と繁殖はトレードオフの関係にある。高炭水化物/低タンパク質食は長生きするが、子孫を多く残せない。一方、高タンパク質/低炭水化物食は繁殖に有効だが、短命になる。ただ、タンパク質の摂取量を増やしすぎると、寿命は縮み繁殖数も低くなる。
  • 要点
    3
    太古から人間は「自己改造」をすることで食環境の変化に対応してきた。しかし、その行動は栄養的には必ずしも正しいとは言えない。

要約

食欲と栄養の関係

生物は「正しい食事」を知っている

南アフリカ・ケープタウン郊外の自然豊かな集落。ステラはそこに住む25人の大人の1人で、40人の子どもの母親だった。人類学を専攻するアメリカ人学生、ケリー・ジョンソンは、食品に関する調査研究の際に彼女と出会い、ステラの食事を30日間続けて追跡した。

ステラは毎日多様な食品を摂り、その種類は90近くに及んだ。彼女の食事はその時々で自分が食べたいものを選んでいるように見えたが、ケリーはある重要な発見をした。それは、ステラの食事の栄養が毎日「タンパク質1に対し、脂肪と炭水化物が5」という、固定的なバランスを保っていたことだ。この比率は、彼女の体格の女性にとって最も健康的であることが実証されている。

「ステラは栄養の専門家だったのだろう」と考える人もいるかもしれない。しかし、驚くべきことにステラは人間ではなく「ヒヒ」だった。人間の近縁である野生のヒヒが、どのように自分にとって「正しい食事」を知り得たのだろうか。

【必読ポイント!】 バッタの実験でわかった「最適な栄養バランス」

バッタの実験

動物は自分にとって最適な食べ物をどのような基準で選んでいるのだろうか。また、もし何らかの理由で最適な食べ物を摂れなかった場合は、どうするのだろうか。

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要約公開日 2023.11.28
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