この世界の始まりのことだ。最初に天上の世界に現れた神様はアメノミナカヌシの神という。続いてタカミムスビの神とカムムスビの神が現れた。
このとき、地上にできたばかりの国は水に浮いた脂のようであり、くらげのようにふわふわと漂っていた。そこへ、泥の中から葦が芽を出すような勢いで、ウマシアシカビヒコヂの神とアメノトコタチの神が現れた。ここまで現れた神々は特別な天の神様で、男女の区別のない独り神であった。
それから次々に男神と女神が現れた。そのうちの二柱(※二人のこと。神は「柱」と数える)が男神のイザナギと女神のイザナミだ。
天の神様はイザナギとイザナミに「漂っている国を整えてしっかりと作り固めよ」と言い、立派な矛を授けた。それを聞いたイザナギとイザナミは天からの階段に立って、矛で海水をかき回した。
海から矛を抜くと、矛の先からしたたる海水が積み重なって島となった。これがオノゴロ島だ。イザナギとイザナミはオノゴロ島に降り、大きな柱と御殿を建てた。
そこでイザナギがイザナミに「私の体のあまった部分とあなたの体の足りない部分を足して国を生み出そうと思うがどうだろう」と言ったところ、イザナミも賛成した。二柱は大きな柱をまわり、出会ったところで、イザナミが「ほんとうにりっぱな青年ですね」、イザナギが「ほんとうに美しいお嬢さんですね」と言って結婚し、子どもを生んだ。ところがここで生まれた子は不完全な様子だったため、葦の舟に乗せて流してしまった。
天の神様に相談すると「女が先に声をかけたのがいけない」ということだったので、柱をまわり直してイザナギから声をかけたところ、新たな子どもが誕生した。これが淡路島だ。続いて四国、隠岐島、九州、壱岐島、対馬、佐渡島、本州が生まれた。
国生みを終えたイザナギとイザナミは神々を生んでいった。住居の神や海の神、風の神、木の神、山の神、野の神、船の神、穀物の神、火の神などだ。
ところが火の神であるホノカグツチの神を生んだとき、イザナミは股に大やけどを負ってしまう。イザナミは病床で苦しみながらも嘔吐物や糞尿からどんどん神を生んでいくが、とうとう亡くなってしまった。
イザナギは「愛しい妻の命をただ一人の子にかえるなんて残念だ」と嘆き悲しんだ挙句、腰につけていた剣を抜き、イザナミの死のきっかけとなったホノカグツチの首を切ってしまった。その血や亡骸、切った刀からも新たな神が生まれた。
「妻にもう一度会いたい」と願ったイザナギは、死者の住む黄泉国に向かう。イザナミが住む御殿の戸に向かって「最愛の妻よ、私たちの国はまだ出来上がっていません。さあ、帰っていらっしゃい」と声をかけたところ、イザナミは「それは残念なことをいたしました。あなたがなかなか来なかったので、私はすでに黄泉の国のものを食べてしまいました。でもわざわざ来てくださったのですから、なんとかして帰りたいと思います。黄泉国の神様に相談してまいりましょう。その間、決して私の姿を見ないと約束してください」と答えたのだった。
御殿の前でじっと待っていたが、イザナミはいっこうに戻ってこない。待ちきれなくなったイザナギが約束を破って御殿に忍び込むと、そこには蛆がたかり、腐敗した姿の妻がいた。
3,400冊以上の要約が楽しめる