高校野球の本来あるべき姿とは一体、どのようなものだろうか。
毎年春と夏に行われる高校野球の大会は、とても華々しい。しかし、その実高校生たちは大人のエゴに巻き込まれ、高校野球の価値そのものは年々低下しているのではないか。
過剰な選手管理、勝利至上主義による不正、同調圧力——輝かしい青春ドラマの裏にはさまざまな問題が潜んでいる。こうした問題を放置していると、高校野球はいずれ衰退してしまうかもしれない。
高校野球の価値とはそもそもいったいなんだろうか。それは、高校生が野球を通し、何を身に付けられるかにかかっている。
著者の考える高校野球の価値の一つは成長だ。悩みや苦労に正面から立ち向かい、どんな方法で乗り越えていくか。このプロセスを経験することは選手にとって大きな財産になる。こうした「果実」を得られるのは部活動の大きな意義だろう。
二つ目の価値は、自分自身で考えることの楽しさを味わえることだ。自分で考えるのは難しい。けれども、その分やりがいもある。打ち方や投げ方、守り方を細かく教え込んだほうが、すぐに結果を出せるかもしれない。だが、それでは選手は自分で何かをつかむという体験をすることができない。慶應義塾高校野球部では、選手自身がどう打ちたいか、どう投げたいか、どう守りたいかを考える。選手が自分なりの課題を見出し、その答えを自分なりに見つけていくことに重きを置いているのだ。
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