部署の立場が低い、「社内下請け」になりがち、「怖い」「近寄りがたい」と敬遠される、新設部署だから何をすればいいのかわからない、「何をしているかわからない部署」と言われる……本書ではこのような「顔の見えない」部署のことを、スタジオジブリの映画に登場する妖怪にちなんで「カオナシ」と呼ぶ。カオナシは、周囲から期待されず、面倒ごとだけを一方的に押し付けられたり予算や人員を削減されたりしがちな存在だ。これではメンバーのモチベーションも上がらない。
本書はそうした部署を輝かせ、「推される」部署、つまりファンがついて「この人たちと関わりたい」「この人たちと仕事したい」と思ってもらえる部署になる方法を解説する。ファンは、あなたの部署の良さを語り、協業先や異動先として推薦してくれるだろう。
「推される部署」になるためには、ブランドの考え方が役に立つ。ブランドとは「また買いたい」「また利用したい」と思わせる力であり、本書においては「(また)この人たちと一緒に仕事したい」と思わせる力だ。
個人で考えてみるとわかりやすい。たとえば、あなたはデータ分析が得意だとする。日々データ分析の仕事にコツコツと取り組み、成果を出していれば、データ分析の仕事がどんどん舞い込むだろう。その結果、経験と実績が増え、「あなた=データ分析のプロ」という「自分ブランド」が確立する。
自分ブランドは、意思決定が早い、作業が正確、交渉がうまいなど、あなたの行動パターンや行動特性によっても形成される。日々のあなたの行動が相手の「ブランド体験」(相手にとって、そのものごとや人がブランドになり得るかどうか)を創り、「またあなたと仕事したい」「いつかあなたと仕事してみたい」と思わせるのだ。
部署のブランドを確立すれば、あなたの部署は自然と「推される」存在になっていくだろう。
ブランドは「Trust(信頼)」「Special(特別)」「Familiar(親しみやすさ)」の3要素で成り立つと言われている。これら3つの要素のすべて、ないしはいずれかが突出しているブランドが「強いブランド」だ。
高級ホテルや高級レストランは、日常では味わえない極上のひと時(Special)を必ず(Trust)体験できる。一方で、低価格の飲料やお菓子はFamiliarで勝負している。親しみやすく人々の記憶に残りやすいネーミングやキャッチコピーをつけ、CMで認知を高めて、いつでもすぐ手に入るようにしている。
あなたの部署は3つの要素のうちどれが秀でていて、どれを強化していきたいだろうか。それぞれ考えてみよう。
まず「Trust(信頼)」だ。必ず守っていることや譲れないこだわりはあるだろうか。たとえば「正確なインプットを心がけている」「受けた問い合わせに対してその日のうちに回答する」などだ。
次に「Special(特別)」だ。他者とは違う突出した体験を提供できているだろうか。具体的には「特定の技術や知識に秀でている」「最新のITツールを取り入れて、新しいはたらき方をしている」などが挙げられるだろう。
最後に「Familiar(親しみやすさ)」だ。あなたたちの業務内容は周囲に認知されているだろうか。話しかけやすい雰囲気になっているか、相談するための接点があるかどうかも重要だ。「問い合わせ窓口が明示されている」「快く相談に乗ってくれる」などが良い例となる。
意外と見落としがちなのが「Trust(信頼)」と「Familiar(親しみやすさ)」だ。誰にも負けない知識や技術を持っていても、態度が高圧的で話しかけにくかったり説明が難しすぎたりしている人は損をする。心当たりがあるなら、傾聴スキルや説明力を磨いてみよう。
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