2022年4月入学の高校生から、「情報Ⅰ」という科目が必修化された。2025年1月実施の大学入学共通テストでは、従来の国語、地理歴史・公民、数学、理科、外国語に「情報」を加えた6教科8科目が課されることとなる。
この改定に合わせ、大学入試センターは2022年11月に「情報Ⅰ」の試作問題を公開し、その難易度の高さは教育関係者・IT関係者たちを驚かせた。
本書では、試作試験の中から一問を紹介している。文化祭でのクレープ販売を題材とした問題だ。ここでは、客の来客時刻の記録を元に乱数を生成し、それを用いて待ち人数や待ち時間を求める。これは「待ち行列理論」という応用数学の問題であり、度数分布表やヒストグラムの学習が前提となる。
情報Ⅰの問題では、こうしたシミュレーション、プログラミング、データ分析が8割を占める。現代の高校生は、実際に手を動かしながらプログラミングを学び、社会で必要なスキルを身に着けているのである。
政府は「AI戦略2021」の中でITパスポートの試験内容を「情報Ⅰ」に合わせて見直すよう示した。これを受け、2022年4月より、ITパスポートは従来の出題範囲に情報Ⅰの内容を付け加える形で拡張されている。
現在の高校生が大学進学を経て新卒社会人として世に出るのは2029年頃。したがって、2030年代には新入社員のほぼ全員がITパスポートと同程度のITスキルを身につけており、ITパスポートを持っていない既存社員は、新入社員と歩調を合わせて働くことが難しくなると考えられる。情報Ⅰの必修化により、ITパスポートが新しい「読み・書き・そろばん」となるのである。
コンピュータとソフトウェアが普及した現代では、業務改善はソフトウェアの設計・開発・運用・改修と同義である。IT知識は、プログラマやSEと会話するための共通言語であり、ホワイトカラーは自らの業務改善のためにそれを身につけなければならない。
3,400冊以上の要約が楽しめる