ていねいな文章大全

日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント
未読
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日本語の「伝わらない」を解決する108のヒント
著者
未読
ていねいな文章大全
著者
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2023年09月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

文章は、多くの人に届く力を秘めている。プライベートでも仕事でも、プロ・アマを問わず、多くの人が毎日のようにテキストを生産している。そのほとんどは、他者に情報を届けるための文章だ。友人知人だけでなく、ときにはまったく知らない人、自分とは異なる価値観やバックグラウンドを持つ人にも読まれることもある。そこには大きな可能性がある一方、「雑な文章」では気分よく最後まで読んでもらうことはできない。それどころか、予想外の「炎上」に発展するリスクも否定できない。

本書『ていねいな文章大全』は、その名のとおり「ていねいな文章」を書くための指南書である。本書の考える「ていねいな文章」とは、正確で、わかりやすく、配慮があり、工夫を凝らした文章だ。国立国語研究所の教授であり、日本語のエキスパートと呼ぶべき著者が、あらゆるシーンを想定して、文章を磨くための具体的な手法を提供している。500ページを超えるこの実践的なガイドは、テキスト作成の新しい教科書と呼ぶにふさわしいたたずまいだ。

それぞれの項目にbefore/afterとして良い例と悪い例が比較できるようになっており、文章の改善方法を直感的に理解することができる。プライベートからビジネスまで、あらゆる場面に役立つこの本は、日本語を使いこなしたい人にとって欠かせない一冊である。

ライター画像
池田明季哉

著者

石黒圭(いしぐろ けい)
国立国語研究所教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授。1969年大阪府生まれ。神奈川県出身。一橋大学社会学部卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専門は文章論。主な著書に『文章は接続詞で決まる』『語彙力を鍛える』(以上、光文社新書)、『この1冊できちんと書ける! 論文・レポートの基本』(日本実業出版社)、『よくわかる文章表現の技術Ⅰ~Ⅴ』(明治書院)、『文系研究者になる』(研究社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書の目的は、読んでもらう文章を書けるようにすることだ。最後まで読んでもらうためには、正確で、わかりやすく、配慮があり、工夫を凝らした「ていねいな文章」でなければならない。
  • 要点
    2
    文章には、書き手の個性や持ち味が出る。生成系AIが発展して書く力が人間を上回ったとしても、独創的な世界観の小説や、論理を積み上げていく論文を書けるようになるとは限らない。この人にしか書けないという文章は、今後も人間から生み出されることになるだろう。

要約

【必読ポイント!】 最後まで読んでもらえる文章を書く

雑な文章を、ていねいな文章に

文章を書くときに大事なのは、最後まで読んでもらえる文章を書くことだ。読んでもらえない文章は、「紙の上のインクのしみ、ディスプレイのドットの集合」にすぎない。

途中で読むのをやめたくなる文章は「不正確な文章」「わかりにくい文章」「不快な文章」「退屈な文章」の4つに整理できる。

「不正確な文章」は、読んでいて違和感が残る。正確さは「文章の質を保証するもので、読者に安心感を与えるもの」だ。

意味があいまいであったり難しかったりする「わかりにくい文章」だと、読者が「自分の都合に合わせて解釈したり読むのを放棄してしまったり」する。読者の立場にたって、わかりやすく書くようにしよう。

失礼な内容や無神経な内容を含む「不快な文章」を読むと、読者は強い反発を抱く。読者への思いやりをもった文章を書きたい。

間違ったことは書いていなくても、ありきたりで誰にでも書けるような「退屈な文章」は、続きが読みたいという気分にならない。執筆者の創意工夫、執筆者独自の発見があってこそ、文章は面白くなる。

正確で、わかりやすく、配慮があり、工夫を凝らした文章。それこそが本書が目指す「ていねいな文章」だ。

正確な文章

「仕事に出て仕事場で仕事する」
SHIROKUMA DESIGN/gettyimages

語彙力が少なく見えると、知性に欠け、勉強や仕事ができないような印象を与えてしまう。そういう人は同じ言葉を繰り返し使っている。話し言葉では「すごい」「やばい」といった形容詞が頻出する。

書き言葉で注意すべきは名詞の使い方だ。たとえば、「仕事」というような便利な言葉でなんでも済ませてしまうと、意味の伝わりが弱くなる。

「今朝も早朝、この時間から母は仕事に出ている」という文での「仕事」に、別の表現を考えるとしたら、どんなものがあるだろうか。この場合は仕事場を指しているので、「職場」と言ってもよいし、場所の種類によっては「現場」「オフィス」という言葉も候補になる。

「うちの夫は脱サラをして自分で仕事を始めた」という文の「仕事」という言葉はどうだろうか。これはつまり、「事業」を始めたということだ。外来語を使って「ビジネス」としてもよいだろう。「仕事を始めた」を「起業した」と言い換えてもよい。

繰り返し使ってしまうような言葉はたいてい多義語だ。それをあえて避けて、より適切な語彙を選択すると、文章の正確さと信頼度が増す。語彙の選択力を身につけるには、インターネット検索を利用するなどして、文脈に合う単語をまめに調べるのがおすすめだ。

「差別教育」と「ハラスメント研修」

誤解が起こる典型的な原因の一つは、言葉足らずである。たとえば、「ここ数日、ウイルスに感染してしまって、対処できなかったのです」という文は、2通りの解釈が可能だ。1つは、インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの病原体に感染してしまった場合、もう1つはコンピュータウイルスに感染してしまった場合だ。書き手にとっては自明なため、省略可能だと思ってしまったのだろう。だが、読み手の理解を考えるなら、どちらのウイルスなのかを明記したほうがよい。

著者は以前、こんな文を読んでぎょっとしたことがあるという。

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要約公開日 2024.02.02
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