法律の世界には「法の不知は罰する」という格言がある。これは、「法律を知らなかったことを理由に、罪を免れることはできないという法律の原則」である。しかし、内容を正確に規定しなければならないために、法律の文章は複雑、難解である。そのため、普通に生活する一般市民が法律を正しく知り、理解することはなかなか難しいのが現実だ。
そこで、「日本に住む誰もが法律に親しみを持ち、法律的なトラブルのない生活を送れるよう」動画配信を始めたのがアトム法律事務所だ。本書には、そのアトム法律事務所の4年間の動画配信と、岡野武志氏の15年間の弁護士経験が凝縮されている。
人気作品『名探偵コナン』の主人公・江戸川コナンは、「キック力増強シューズ」を着用している。作中では、このシューズを使用して蹴ったボールが石の柱を割る描写もあり、相当な威力である。これを使用することは犯罪だろうか。
「キック力増強シューズ」はピストルなどと同じ「人を死亡させる可能性が高い武器」となり得る。したがって、このシューズを使用して人に向かってボールを蹴った場合、殺人罪、少なくとも殺人未遂罪が成立する。
はっきり「相手を殺す」という意思を持っていなくても、「相手が死ぬ可能性があるけど仕方がない」というように、「相手が死ぬ結果を認識・認容して行動している」ならば、殺人罪もしくは殺人未遂罪が成立する。
コナンが「犯人逮捕のために必要だった」と主張しても、「人を死亡させる可能性が高い武器」であるシューズの使用は、「逮捕のために必要かつ相当な範囲を明らかに超えている」ので罪の成否には影響を与えない。
巨大なヒーローであるウルトラマンは、怪獣と戦う際にかなり街を破壊することがある。これは犯罪だろうか。
問われる可能性があるのは建造物損壊罪だ。これは、「他人の建物などをわざと壊したときに問われる罪」である。
ただし、緊急避難の要件を満たす場合は、街の破壊も「社会的に相当で、違法ではない」と判断される。緊急避難とは、「差し迫った危険を避けるためにやむを得ず何かを壊したり誰かをケガさせたりした場合、被害の程度によっては責任が小さくなったり、責任を問われなくなったりすること」を指す。
ウルトラマンの場合、街を壊すのは怪獣から人々を守るためには仕方のない行為だといえる。しかも、「ウルトラマンが戦わなかった場合の怪獣による被害の方が大きくなる」と予想される。したがって、ウルトラマンが街を壊す行為は緊急避難の要件を満たし、無罪となる。
ただし、ウルトラマンが防衛の程度を超えて積極的に怪獣を攻撃することは、「過剰防衛として違法と判断される可能性がある」。その場合、あとで怪獣の保護者から損害賠償を請求されれば、「ウルトラマンには多額の支払い義務が生じる」。くれぐれもやりすぎてはいけない。
有給休暇を取得しようとしても会社側に認められなかった、という話はよく聞く。これは会社の権利なのだろうか。
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