国には変えられるものと変えられないものがある。国の経済について考えるときは、その点を区別することが大切だ。たとえば貧しい隣国に囲まれた内陸の小国が、自分たちの立地を変えることはできない。一方で、経済運営については変えることができる。
2050年までに、経済の地位が劇的に上がる国もあれば、あまり変わらない国もあるだろう。しかし、経済成長の原動力について、画一的な見方をするのもよくないことだ。そうした考え方は行き詰まっており、それ以外の要因のほうが大切になる。本書では、そうした要因のことを「変化をもたらす5つの力」と呼ぶことにする。この5つの力とは、人口動態、資源と環境、貿易と金融、テクノロジー、そして政治と統治である。
国連の推計によると、世界人口は2050年には100億人弱になると予想されている。そのとき、世界で最も人口が多くなるのはインドで、16億人を超える。14億人の中国がそれに続き、約4億人のアメリカが3位、4億人弱のナイジェリアが4位になる。
人口動態には3つの大きな流れがある。1つは、先進世界全体の高齢化だ。このとき参考になるのが日本である。日本では、2045年には労働力の4分の1が75歳以上になるほど少子高齢化が進行している。だが、いままでのところ秩序は保たれており、清潔かつ犯罪も少ない。高齢化が進むと、イノベーションは生まれにくくなり、生活水準も下がってくる。ただし、若い人たちがその事実を受け入れられれば、高齢化社会でも円滑に回るはずだ。
3,400冊以上の要約が楽しめる