著者は現在、ふたつの住まいを構えている。東京都・渋谷のシェアハウスと、大分県・豊後大野市の古民家だ。そして1ヶ月のうち10日を東京、10日を大分、その他の時間で全国各地の色々な地域を訪れる「多拠点ライフ」な暮らしをしている。ふたつの拠点を行き来しながら、ある時は多拠点サービスを利用して沖縄のシェアハウスやゲストハウスに泊まり、ある時は全国にいる拡張家族(血縁関係はないが家族のような関係の人たちのこと)の家や実家に泊まらせてもらう生活だ。
そんな著者の実家はシェアハウスを営んでおり、常に血のつながらない人が同じ屋根の下にいる環境だった。多様な宿泊者たちと人生をシェアするという豊かな経験が、現在の活動の原点となっている。
また2011年の東日本大震災の時には、スーパーの棚が空っぽになる光景を見て、「いくらお金を持っていてもどうにもならない」「シェアすればなんとかなる」と感じた。有事の際に「泊まっていいよ」と言ってくれるつながりこそ、お金よりも価値ある資産なのだ。
多拠点ライフとは、複数の拠点を行き来するライフスタイルのことだ。
多拠点ライフには、主に4種類ある。平日は都会で働き、週末は田舎で過ごすなど自分で複数の家を構える「二拠点生活型」、多拠点サービスを利用して住み放題を楽しむ「多拠点サブスク型」、キャンピングカーやバンで移動しながら生活する「バンライフ型」、ホテルや民泊などに長期滞在する「スポット型」だ。
これまで「家」はひとつであることが一般的で、ふたつ以上の家を持てるのは一部の富裕層やリタイア層に限られていた。
しかし近年、シェアハウスやホテルのサブスクをはじめ、さまざまな住まい方を叶えるサービスが増えている。こうしたサービスをうまく活用すれば、今の家賃以下でふたつの家を持つことも可能だ。
住まいは所有するのではなくシェアするものと考え、多拠点ライフを始めれば、世界中どこでも好きな場所で生活できる。
働き方の概念も大きく変わりつつある。今までは会社へ通いやすい場所に住むのが一般的で、住みたい場所を優先するならば、その地域で職を探さなければならなかった。場所に縛られない働き方は、フリーランスなど一部の人のものだった。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業でリモートワーク化が進み、仕事をする場所、つまり住む場所が自由になった。「副業・兼業」を認める機運が高まり、ワーケーションという言葉も耳にするようになっている。
加速していく流れの中で大切なのは、選択肢が多様化したからこそ、自分がどのような働き方を求めていて、どういう環境で働けば仕事のやりがいとパフォーマンスを上げられるのかを明確にすることだ。
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