人工知能とは、「人間の知能をコンピューター上で実現しようとする技術や研究のこと」を指す。ロボット掃除機から自動車の自動運転まで、私たちの生活に密接に関わるものでありながら、人工知能を定義する基準が明確になっているわけではない。
現在、人工知能は大きく1~4のレベルに分類できる。レベル1は、エアコンなどに搭載されている、決められたルールに基づく単純な制御プログラム。レベル2は掃除ロボットやチャットボットなどに代表される、複数の制御プログラムを組合せたものだ。レベル3は、データをもとにした「機械学習」を取り入れ、高度な判断を可能にしたもので、近年の将棋ソフトなどが相当する。
そしてレベル4が「ディープラーニング」という技術を取り入れた人工知能である。コンピューター自らデータの「特徴」を見出し、人間に匹敵する判断が可能だ。このレベルの人工知能が、社会に大きなインパクトを与えている。
1956年の「ダートマス会議」から、人工知能が学問分野として確立されたとされている。この研究集会で発表された、基礎的な数学の定理を証明するプログラムはその後、パズルや迷路を解く人工知能の開発に応用されていく。しかしこれは、「ルールとゴールが厳密に決まっている問題」にしか対応できなかった。
その後およそ20年間研究が停滞したが、コンピューターの性能は飛躍的に向上し、「専門家のもつ膨大な知識やルールを覚えさせた実用的な人工知能」が開発されるようになった。しかしこれも、新たな課題にぶつかる。たとえば「お腹がチクチク痛む」状態を学習させるには、「お腹とは何か」「チクチクとはどのような痛みか」といった膨大な知識を言語化して、覚えさせなくてはならない。その作業は困難を極め、再び人工知能研究は冬の時代を迎えてしまう。
そこから現在まで続くブームをもたらしたのが、人工知能が自ら学習する技術である「機械学習」だ。大量のデータを与え、そこからルールや法則を人工知能が自ら導き出す。たとえば、ミカンとバナナの画像を大量に入力された人工知能は、それぞれの特徴を抽出し、新しく与えられた画像がミカンなのかバナナなのかを推測できるようになる。
この機械学習のもっとも進んだ形が、「ディープラーニング」だ。
現在の人工知能を大きく飛躍させた「ディープラーニング」は機械学習の1つであり、日本語では「深層学習」と訳される。ディープラーニングは、人工知能が人間のように物の特徴を自ら学習して獲得できる技術である。その仕組みについて、画像認識を例に考えてみよう。
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