なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか

“ゆるい職場”時代の人材育成の科学
未読
なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか
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なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2023年11月24日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

自分が成果を出すより、メンバーの能力を引き出し、成果を出させるほうがずっと難しい。それも相手が「最近の若者」であればなおさらだ。いくらこちらが心を砕いても、突然「転職します」と言ってくるのだから――。そんなふうに感じている人に、本書を勧めたい。

著者の古屋星斗氏は、次世代社会のキャリア形成の研究者だ。前著『ゆるい職場』では、職場を「ゆるい」と感じている新入社員の離職傾向が強いことや現代の若者の転職が「不満型転職」から「不安型転職」にシフトしていることを指摘し、読者を驚かせた。本書ではさらに一歩踏み込み、若手が活躍できる職場に必要な「キャリア安全性」の考え方や、「育て方改革」を進める際のポイント、「優秀な人材ほど辞める」への対応策などを提示している。

要約者にとって特に印象的だったのは、本人の合理性を超えた機会を提供せよというアドバイスだ。本人の希望に沿ったキャリアパスを用意するだけでは、その人が想像する以上の機会や経験は得られない。上司側が若手に対して「上司に指示されたから」「会社の研修項目に入っているから」といった「言い訳」を与え、あえて本人の希望から少し外れた機会を提供することで、Z世代の若手が重視する「成長実感」が得られて、優秀な人材の離職を防げる可能性があるという。

本書を読めば、人材育成や若手とのコミュニケーションにおけるモヤモヤが晴れるだろう。若手の育成に悩むリーダー層・人事担当者にぜひ手に取ってほしい。

著者

古屋星斗(ふるや しょうと)
リクルートワークス研究所主任研究員。2011年一橋大学大学院社会学研究科修了。同年、経済産業省に入省。産業人材政策、投資ファンド創設、福島の復興・避難者の生活支援、政府成長戦略策定に携わる。17年より現職。労働供給制約をテーマとする2040年の未来予測や、次世代社会のキャリア形成を研究する。一般社団法人スクール・トゥ・ワーク代表理事。法政大学キャリアデザイン学部兼任教員。著書に『ゆるい職場――若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社)、『働き手不足1100万人の衝撃―2040年の日本が直面する危機と希望』(プレジデント社)。

本書の要点

  • 要点
    1
    「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないか」という「キャリア不安」を抱いた若者たちは、成長実感の得にくい「ゆるい職場」を去るという選択をすることもある。
  • 要点
    2
    若手が成長し活躍できる職場をつくるためには、「心理的安全性」と「キャリア安全性」という2つの要素に注目するとよい。
  • 要点
    3
    調査からは「社外活動をしている若手は、自分の会社が好き」という傾向が見られた。優秀な人材は、無理に囲い込むのではなく、積極的に社外活動をさせるべきだ。

要約

若者と職場環境の変化

若者を理解するために知っておきたい2つのこと

若手社員を取り巻く状況を理解するにあたり、「Z世代は……」「最近の若者は……」といった「若者論」はもはや意味をなさない。

その理由は2つある。まず、若者が多様化・多極化しているからだ。管理職世代とほとんど変わらない感覚の若手もいれば、全く違う若手もいる。

もう1つの理由は、近年、若者以上に職場が変わったからだ。2010年代中盤以降、若者雇用促進法や働き方改革関連法により、労働時間減少や若手の有給休暇取得率上昇といった変化が生じた。社会や法律の要請により、現代の若手を取り巻く職場環境は全体的に「ゆるい職場」になりつつある。

「ゆるい職場」を去る若者たち
Yue_/gettyimages

職場環境の改善に伴い、若手の自社に対する認識は好転している。

例えば、「休みがとりやすい」に対して「あてはまる」と回答した大手企業新入社員の割合は38.0%(1999-2004年卒)から61.3%(2019-2021年卒)へと大きく向上した。また、初職の会社への評価点(10点満点)は入社年を追うごとに肯定的になっている。

その一方で、若手の離職率は、労働環境改善が特に進んだ大手企業において、2009年卒の20.5%から2019年卒の25.3%へと上昇している。

なぜ労働環境が改善したのに離職率が下がらないのか。その答えは「会社に不満はないけど不安があるから」だ。

調査結果を見てみよう。「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」という質問に対して「強くそう思う」「そう思う」と回答した者(=キャリア不安を抱く者)の割合は、現在の新入社員の48.9%に及んでいる。結果として「職場がゆるいので辞めたい」という決断に至るのだ。

若手が活躍できる職場の2つの要素

心理的安全性とキャリア安全性

若手が成長し活躍できる新しい時代の職場に必要な要素は何か。

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要約公開日 2024.03.07
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