昔からよく言われる精神論で「努力が必ず報われる」というのは、戦後日本が復興に向かっていた時期や高度経済成長期には真実だったのかもしれない。しかし、これ以上豊かになれないほど豊かになってしまった現代の日本で、大人が子供に以前のとおりに夢や希望を持つように言うのは間違いである。世の中のルールは以前とは違ってしまっているのだ。「現実」を理解させ、その中でいかに生きていくかを教えるべきである。
今の時代、「根性」でやることの大半は無意味である。ダイエットすら、厳しい運動や食事制限なしにできる。スポーツも科学的に研究され、負担なく筋肉を増やせるようなトレーニングができるようになっている。
著者自身はアーリーリタイアを目指して若いときはがむしゃらに働いたという。が、残念ながら日本企業は年功序列で給料が決まるため、若いときいくら働いてもありあまるほどの給料をもらえるわけではないという仕組みに気づき、アーリーリタイアの夢は消えた。日本企業で働くなら、細く長く働けるように、エネルギーを温存しておくのが賢いといえる。
とはいえ、20代は必死に働いたほうが仕事はできるようになるので、結果として出世コースに乗って将来につながるかもしれない。ただし、30代や40代になってからは、奮起するよりも組織の中で長く生き残る道を考えたほうがよい。
最小限の努力で成功できる近道を知り、いかに賢く自分らしく、面白く生きるかを考えるのが頭のいい生き方である。
戦後の日本は民主主義教育の影響もあり「いい人」が好まれるようになった。万人受けする人がメディアでもてはやされ、おひとよしの善人ばかり登場する作品が流行する。外交においても、日本は他国の顔色をうかがうようなやり方をし、技術や人材を盗まれても強い態度に出ることができていないように見える。
しかし、今の時代は「いい人」には何のメリットもない。いい人とは無能の代名詞であり、クビを切っても抵抗をせず文句も言えないためリストラの対象になりやすく、消耗しつくされてしまう。
人生には攻める期間と守る期間があるが、日本の現況は守る期間、つまり我慢の時期である。
来たるべき時がくるまでエネルギーは温存しておき、自分の好きなことをしているのがよい。やりたくもないことをやっても能力は身につかない。好きなことを追求した方が人生を楽しむことができ、しかも自分の能力を伸ばすことができる。なんでもいいので、興味があることに関連したことを始めてみることだ。たとえば能に関心があったら、観に行くのでもいいし、教室に通って習ってもいいし、能面を作ったっていいのだ。
そうしたことが、将来武器になり、自分の身を助けるかもしれない。
継続することは大事だが、こだわりは時に「執着」となる。たとえば、幸せになるためにはお金が必要だと考え、自己啓発セミナーに通い、ネットワークビジネスにはまり込んで他人を勧誘するようになってしまう……というようなことは「執着」だ。
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