日本にはかつて、「ご近所さんの顔と名前は全部わかる」くらいの「ムラ社会」的な地域共同体があった。この時代は終身雇用や年功序列といった日本型雇用で、大量生産・大量消費によりみんなで一緒に豊かになっていった。見方を変えると、個人が突出することより「会社が儲かる」ことが優先される、「みんなでトクをせざるをえない」構造の社会だったといえる。
しかし今はそれが崩れ、「ひとりで稼げる」ビジネスモデルが増えてきている。また、プライベートも「必ずしもみんなと一緒にやらなくてもいい」傾向になりつつある。
このような時代において、「周囲の人を無駄に気にしない」メンタルスキルは、重要性が増している。最近は「AIに仕事が奪われる」と盛んに言われるが、会社の経営者が人間である限り、AIがいれば人間はいらないということにはならない。
著者が考えるこれからの時代に求められる人は、そこそこ仕事ができて周りに気に入られる「いい人」、つまり他人と適度な距離感をとれる「気にしない力」に秀でた人である。
「会社に行きたくない。転職しようかな……」。誰もが一度は思ったことがあるのではないだろうか。
日本人の退職理由の多くは「職場の人間関係」である。パワハラまがいの命令をしてくる上司、無駄にマウンティングしてくる先輩など、他人を攻撃してくる人々に関わって仕事をせざるを得ないことは多々ある。
もちろん、「性格」や「相性」があるため、すべての人と上手くやっていけるわけではない。問題なのは、上の立場の人間が、ひとりスケープゴート(集団の中でいじめられる人)を仕立て、その人に理不尽ないじめを行ったりして、組織を統率しようとする仕組みがある場合だ。この方法は、昔から人々の心を上手に操る方法として利用されてきた。今の職場にこういう文化があるのかは、早めに見極めておきたい。
スケープゴートにされそうになった時の一番の対策は「歯向かう」ことである。会社でも学校でも、被害者が反撃しないと、その人はずっといじめの対象のままである。しかし下手に言い返して火に油を注ぐことは避けたい。
そこでおすすめしたいのは「前に出ること」だ。人間には周囲数十センチメートルのパーソナルスペースを侵害されると、後ろに退いてしまう習性がある。身体が下がると精神的にも後ろに引いてしまうため、それを利用するといい。
上司や先輩から攻撃されたら、謝りながら相手との距離を詰めていこう。単純だがかなり即効性がある方法だ。
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