著者
中原淳(なかはら じゅん)
著者略歴
1975年 北海道に生れる
1998年 東京大学教育学部卒業
2001年 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程中途退学
2003年 大阪大学博士号(人間科学)取得
2006年 東京大学 大学総合教育研究センター 助教授
2007年 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
現在 立教大学経営学部教授
主要著書
『職場学習論』(2010年,東京大学出版会)
『人材開発研究大全』(編著,2017年,東京大学出版会)
『組織開発の探究』(共著,2018年,ダイヤモンド社)
『サーベイ・フィードバック入門』(2020年,PHP研究所)
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本書の要点
- 要点
1
経営学習論とは、「企業・組織に関係する人々の学習」に関する学際的研究である。人事施策の変化やマクロな社会構造変化のもとで人材育成が機能不全に陥ったことから、経営学習論の知見が強く求められるようになった。 - 要点
2
経営学習論には、組織社会化、経験学習、職場学習、組織再社会化、越境学習という5つの視点がある。本書ではそれぞれの研究成果を紹介・総括し、組織と人の学習について考察する。
要約
人材育成を科学する経営学習論
人材育成の機能不全と「教育係」の不在
経営学習論とは、「“企業・組織に関係する人々の学習”を取り扱う学際的研究の総称」である。日本では、ポストバブル期に企業の「人材育成」が機能不全に陥ったことから、経営学習論の知見が強く求められるようになった。
著者は、1990年代から2000年代にかけて、企業における人材育成や学習の問題が経営課題として「前景化」した要因として、3つの仮説を挙げる。それは、(1)職場の社会的関係の消失、(2)仕事の私事化・業務経験の付与の偏り、(3)高度情報管理による学習機会喪失である。
第1の理由「職場の社会的関係の消失」とは、新入社員・若手社員の能力形成を支えていた人的ネットワークが失われ、ケアが行き届かなくなったということである。
ポストバブル期の人的資源管理の特徴は「人件費抑制」と「成果主義導入」である。長期の不況に対応するため、長期雇用と年功序列賃金が撤廃され始めた。また生産性を上げるべく、組織のスリム化・フラット化を図った。これにより組織からは「教育係」を担う人が消え、若手の育成に注力できなくなってしまった。
個人の業績だけを追う、「教えない職場」
ajijchan/gettyimages
第2の理由の「仕事の私事化」とは、成果主義のもとで個人が自分の業績だけを追い求めるようになり、他のメンバーの発達支援を行わなくなったことを意味する。
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要約公開日 2024.04.12
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