「起業参謀」の戦略書

スタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク
未読
「起業参謀」の戦略書
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スタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク
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「起業参謀」の戦略書
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2024年01月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

著者は、「スタートアップと新規事業こそが、次の世界を作る」という。2027年をめどにスタートアップへの投資額を10兆円規模に増やし、将来的にユニコーンを100社、スタートアップを10万社創設するという「スタートアップ育成5か年計画」が政府によって策定された。しかし、成功するスタートアップはわずか1%前後という現実の中で、起業家を支えるメンターとして「起業参謀」の必要性が高まっている。

著者は、日米で合わせて5社を起業し、2014年から数年間シリコンバレーのベンチャーキャピタルのパートナーを務めるなど、数多くのスタートアップに関わってきた。『起業の科学』『起業大全』といった“起業”に関する書籍を数多く執筆し、新規事業やスタートアップを「起業参謀」としてサポートする会社を経営している。そうした起業の専門家の手により、スタートアップの肝となる「起業参謀」が起業家に付加価値を与え、支えていくプロセスとノウハウを解説したのが本書だ。600頁近いボリュームで体系的・専門的な内容も多いが、図解も豊富で読み手に伝わりやすいよう工夫されている。

MBA修了生や中小企業診断士などのステップを踏んでいるが現場での知見を広げたい人はもちろん、起業家・経営層を志す人や、新規事業に関わっているビジネスパーソンなど、幅広い社会人におすすめしたい一冊だ。

ライター画像
鈴木えり

著者

田所雅之(たどころ まさゆき)
株式会社ユニコーンファーム代表取締役CEO

1978年生まれ。大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに入社し、経営戦略コンサルティングなどに従事。独立後は、日本で企業向け研修会社と経営コンサルティング会社、エドテック(教育技術)のスタートアップなど3社、米国でECプラットフォームのスタートアップを起業し、シリコンバレーで活動。帰国後、シリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーを務めた。
また、欧州最大級のスタートアップイベントのアジア版、Pioneers Asiaなどで、スライド資料やプレゼンなどを基に世界各地のスタートアップの評価を行う。これまで日本とシリコンバレーのスタートアップ数十社の戦略アドバイザーやボードメンバーを務めてきた。2017年スタートアップ支援会社ユニコーンファームを設立、代表取締役CEOに就任。その経験を生かして作成したスライド集『Startup Science 2017』は全世界で約5万回シェアという大きな反響を呼んだ。2022年よりブルー・マーリン・パートナーズの社外取締役を務める。
主な著書に『起業の科学』『入門 起業の科学』(以上、日経BP)、『起業大全』(ダイヤモンド社)、『御社の新規事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『超入門 ストーリーでわかる「起業の科学」』(朝日新聞出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    優秀なスタートアップには、それを支える起業参謀が存在する。起業参謀は、起業家の視座を拡大/整理してアドバイス/メンタリングを行う。
  • 要点
    2
    起業参謀として活躍するためには、市場を見極める「鳥の眼」、顧客心理を捉える「虫の眼」、勝ち続ける仕組みを作る「魚の眼」、メタ認知力を高める「医者の眼」、行動量を引き出す「人(伴走者)の眼」が求められる。
  • 要点
    3
    起業参謀に必要な5つのケイパビリティ(能力)は、①他者貢献意識などのマインド、②全体俯瞰力、③地頭力、④対人力/アウトプット力、⑤戦略的学習力である。

要約

起業参謀とは何か

優秀なスタートアップを支える起業参謀

起業参謀(メンター)とは、「外部からスタートアップを支援するだけでなく、スタートアップのCXO(Chief X Officer)として、いわば起業家の右腕になるような存在」である。起業ブームによって起業家の数が増える一方で、大きな成長を支える優秀な起業参謀が質量ともに足りていないのが日本の現状だ。

起業参謀は、「起業家の視座を拡大/整理してアドバイス/メンタリングを行う」ことで、さまざまな視座を行き交いながら起業家を成功へと導く。圧倒的な行動量を持っている起業家であっても、物事を自分に都合良く捉えたり、自分に似た人からターゲットを広げられなかったり、過去の成功体験に固執したりと、さまざまなバイアスに陥るものだ。その起業家を支え、メンタリングを通して「明日から、何を、いつまでに、誰と、どうするか」という現実的なアクションに落とし込んでいくのが、「What型」人材の起業参謀である。

PMFの導き方
PeopleImages/gettyimages

起業参謀は、MBAや会計士などの「専門家」によって担われてきたが、それらに関わる知見は既存事業の文脈において役立つものであり、「ゼロイチの戦略構築」に対するものではない。「スタートアップ型の事業の立ち上げ方」と「既存の事業の持続的な成長のさせ方」はルールが全く異なる。

この2者の大きな違いは「フェーズ感」にある。スタートアップではPMF(プロダクトマーケットフィット)、すなわち「市場で顧客から熱狂的に愛されるプロダクトを実現すること」が重要なマイルストーンになる。多くはPMFの達成で躓くため、起業参謀には「新規事業をPMFに導く知見」が必須といえよう。具体的には、「それまで定性的にやってきた事業を定量的に検証」し、「PMF後にスケールするための仕組み化と標準化」を行うことだ。そのために必要なマインドやスキルを本書では解説している。

「ムダ」をなくす戦略思考

PMFを達成できる新規事業やスタートアップの最終目標は、「『勝ち続けていく仕組み』を作ること」である。長期的に勝ち続けるためには「オセロの四隅を取る」、すなわち徹底的に「ムダ」をなくすことだ。

本の販売から始まったAmazonは創業2年目にAmazonレビューを実装した。出版社側はマイナス評価を避けたいので、短期思考で考えれば悪手に見える。しかしジェフ・ベゾスは、そうして購買基準を与えればUX(顧客体験)が向上すると考えていた。実際、顧客が膨大な書籍の海で迷うことが減って売上につながり、これを元手に社員数や仕入れ数が増えた。そうして事業が拡大すれば、1回のトランザクション(商取引)のコストが下がる。顧客の選択肢と満足度も増え、さらにユーザーの購入データが蓄積され、レコメンドの質と量が向上していく。

こうしたポジティブループによってビジネスを強化することこそが、「オセロの四隅を取りにいく戦略」なのだ。企業参謀は、事業への高い構造理解度を背景にこのような戦略の示唆出しを行っていく存在である。

【必読ポイント!】 起業参謀に必要な「5つの眼」

市場を見極める「鳥の眼」

ミッションドリブンだからこそバイアスにかかりやすい起業家を複眼的にサポートするために、著者は「5つの眼」という考え方を提唱する。「鳥の眼」「虫の眼」「魚の眼」「医者の眼」「人(伴走者)の眼」だ。順を追って解説しよう。

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要約公開日 2024.05.02
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