人事で一番大切なこと

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出版社
日本実業出版社

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出版日
2023年12月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

会社の人事で一番大切なことは何か。優秀な人材を確保することでも、画期的な人事施策を導入することでもない。貴重な人材を確保できてもすぐに転職されたら意味がないし、自社にフィットしていない人事施策はどれだけ目を引くものであっても逆効果になるかもしれない。

迷った時こそ、より本質的で単純なことに目を向けてみよう。自社がどのような「考え方」をするのか明確にし、軸となる「人事ポリシー」を整理する。その作業こそが「人事で一番大切なこと」である。

著者は、複数の企業の人事部で長年キャリアを積み、500社以上の制度設計、1万人超の採用や研修を行ってきた。現在は人事のプロフェッショナル企業を経営し、「人事の学校」という人事担当者向けの学習プログラムも開講している。このような人事のプロが人事の本質について書いた内容は、人事が専門でないビジネスパーソンにとっても目からうろこのものばかりだ。

本書は、企業の人事担当者だけでなく、経営者側にも強くおすすめしたい。人事担当者が人事施策を策定・運用するためには経営者へのヒアリングが必須であるし、経営者にとっても優秀な人材の採用・育成が重要な関心事となるはずだ。また、人事評価を受ける側の一社員にとっても、非常に有益な情報である。

「なぜいい人が採れないのか」――多くの人を悩ませてきたこの問いにも、本書はしっかり答えを用意している。

ライター画像
鈴木えり

著者

西尾太(にしお ふとし)
人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」主宰。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエーターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。これまで500社以上の制度設計・導入や1万人超の採用・昇格面接、管理職研修、階層別研修、人事担当者教育を行なう。パーソナリティとキャリア形成を可視化する適性検査「B-CAV test」を開発し、統計学に基づいた科学的なフィードバック体制を確立する。中でも「年収の多寡は影響力に比例する」という持論は好評を博している。著書に『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』(日本実業出版社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人事は「やり方」が大事なのではなく、自社がどのような「考え方」で実施するのかが大切だ。
  • 要点
    2
    会社で働く人に対する企業自身の考え方を「人事の軸=人事ポリシー」という。信頼される人事には一貫性と継続性が求められる。
  • 要点
    3
    自社が求める社員像を「人事ポリシーフレーム」を用いて整理し、経営者と人事で確認して、明文化しよう。
  • 要点
    4
    人事ポリシーに基づく評価軸に従って行動を評価すれば、社員は気づきを得て成長することができる。

要約

人事に必須の「考え方」

失敗に終わった人事施策

大企業でも失敗してしまうが、「やってみたらダメだった」ということも許されないのが人事という領域だ。失敗を可能な限り減らすために重要なのは「人事ポリシー」をしっかりもって人事施策を行うことである。

フォー・ノーツ株式会社による2023年のアンケート調査では、導入したものの失敗に終わった人事施策が明らかになった。1位は「目標管理制度」だ。社員自ら目標を定め、自身でプロセスを管理する、セルフコントロールをベースにした仕組みだが、上から押しつけられた目標や不明瞭な達成基準が原因でうまくいっていない。考えや運用イメージをしっかりもって根気強く運用し続けることが必要だ。

ほかにもフレックスタイム制や360度評価、1on1などでの失敗が挙げられているが、新しい人事施策に飛びつく前に、「考え方」をしっかり検証・確認してから自社にフィットする「やり方」を決めていくことが大切である。

「人事」とは何か
metamorworks/gettyimages

人事には、「ベタベタな人事」「ベタな人事」「おもしろ人事」という3つの構造があるという。

基礎にあたる部分が「ベタベタな人事」で、給与計算・支給、労働時間管理、労働法規対応、就業規則の整備など、「企業人事を行なう上で最低限必要となるもの」だ。この上に立つ柱が「ベタな人事」で、人員計画、採用、配置、評価制度といった人事制度を指す。そして、人事という建物の外観となるのが「おもしろ人事」だ。採用イベント、インセンティブ、表彰制度、各種研修、社内サークルなどの目を引く人事施策である。

しかし、「おもしろ人事」が注目されている企業にも、しっかりとした「ベタベタ」と「ベタ」の人事があることを忘れてはいけない。これらの「基幹的人事機能」について、人事担当者は一定の所見や知識、経験が必須なのだ。逆に言えば、そこには「おさえておかなければならない型」があるということである。それに「自社の考え方」が加味されて、その企業らしい人事戦略となる。

「自社はこう考える」という「企業の軸」が明確で、一貫性があると、その企業の信頼性は高くなる。その軸によって、人がその企業に「合う」か「合わない」かも判断できる。人事の失敗は、「この『軸』がしっかりしていないから起きる」のだ。

人事の軸とは

人事の領域

その企業で働く人に対する企業自身の考え方が人事の軸、すなわち「人事ポリシー」だ。「働く人」には正社員だけでなく、契約社員やパートタイムの従業員、雇用契約外の業務委託なども含まれるため、共通するものと個別に整理が必要なものを認識しておかなければならない。

そして、人事ポリシーをつくる前に、「経営理念」「人事制度」「人事管理」「人材フロー」「人材育成」の5つで構成される「人事の領域」を把握しておこう。

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要約公開日 2024.04.13
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