大企業でも失敗してしまうが、「やってみたらダメだった」ということも許されないのが人事という領域だ。失敗を可能な限り減らすために重要なのは「人事ポリシー」をしっかりもって人事施策を行うことである。
フォー・ノーツ株式会社による2023年のアンケート調査では、導入したものの失敗に終わった人事施策が明らかになった。1位は「目標管理制度」だ。社員自ら目標を定め、自身でプロセスを管理する、セルフコントロールをベースにした仕組みだが、上から押しつけられた目標や不明瞭な達成基準が原因でうまくいっていない。考えや運用イメージをしっかりもって根気強く運用し続けることが必要だ。
ほかにもフレックスタイム制や360度評価、1on1などでの失敗が挙げられているが、新しい人事施策に飛びつく前に、「考え方」をしっかり検証・確認してから自社にフィットする「やり方」を決めていくことが大切である。
人事には、「ベタベタな人事」「ベタな人事」「おもしろ人事」という3つの構造があるという。
基礎にあたる部分が「ベタベタな人事」で、給与計算・支給、労働時間管理、労働法規対応、就業規則の整備など、「企業人事を行なう上で最低限必要となるもの」だ。この上に立つ柱が「ベタな人事」で、人員計画、採用、配置、評価制度といった人事制度を指す。そして、人事という建物の外観となるのが「おもしろ人事」だ。採用イベント、インセンティブ、表彰制度、各種研修、社内サークルなどの目を引く人事施策である。
しかし、「おもしろ人事」が注目されている企業にも、しっかりとした「ベタベタ」と「ベタ」の人事があることを忘れてはいけない。これらの「基幹的人事機能」について、人事担当者は一定の所見や知識、経験が必須なのだ。逆に言えば、そこには「おさえておかなければならない型」があるということである。それに「自社の考え方」が加味されて、その企業らしい人事戦略となる。
「自社はこう考える」という「企業の軸」が明確で、一貫性があると、その企業の信頼性は高くなる。その軸によって、人がその企業に「合う」か「合わない」かも判断できる。人事の失敗は、「この『軸』がしっかりしていないから起きる」のだ。
その企業で働く人に対する企業自身の考え方が人事の軸、すなわち「人事ポリシー」だ。「働く人」には正社員だけでなく、契約社員やパートタイムの従業員、雇用契約外の業務委託なども含まれるため、共通するものと個別に整理が必要なものを認識しておかなければならない。
そして、人事ポリシーをつくる前に、「経営理念」「人事制度」「人事管理」「人材フロー」「人材育成」の5つで構成される「人事の領域」を把握しておこう。
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