人的資本経営 まるわかり

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人的資本経営 まるわかり
著者
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出版日
2023年12月28日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「新しい資本主義」という言葉を日本政府が掲げ、「ESG経営」など様々な新しい概念が、近年の企業経営においても必要とされるようになっている。日本企業の多くは、時代の急速な変化に取り残され、世界の成長企業との差がますます広がっているようにも見える。しかし、日々の業務に追われる中で、新しい概念を理解して取り入れ、組織を改革していくのは簡単なことではない。

本書は、近年注目が高まっている「人的資本経営」について、その言葉の意味や、注目を集めている時代背景について解説している。その実現のための具体的な方法や国内外の数々の事例まで、実際に産学連携の研究を通して数々の実践を行ってきた著者が、詳細かつコンパクトにまとめたものである。単に理念的な説明だけではなく、人的資本開示のための実際の基準の事細かな説明などがなされており、経営者だけでなく、人事部門や財務部門の担当者にもすぐに役立つ情報となるだろう。

また、大企業だけでなく、小回りの効く中小企業においても、時代に合わせた組織の改革のための指針となるのではないだろうか。よく言われるように、人を大事にする経営は、もともと日本の企業が行ってきたことでもある。著者は、「企業は人なり」という言葉の意味を改めて捉え直し、その原点に立ち返ることで、時代変化に合わせた変革がなされると主張するが、日本の経済全体が進むべき道も、その先に見えてくるのではないだろうか。

ライター画像
大賀祐樹

著者

岩本隆(いわもと たかし)
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。
日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。KBSでは産学連携による「産業プロデュース論」「ビジネスプロデュース論」などの研究を実施。
2018年9月より2023年3月まで山形大学学術研究院産学連携教授。山形大学では文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの事業プロデューサーとして山形地域の事業プロデュースを統括。2023年4月より山形大学学術研究院客員教授。
2022年12月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科では「SFC地域イノベーション共同研究」に従事。

本書の要点

  • 要点
    1
    「人的資本経営」とは、企業活動の付加価値の源泉となる「人的資本」に積極的に投資して、企業価値を向上させる経営のことである。
  • 要点
    2
    人材を消費するコストとしての「資源」ではなく、投資によって価値を高めてより大きな利益を生み出すための「資本」として捉えることで、人材への投資によって利益を増やすという考え方が生まれる。
  • 要点
    3
    製造業が主流の時代は「有形資産」が重要だったが、産業構造と人々の価値観の変化により、現代では人的資本のような「無形資産」が企業の重要な指標とされるようになった。
  • 要点
    4
    人的資本経営の実践のためには人を理解し、「企業は人なり」という言葉の本来の意味に立ち返る必要がある。

要約

【必読ポイント!】 人的資本経営とは何か

人的資本とは

「人的資本」とは、英語のHuman Capitalを日本語に訳した言葉である。この言葉は、「近代経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスが、道具や建物、土地などと並んで固定資本の一つとして提唱したもので、「人生経験によって育まれるスキル、器用さ、判断力」を意味する。

現代では「個人が持つ知識や技能、能力など、付加価値の源泉となる資本」を指し、ビジネスやマネジメントの世界で使われるようになっている。つまり「人的資本経営」とは、企業活動の付加価値の源泉となる「人的資本」に積極的に投資して、企業価値を向上させる経営のことである。

人的資本経営が注目を集める理由
Paperkites/gettyimages

これまでも使われてきた人的資本という言葉が、今なぜ注目を集めているのか。それには、(1)持続的な企業価値の向上につながるため、(2)無形資産の重要性が高まっていること、(3)技術革新によってHRテクノロジーが活用されるようになったこと、という3つの理由があると考えられる。

人的資本経営の特徴は、人材を消費する「資源」ではなく、投資によって価値を高められる「資本」として捉えることである。人材を「費用=コスト」として見なすと、人件費は会計上、会社の利益を押し下げる「コスト」として処理される。一方、人的資本経営では、投資を行う資産と見なすことで、人材の価値を最大化させてリターンを生み出すことを目指す。そのため、人事担当者は人材への投資がどのくらいリターンに結びついているかを測定し、経営者が経営判断をすることになる。

人的資本は、知識を拡大し利用することで自ら発展していく点や、移動・共有が可能な点で、工場などの有形資本と異なる特徴がある。つまり、人的資本経営が上手な企業は、継続的に企業価値を向上させることができる反面、下手な企業は、人材を資源として消費してしまい長期的な成功が見込めなくなるのである。

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要約公開日 2024.04.05
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