パーパス経営入門

ミドルが会社を変えるための実践ノウハウ
未読
パーパス経営入門
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ミドルが会社を変えるための実践ノウハウ
未読
パーパス経営入門
出版社
出版日
2023年11月24日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

企業は利益を上げるために数々の努力を重ね、そのために社員に多大なる負担を背負わせてきた。働く側は、厳しい環境であっても、生活のためにやむなく働き続けなければならなかった。だが、現代のリーディングカンパニーを見てみると、自社の利益だけではなく社会貢献も重視する姿勢や、社員がいきいきと働ける体制が築かれている様子が伺える。その上でクリエイティビティが発揮され、イノベーションが生み出されていく。単に利益を求めるだけの企業よりも、何らかの価値を実現しようとする企業のほうが、結果的により多くの利益を上げているのだ。

そういった企業に共通しているのが、本書で紹介されている「パーパス経営」である。直訳すると「目的」となるパーパスを著者は「志」と表現する。この訳語はパーパスという言葉が担う役割やその力を上手く言い表したものだといえるだろう。

本書は、企業におけるパーパスとはどのようなものかという点や、どのようにパーパスを作り、実践すればよいのかといった点が、豊富な実例に基づいて紹介されている。さらに、パーパスが求められる現代を「志本主義」の時代と表現し、日本企業が日本型経営に立ち返ることで活力を取り戻す道も示されている。

経営に関わる立場の人にとっても、また、現場で働く人にとっても、これからの企業のあり方や働き方がどうあるべきか、多くの示唆を得られることだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

名和高司(なわ たかし)
京都先端科学大学教授
一橋ビジネススクール客員教授
東京大学法学部、ハーバード・ビジネス・スクール卒業。三菱商事を経て、マッキンゼーで約20年間勤務。デンソー(~2018年)、ファーストリテイリング(~2022年)、味の素(〜2023年)、SOMPOホールディングスなどの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役を歴任。消費者庁「消費者志向経営賞」座長。ボストン・コンサルティング・グループ(~2016年)、インターブランドジャパン、アクセンチュア(いずれも現任)などのシニアアドバイザーを兼任。
『パーパス経営』『CSV経営戦略』『企業変革の教科書』(以上、東洋経済新報社)、『シュンペーター』(日経BP)、『稲盛と永守』『経営改革大全』(以上、日本経済新聞出版)、『コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法』『成長企業の法則』『10X思考』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    パーパスとは「志」である。現在、モノやカネばかりに執心する行きすぎた資本主義が見直され、ヒトを重視するパーパス経営が世界的に注目されている。
  • 要点
    2
    幹部だけでなく、現場との距離が近いミドルがパーパスを繰り返し口にすることで、パーパスが浸透し、企業全体の意思疎通が可能となる。
  • 要点
    3
    パーパスを浸透させ、実践するためには、善の判断、本質の把握、場を作る、伝える、政治力を行使してあらゆる人を巻き込む、実践知を育むという6つの能力を備えた、賢慮のリーダーが求められる。

要約

【必読ポイント!】 パーパス経営が今求められるのはなぜか

「志」としてのパーパス
YakobchukOlena/gettyimages

「パーパス」という言葉は、「目的」や「存在意義」と訳されることが多いが、著者は「志」という言葉を訳語として当てる。それは、「内側から湧き出てくる強い思いこそがパーパス」だからだ。この、パーパスを原点とする「パーパス経営」が、世界的に注目されている。

今でも、ミッションやビジョン、バリューを掲げている企業は多いが、パーパスは、ミッションとは異なる。ミッションとは「◯◯をしなくてはならない」という「大義」であり、義務的なものになりがちだ。

一方、パーパスは、「私たち」を主語として、「自分たちのやりたいこと、ありたい姿はどういうものか」というように、自分たちのやりたいことと社会の思いが重なるところに湧き出てくるものだ。そのため、「パーパスを仕事の中心に据えると、仕事そのものが『ワクワク』するものに」なるだろう。

パーパス経営が注目されているのは、「行きすぎた資本主義の見直し」のためだ。モノやカネばかりを主軸とした経営が限界を迎えている今、必要とされるのは、ヒトを中心に据えた経営なのだ。

日本には江戸時代から明治、戦後にかけて、ヒトを経済や企業活動の主体とする、「人本主義」と呼べる日本型システムがあり、成長の原動力となってきた。バブル崩壊後、人本主義は時代遅れのものとされたが、現代ではむしろ、ダイキンやデンソーのように、「人本主義を貫き通した日本企業こそが高い業績を上げている」。

いま、市場には3つの変化が起きている。1つは顧客市場で起きている「ライフ・シフト」。人生100年時代の到来により多くの人が長く、広いスパンでものを考えるようになった。そして、人財市場で起きている「ワーク・シフト」。優秀な人ほどフリーランサーとして働くようになり、企業には多様な働き方が求められている。そして、金融市場で起きている「マネー・シフト」。ESG投資のように世の中のためになるものへお金が動く。これらの変化に対応できるものこそ、パーパスすなわち「志」という言葉を冠した「志本主義」、「志本経営」なのだ。

リーディングカンパニーのパーパス経営

日本では、いまだに利益至上主義から抜け出せずにいる企業も多い。一方で、リーディングカンパニーではパーパス経営を実行しているところも増えている。

株価の大暴落を経験したソニーは、2012年に社長に就任した平井一夫氏が、「KANDO(感動)」をパーパスとして、ソニーを「感動を届ける会社」と再定義し、劇的なV字回復を果たした。

京都の計測機器大手である堀場製作所のパーパスは、「おもしろおかしく」だ。同社は、自動車関連の特定の装置で世界シェア80%を占めるグローバル企業である。人生で多くの時間を過ごす「会社での日常」としての仕事を「仕方なくやるもの」にするのはもったいない。「おもしろおかしく」働くことは充実につながるだけでなく、企業の業績にもつながるのだ。

新潟に本社を置くアウトドアブランドの中小企業「スノーピーク」は、「人間性の回復」というパーパスを掲げる。都会の人たちが自然に触れることで人間性が回復できるようなアウトドアグッズを開発し、その哲学に共感するファンも生み出した。

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要約公開日 2024.03.16
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