池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力
池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力
著者
池上彰が大切にしている タテの想像力とヨコの想像力
出版社
出版日
2023年08月21日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、ニュース解説でおなじみの池上彰氏が「想像力」について綴った一冊である。「世界価値観調査」によると、日本人は子どもに身につけさせたい性質の1つに「想像力・創作力」を挙げている。だが実際、日本人の想像力が高いとは言い切れないのが現状だ。

日本人の「今あるものをよりよくする“カイゼン”に長けた国民性」は、高度経済成長期の日本を牽引して世界に存在感を示した。だが今では、イノベーションを起こし続ける海外企業に遅れを取り、日本経済は低迷したままだ。生成AIの登場により、その差はますます大きくなっている。

多様化するニーズを読み取って迅速に対応することは、ビジネスにおける成功の要諦だ。そこに必要なのは、未来をダイナミックに描く力、その実現に向けて逆算する力、他者のニーズを汲み取る力、チームで協働する力などである。この原点となるのが「想像力」であり、著者は「想像力は世界を変える」と語っている。

実際、多くの新技術は人間の想像から生まれている。携帯電話もタッチパネルもAIも、元はと言えば「こんなものがあったらいいな」という誰かのアイデアだ。その時点ではありえないようなことも、自由に想像を羽ばたかせることで未来を築くことができるのだ。

本書では、「わかりやすい解説」では右に出る者がいない著者が、想像力の重要性とその養い方を教えてくれる。読むだけでも凝り固まった考えがほぐれ、想像力が広がりそうな一冊だ。

著者

池上彰(いけがみ あきら)
ジャーナリスト。1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者問題、教育問題などを担当する。ニュース番組のキャスターとして、1994年からは11年にわたり「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年よりフリーになり、執筆活動を続けながら、テレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い人気を得ている。また、11の大学で教鞭をとる。『社会に出るあなたに伝えたい なぜ、読解力が必要なのか?』『社会に出るあなたに伝えたい なぜ、いま思考力が必要なのか?』(ともに講談社+α新書)、『池上彰の「世界そこからですか!?」──ニュースがわかる戦争・国家の核心解説43』(文藝春秋)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間がAIと渡り合っていくには「想像力」が欠かせない。本書では自分以外の他者を想像する力を「ヨコの想像力」、未来の世界や自分につながる想像力を「タテの想像力」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    日本人の想像力が伸びにくい原因は、過度なリスク排除や前例主義などにある。
  • 要点
    3
    想像力のリミッターを外すには、新たな場所で生活したり、違う視点を持つよう意識したりすることなどが有効だ。
  • 要点
    4
    「あったらいいな」と未来を想像することが、科学や技術を発展させる原動力になってきた。

要約

【必読ポイント!】なぜ今「想像力」が必要なのか

AI時代に求められる想像力

著者は、とある大学の経済学部の新入生にこう語った。

「有名な経済学者の言葉に『クールヘッド(冷静な頭脳)とウォームハート(温かい心)』という表現があります。冷静に分析する一方で、人間の幸せな暮らしを実現することにも思いをめぐらせてください。なぜなら、人間の営みや心理を理解していなければ、現実からかけ離れた分析になってしまうかもしれないからです」。

人工知能(AI)が優秀な「クールヘッド」なら、人間の強みは「ウォームハート」で、その根底には「想像力」がある。「生成AI」時代が本格的に始まった今、私たちがAIと対峙し、使いこなすためには想像力が必要だ。また、未来の自分や世界のために今何ができるのか、どう生きるか。そのカギとなるのが、想像力なのだ。

一口に想像力と言っても、さまざまな種類がある。本書では、身近な人から海外の人たちまで、自分以外の他者を想像する力を「ヨコの想像力」、未来の世界や自分につながる想像力を「タテの想像力」と呼ぶ。

日本人が想像力を伸ばせない理由
Andrii Yalanskyi/gettyimages

日本人は想像力を伸ばすことが苦手である。そこには7つの要因があるが、ここではその中から4つを取り上げる。

まず挙げられるのは、とにかくリスクを排除しようとする傾向だ。元陸上選手でスポーツコメンテーターの為末大さんは、「私たちの国は『なにかあったらどうするんだ症候群』にかかっている」とコメントし、大きな話題となった。過度なリスク排除による現状維持志向は、よりよい未来を想像する力を失わせてしまう。

次は、根強い前例主義である。「うちの会社では、以前からこうしている」などと古い考えに固執して変化を拒んでいると、想像力は枯渇してしまう。

3つ目は、自分の思考や行動に自らブレーキをかけてしまうことだ。特に最近はその傾向が強く、作家・演出家の鴻上尚史さんは、著書『同調圧力のトリセツ』の中で「若い人たちと何かをしようとするとき『そんなことをしていいんですか?』という言葉を聞くことが多い」と述べている。自分の行動に自らブレーキをかけてしまえば、想像力は飛躍できるはずがない。

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要約公開日 2024.06.20
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