疲労とはなにか

すべてはウイルスが知っていた
未読
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未読
疲労とはなにか
出版社
出版日
2023年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

疲労とウイルスにどのような関連が? 多くの人はこう疑問を持つのではないだろうか。

普段意識することはまずないが、私たちの体には無数のウイルスが常時潜伏している。こうしたウイルスは常に体の内側から私たちを観察しているのだ。

著者は人間の体に存在するヘルペスウイルスの専門家で、著者の所属するチームはうつ病にかかりやすいウイルス遺伝子変異を発見したことでも知られている。ウイルスとうつ病を直感的に結び付ける人は少ないだろうが、本書を一読すればウイルスからうつ病を解明する行為に合理性を感じていただけるはずだ。本書のサブタイトルになっている「すべてはウイルスが知っていた」というのは決して誇張ではないのである。

本書は、ウイルスの視点を通して、疲労、うつ病、そしてコロナ後遺症を科学的に理解しようと試みる。疲労は私たちの社会でも大きな関心を持たれている。会社のあまりにも過酷な業務によって心と体をすり減らし、自ら命を絶つという事例も珍しくなくなった。一方で、疲労に対する正しい理解が社会に浸透しているとは言いがたい。そこにはまだ誤解が生じているのが実情だ。

科学的な視点は客観性という点で非常に優れている。普通の人が陥りがちな主観的な感想やバイアスを徹底的に排除するからだ。現代社会に生きる者として、ウイルスになったつもりで疲労を科学的に理解するのも一興ではないだろうか。

著者

近藤一博(こんどう かずひろ)
東京慈恵会医科大学ウイルス学講座教授。1958年、三重県津市生まれ。1985年、大阪大学医学部卒業。1991年、大阪大学微生物病研究所助手。1993~1995年、スタンフォード大学留学。1996年、大阪大学大学院医学系研究科・微生物学講座助教授。2003年より現職。2021年より東京慈恵会医科大学疲労医科学研究センター センター長を兼任。ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の潜伏感染・再活性化機構を解明したほか、生理的疲労のメカニズムの解明、うつ病の原因遺伝子SITH-1の発見、新型コロナ後遺症の原因の究明など多くの業績をあげる。著書に『疲労ちゃんとストレスさん』『うつ病は心の弱さが原因ではない』(いずれも漫画・にしかわたく、河出書房新社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の疲労研究は欧米に先んじている。うつ病や新型コロナウイルスの後遺症など、疲労を調べることでいろんな病気のことがわかるようになる。
  • 要点
    2
    疲労には「疲労」と「疲労感」の二つの意味があり、これを区別することが大切だ。また、疲労にも「生理的疲労」と「病的疲労」がある。
  • 要点
    3
    しかし疲労を数値化するのは難しい。体に潜伏しているヘルペスウイルスに「教えてもらう」ことで、疲労を数値化できるようになり、さらにウイルスに注目することでうつ病の原因究明も大きく前進した。

要約

疲労とウイルスの意外な関係

なぜ疲労を研究するのか

疲労の研究が一番進んでいる国は日本である。これはある意味事実だが、世界における疲労研究が遅れているとも言い換えられる。日本では過労死が社会問題化し、疲労に対しては高い関心が持たれている。一方、欧米では疲れているのに働くのは「自己管理ができていない」と解釈され、疲労は医学的には重要視されてこなかった。

しかし、欧米にならって疲労の研究をおろそかにしていいわけではない。「過労死」と言っているが、この原因で一番多いのは、うつ病による自殺である。こう聞くとゾッとしないだろうか。それから、世界的な問題となっている新型コロナウイルスの後遺症における最大の問題は疲労にあると考えられている。

その人の人生を変えてしまうほど脳の機能に重要な影響を与える。これが疲労のおそろしいところといえるだろう。

「疲労」と「疲労感」
fatido/gettyimages

さまざまな病気を引き起こす疲労。この問題を解決するにはどうしたらいいか。それは疲労を科学的に扱うことだ。軽視するわけでも根性論で乗り切るわけでもなく、疲労を客観的にとらえることが何よりも重要である。

ここで最初に押さえておきたいのが「疲労」には2種類の意味があるということだ。疲れたという感覚の「疲労感」と、疲労感の原因となる「体の障害や機能低下」を意味する「疲労」は、どちらも「疲労」といわれることがある。現在の科学は前者の「感覚」を扱えるほど発展はしていないので、科学の対象としやすいのは後者のほうだ。

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要約公開日 2024.07.07
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