昨今、クレーム対応をめぐるトラブルが多発している。なかには従業員が真摯に対応をしたにもかかわらず、深刻なトラブルに発展するケースもある。多種多様なクレームが増えているため、組織はクレームごとに適切な対応をとる必要がある。今はもう、全てのクレームに「お客様は神様です」という姿勢で等しく対応する時代ではないのだ。
クレームには2種類ある。1つは、商品やサービスの問題に対して正しい要求をする「一般クレーム」。もう1つは、要求内容や手段が常識的な範囲を超えている「ハードクレーム」だ。ハードクレームには、悪質な言動を伴った「カスタマーハラスメント(通称カスハラ)」も含まれる。
最近はハードクレームやカスハラが頻発し、対応に疲弊した現場スタッフが休職や退職に追い込まれることもある。一旦心が病むと回復までに時間を要し、完治しないことも少なくない。また、対応の不手際は会社の評判を落とすことにもつながる。クレーム対応は、いまや組織が一丸となって取り組むべき問題なのである。
最近、クレームの性質は多様化・悪質化しているため、従来の対応では対処が難しい。早い段階で一般クレームかハードクレームかを見極め、それに適した対応に切り替える必要がある。
一般クレームであれば、サービスを向上させるチャンスとして活用できる。だが組織や従業員に対する嫌がらせ、業務妨害ともいえるような悪質なクレームは要注意だ。相手が求めているのは「改善」ではないため、話を聞き続けたり丁寧に対応したりしても解決につながらない。初期段階で、「正当な要求」か「不当な要求」かを見極めることが重要だ。
適切な対応を見定める際は、次の3つを判断基準としよう。
(1)現場の役割と組織の役割
クレーム対応は、現場と組織が協同して対処する必要がある。組織は、現場のスタッフが迷わず行動できるようなルールをつくらなければならない。
具体的には「顧客の定義づけ」「対応方針の決定」「バックアップ環境の整備」の3つをルール化することだ。まずは明確な対応基準を設け、現場がスムーズに対応できるようにバックアップ体制を整える。組織と現場の両輪がかみ合ってはじめて、クレーム対策は正しく機能するのだ。
(2)クレームの種類
クレームは大きく3つに分けられる。
1つは先述の、正当な要求に基づいた「一般クレーム」だ。
次は「特殊クレーム」である。商品やサービスへの意見と見せかけて、全く関係のないことを持ち出してスタッフを困らせるというものだ。担当者には非がないのに「対応が悪い」「話し方が気に入らない」といちゃもんをつけるのがこれに当たる。
最後は「悪意クレーム」だ。これは金銭の要求や業務妨害など、明らかに別の目的があるクレームである。悪意クレームの対応は、専門の部署や専門家に任せよう。
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