カスハラ、悪意クレームなど

ハードクレームから従業員・組織を守る本

未読
ハードクレームから従業員・組織を守る本
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ハードクレームから従業員・組織を守る本
ジャンル
出版社
出版日
2024年06月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「おい、どうなってるんだ!」「すぐに商品を交換しろ!」――。公衆の面前で大声を上げ、スタッフに向かって延々と文句を言い続ける人たち。飲食店やショップ、病院、役所の窓口など、街のあちこちで見かけるようになった。

理不尽なものも少なくなく、最近では「カスハラ(カスタマーハラスメント)」として社会問題になっており、政府や自治体も対策に取り組みはじめている。2022年に厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を発表し、2024年には東京都が「カスハラ防止条例」を制定する方針であることを公表した。

「お客様は神様です」と、客であるだけで厚遇される時代は終わったのだ。

本書では、常識の枠を超えた「不当な要求」をするクレーム、つまり、「ハードクレーム」に対し、組織が取るべき対応を指南している。クレームは通常、顧客対応の最前線である「現場」に寄せられ、正しい対策が徹底されていないことから、現場スタッフに対応が任される。だが、クレーマーに絡まれた従業員が心を病んで休職してしまったり、クレーム対応がまずかったゆえに、組織の評判を落としたりすることも珍しくない。いまやクレーム対応は、組織運営の根幹に関わるリスクマネジメントの一種なのである。

本書ではクレーム対応研修のプロである著者が、クレーム対応の基本から、悪質なクレームやカスハラに対する心構えと具体策、組織として整備すべきことなどが事細かに提示されている。本書をクレーム対応のハンドブックとして、大いに活用いただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

津田卓也(つだ たくや)
株式会社キューブルーツ(Cube Roots)代表取締役
1995年 ブックオフコーポレーション株式会社に入社し、2000年にはブックオフコーポレーションの年間MVP獲得、前年対比売上150%以上を3度達成。2005年にセミナー&研修会社キューブルーツを設立。特に、OJT(部下指導)研修・メンタルヘルスマネジメント研修・クレーム対応研修は、国内随一の登壇実績を持ち、「こんな研修は初めて!」「非常に勉強になった!」「感動した!」と評価され、リピート率100%、2023年にはセミナー受講者数が15万人を突破。メディアでも活躍しており、フジテレビ『バイキングMORE』、テレビ東京『解禁! 暴露ナイト』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』、NHK『あさイチ』等に出演。 執筆活動にも力を入れており、雑誌では『日経ビジネスアソシエ』等にも寄稿。
著書に『どんなクレームも絶対解決できる!』(あさ出版)、『なぜか印象がよくなるすごい断り方』(サンマーク出版)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    商品やサービスに対して不当な要求をし、従業員を困らせる「ハードクレーム」が増えている。クレーム対応は「現場」任せにせず、組織が一丸となって取り組まなければならない。
  • 要点
    2
    クレーム対応は初動が肝心だ。まずは「一般クレーム」か「ハードクレーム」かを見極めよう。
  • 要点
    3
    ハードクレーム対応では、「自分を守る」「スタッフを孤立させない」「組織の方針・ルールに沿って行動する」を徹底する。また、「ハードクレームには“NO”と言っていい」ことも覚えておこう。
  • 要点
    4
    相手の要求に全面的な謝罪をしてはいけない。詫びる対象を明確にした「部分謝罪」が正解だ。

要約

一般クレームとハードクレーム

「お客様は神様です」の時代は終わった

昨今、クレーム対応をめぐるトラブルが多発している。なかには従業員が真摯に対応をしたにもかかわらず、深刻なトラブルに発展するケースもある。多種多様なクレームが増えているため、組織はクレームごとに適切な対応をとる必要がある。今はもう、全てのクレームに「お客様は神様です」という姿勢で等しく対応する時代ではないのだ。

クレームには2種類ある。1つは、商品やサービスの問題に対して正しい要求をする「一般クレーム」。もう1つは、要求内容や手段が常識的な範囲を超えている「ハードクレーム」だ。ハードクレームには、悪質な言動を伴った「カスタマーハラスメント(通称カスハラ)」も含まれる。

最近はハードクレームやカスハラが頻発し、対応に疲弊した現場スタッフが休職や退職に追い込まれることもある。一旦心が病むと回復までに時間を要し、完治しないことも少なくない。また、対応の不手際は会社の評判を落とすことにもつながる。クレーム対応は、いまや組織が一丸となって取り組むべき問題なのである。

クレームは「最初の見極め」が大事
fizkes/gettyimages

最近、クレームの性質は多様化・悪質化しているため、従来の対応では対処が難しい。早い段階で一般クレームかハードクレームかを見極め、それに適した対応に切り替える必要がある。

一般クレームであれば、サービスを向上させるチャンスとして活用できる。だが組織や従業員に対する嫌がらせ、業務妨害ともいえるような悪質なクレームは要注意だ。相手が求めているのは「改善」ではないため、話を聞き続けたり丁寧に対応したりしても解決につながらない。初期段階で、「正当な要求」か「不当な要求」かを見極めることが重要だ。

クレーム対応3つの基本

適切な対応を見定める際は、次の3つを判断基準としよう。

(1)現場の役割と組織の役割

クレーム対応は、現場と組織が協同して対処する必要がある。組織は、現場のスタッフが迷わず行動できるようなルールをつくらなければならない。

具体的には「顧客の定義づけ」「対応方針の決定」「バックアップ環境の整備」の3つをルール化することだ。まずは明確な対応基準を設け、現場がスムーズに対応できるようにバックアップ体制を整える。組織と現場の両輪がかみ合ってはじめて、クレーム対策は正しく機能するのだ。

(2)クレームの種類

クレームは大きく3つに分けられる。

1つは先述の、正当な要求に基づいた「一般クレーム」だ。

次は「特殊クレーム」である。商品やサービスへの意見と見せかけて、全く関係のないことを持ち出してスタッフを困らせるというものだ。担当者には非がないのに「対応が悪い」「話し方が気に入らない」といちゃもんをつけるのがこれに当たる。

最後は「悪意クレーム」だ。これは金銭の要求や業務妨害など、明らかに別の目的があるクレームである。悪意クレームの対応は、専門の部署や専門家に任せよう。

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要約公開日 2024.08.09
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