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ひとり法務

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ひとり法務
出版社
同文舘出版

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出版日
2024年03月21日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

法務は会社の売上に直結しない部署であることから、多くの企業にとってはリソースを割きづらい分野である。だから、社内に法務担当者がひとりしかいない、「ひとり法務」と呼ばれる人は意外に多いものだ。もしそれまで法務経験がなかったのに、「ひとり法務」を任されたら、何から手をつけるべきだろうか。社内に相談できる人も、他社の法務に知り合いもいないとしたら、日々の業務を不安な気持ちでこなさなければならないかもしれない。

著者は、企業の法務部門の責任者を務め、契約業務から渉外業務まで幅広い業務を担当しながら、「ひとり法務」として得た学びをSNSを通じて積極的に発信している「法務のいいださん」こと飯田裕子さんだ。本書は、「『ひとり法務』をはじめた頃の自分が、この情報があれば、もう少し“安心して”、『ひとり法務』をスタートできた」と思える本を目指したという。弁護士や研究者による専門書とは一味違う、企業の法務の仕事をよく理解した著者ならではの視点から“企業法務”を読み解くことができる一冊だ。現場での経験を踏まえ、それを他の人にも役立つかたちでアウトプットすることを常に考えている人の解説は、非常に貴重なものだ。

法務実務に関する本は数多くあれど、「ひとり法務」に特化した書籍はめずらしい。法務として採用された人や法務に異動になった人、法務部門を設置しようと検討している経営層、さらには法務部門への相談の仕方がわからないというビジネスパーソンにも本書はおすすめだ。

ライター画像
鈴木えり

著者

飯田裕子(いいだ ゆうこ)
LAPRAS株式会社 法務部門責任者
1991年生まれ。長崎県出身。中央大学法学部卒業後、金融システム営業、司法書士法人での事務職、士業総合コンサルグループのバックオフィスを経て、現職にて「ひとり法務」となる。契約業務から渉外業務まで幅広い業務をひとりで担当しつつ、ベンチャー企業の「ひとり法務」として得た学びを「法務のいいださん(@iidasame)」アカウントで、note等で積極的に発信している。

本書の要点

  • 要点
    1
    法務になってまずすべきことは会社からの「期待値のすり合わせ」である。各部署にヒアリングし、それを「期待値」と「現在地」に整理した“一覧表”を作ろう。
  • 要点
    2
    法律の知識があっても、リスクに気づくことができなければ法務の仕事は成り立たない。法務は法律に向き合う仕事であるが、法律を使って満足させたい「顧客」との信頼関係を築くことが重要だ。
  • 要点
    3
    「リスクの評価」は専門家の力を借りることもできるが、「リスクの検知」は社内にいる法務の重要な業務である。まず身につけるべきは「問題を検知するための知識」である。

要約

「ひとり法務」になって最初にやること

会社からの「期待値」と「現在地」を確認しよう

あなたが「ひとり法務」になったとき、最初にすべきことは「期待値のすり合わせだ。会社には法務を置きたい理由がある。それを把握せずに目の前の仕事に追われてしまうと、会社が期待していた成果と自分が努力したポイントがずれたまま突き進んでしまうことになりかねない。また、長期的な視点や優先順位がわからないままに目の前の仕事を進めれば、すぐに対応すれば簡単に済んだことが、後になって大きな問題になって現れることもあるかもしれない。

まずは今の法務の課題や、法務に対する期待やその優先順位を聞いてまわるのがおすすめだ。ヒアリングを終えたら、その内容を「期待値」と「現在地」に整理した“一覧表”を作る。その上で、「①その現状が続くことで会社が抱えるリスク」、「②会社に与えるインパクト」、「③対応にかかる工数」を指標として優先順位をつけていく。これにより、社内で課題や優先度の相談ができるし、重大なリスクを見落とすことを防ぐこともできる。さらに、「ひとり法務」が何をやっているか外からわからないという事態も防ぐことができ、法務の成果や存在価値を社内にアピールしやすくもなるはずだ。

他部門との業務範囲の切り分けや、役割分担について確認しよう
Wasan Tita/gettyimages

契約書への押印や管理は総務か、法務か。商標や特許などの管理は法務か、事業部の中にある別部門か。法務部門と他部門の業務の境界線や範囲は企業により異なる。法務部門の立ち上げの際には、他部門が法務にどこまでの範囲を求めているのかを確認しておかなければ、思わぬ行き違いが起こりうる。

事業部門側は、法務部門ができたなら契約事務はすべて法務に依頼したいと思っているかもしれない。しかし、「ひとり法務」の場合、付随する契約事務まですべて引き受けると、時間に余裕がなくなることが予想される。そうなれば、契約書審査のスピードが落ちて事業にネガティブな影響を与えかねない。事業部側の希望をヒアリングしつつ、法務が担うべき業務範囲の切り分けを相談することが大切だ。

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要約公開日 2024.08.02
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