あなたが「ひとり法務」になったとき、最初にすべきことは「期待値のすり合わせだ。会社には法務を置きたい理由がある。それを把握せずに目の前の仕事に追われてしまうと、会社が期待していた成果と自分が努力したポイントがずれたまま突き進んでしまうことになりかねない。また、長期的な視点や優先順位がわからないままに目の前の仕事を進めれば、すぐに対応すれば簡単に済んだことが、後になって大きな問題になって現れることもあるかもしれない。
まずは今の法務の課題や、法務に対する期待やその優先順位を聞いてまわるのがおすすめだ。ヒアリングを終えたら、その内容を「期待値」と「現在地」に整理した“一覧表”を作る。その上で、「①その現状が続くことで会社が抱えるリスク」、「②会社に与えるインパクト」、「③対応にかかる工数」を指標として優先順位をつけていく。これにより、社内で課題や優先度の相談ができるし、重大なリスクを見落とすことを防ぐこともできる。さらに、「ひとり法務」が何をやっているか外からわからないという事態も防ぐことができ、法務の成果や存在価値を社内にアピールしやすくもなるはずだ。
契約書への押印や管理は総務か、法務か。商標や特許などの管理は法務か、事業部の中にある別部門か。法務部門と他部門の業務の境界線や範囲は企業により異なる。法務部門の立ち上げの際には、他部門が法務にどこまでの範囲を求めているのかを確認しておかなければ、思わぬ行き違いが起こりうる。
事業部門側は、法務部門ができたなら契約事務はすべて法務に依頼したいと思っているかもしれない。しかし、「ひとり法務」の場合、付随する契約事務まですべて引き受けると、時間に余裕がなくなることが予想される。そうなれば、契約書審査のスピードが落ちて事業にネガティブな影響を与えかねない。事業部側の希望をヒアリングしつつ、法務が担うべき業務範囲の切り分けを相談することが大切だ。
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