市場はいつも、少数意見の味方だ。大勢と同じ考えで取引をすれば誤った時に大損しやすく、少数派の考えで取引をすれば損失は少ない。たとえば大多数の投資家が「A社は今後5年間、年率10%増益するらしい」と強気の読みをしていたとする。そこで「いや、30%増益が可能ではないか?」と思っている少数派がいたとすれば、それは立派な投資アイデア(買いのアイデア)になるだろう。
株価には、その会社の将来性やビジネスチャンスの有無が織り込まれている。これは「大型株」になればなるほど見えにくくなるので、個人投資家としては、取引コストを抑えて安い売買手数料で投資できる割安小型株のほうが探しやすい。
少数派として「投資のアイデア」を探すには、まず「常識を疑う」ことだ。本書ではこのことを「counterintuitive」という単語でよく表現している。世間で当然と考えられていることと、現実が異なることは珍しくない。あらゆる情報には、発信者と受け手、双方のバイアスがかかっている。100%正しいと考えず、ほんの少しでも「そうではない確率」を念頭に置いておくべきだ。特に株式投資では、この「バイアス」の部分を自分で「補正」しながら判断するように心がけたい。少しでもネガティブなニュアンスで語られた情報には、「かなり重要な問題」が潜んでいるものだ。
投資判断に関する情報を集めるためにお金をかける必要はない。「新NISAで200万円のうち半分はTOPIXのETF、残りは複数の日本の割安株」という個人投資を考えている程度であれば、情報を得るためにお金を支払うよりも、株を買う元手にまわすことが肝心である。
「役に立つ有料の情報源」を1つ挙げるとするなら「会社四季報」だ。オンラインのベーシックプランであれば低価格で済み、無料の有益な情報源である企業のホームページにもリンクされている。
機関投資家のように大型株に目配りする必要がある人なら、相場に埋め込まれたコンセンサスを読み解くために、メディアの情報やアナリストの意見をフォローしなくてはならない。多くの場合、たくさんの知識を蓄積している「市場」は合理的に動く。しかし、大型株にはその市場が「一瞬の隙」を見せることがあるし、割安小型株はそもそも隙だらけだ。企業をフォローしているアナリストの数が少ない企業の株券ほど、株価に動きがあったとしても出し抜かれずに済む。有限な時間の中でリサーチにかけるエネルギーは、勝ち筋に集中したほうがよい。
「割安小型株」の“割安”は、会社の価値をどう決めるかに関係する。その価値の評価基準のうち代表格なのはPER(株価収益率)である。PERは株価を「一株あたり当期利益」で割った倍率を指す。一株あたりの利益が100円、株価が1000円とすれば、「PER=10倍」と評価されるということだ。発行済み株数が100株ならば時価総額は10万円、当期利益は1万円となる。このPERが低いほど、株は「割安」と呼ばれることが多い。
ただし、「将来の利益から割り出した適正なPER」だけでなく、会社のバランスシートを見て、資産や借金の状況を含めて検討しなければならない。特に、極端に低金利の日本の状況においてPERで企業価値を査定するには、財務構造を揃える必要があるのだ。
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