もし手元からスマホがなくなったら、あなたは何日耐えられるだろうか。ある調査結果によると、30代以下の女性の半数以上が「1日も耐えられない」と答えたという。
生物の進化には何千年、何万年といった歳月が必要で、人類の目も長い時間をかけて環境に適してきた。スマホが誕生してからまだ20年にも満たないが、私たちは20センチほどの小さな画面を見続けている。これは目にとって非常にストレスフルな状況だ。
この状況になんとか適応しようともがいた結果、誕生したのが「スマホアイ」だ。著者が命名したこの「スマホアイ」とは、近くの狭い範囲を見ることに慣れた「スマホ用の目」のことである。
スマホアイには「眼球運動が鈍い」「視野が狭い」「両眼視機能が弱い」といった特徴があり、さらに、近視の進行やドライアイ、眼精疲労といったさまざまな症状を引き起こす。睡眠不足やスマホ依存など間接的な影響も含めると、さらに広範に及ぶ。
スマホで撮影した写真を見て「なんか違う」とがっかりしたことはないだろうか。実は、私たちが目で見て認識しているものは、脳が複雑に処理をした映像だ。私たちは、目ではなく脳でものを見ているのだ。
「スマホアイ」は子どもにどのような影響を与えるのか。
まず、視野が狭くなることだ。「歩きスマホ」をしているとき、急に目の前に人が現れてぶつかりそうになる……ということはないだろうか。このとき、目のピントはスマホの小さな画面に合っていて、周囲が視界に入っていても認識していない状態だ。視野が狭まり、視界の中心しか認識できないスマホ仕様の目になってしまうのだ。
スマホアイになると、立体感・遠近感がつかみづらくなる。人間は左右の目で見た情報を脳内で合わせ、立体感のある映像として認識する。しかし両目で近くを凝視した状態が長く続くと、左右の視力に差が出て、両目でものを見る能力である「両眼視機能」が衰える。両眼視機能が弱いと遠近感がつかめず、階段を踏み外しやすくなったり、ボールをうまくキャッチできなくなったりする。
目の機能低下は学力にも影響する。たとえ視力がよくても両眼視機能など視覚情報の認知機能に問題があると、「どこを読んでいるかわからなくなる」「算数の文章題が解けない」といったことが起こる。スマホアイは間接的に子どもの勉強を邪魔しているのだ。
子どもがスマホアイになっていないか、大人は目を光らせる必要がある。「目の様子がおかしい」「運動や勉強は得意だが、球技や音読が苦手」といった場合は要注意だ。
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