スマホアイ

眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法
未読
スマホアイ
スマホアイ
眼科専門医が教える目と脳と体を守る方法
未読
スマホアイ
出版社
出版日
2024年05月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

スマホの所有が1人1台の今、大人から子どもまでスマホは生活に欠かせないツールとなっている。要約者の家庭もその例にもれず、たとえばリビングでくつろいでいるとき、ふと顔を上げると家族全員がそれぞれのスマホを眺めていることがある。どこか奇妙ではあるが、今どき珍しい光景でもない。

スマホを使い続けることで、もっとも影響を受けるのは「目」である。小さな画面をずっと見続けていると目が疲れて、頭までぼーっとしてくる。大人ですらそうだから、スマホが子どもに与える影響はいかばかりか。

本書では眼科専門医である著者が、スマホを使いすぎている現代人に警鐘を鳴らす。「スマホアイ」とは著者が考えた名称で、近くばかりを凝視する「スマホ用の目」のことを指す。スマホアイになると眼球運動の鈍化や視野狭窄、両眼視機能の衰えなどが起こり、その結果、学力や運動能力にも悪影響を及ぼすという。とくに発達過程にある子どもがスマホを長時間使うことは、想像するよりもずっと怖いことなのだ。

要約者の目が点になったのは「眼球のラグビーボール化」だ。普通、眼球は野球ボールのような球体をしているが、スマホを見続けているとラグビーボールのような楕円形に歪む。一旦変わってしまった形は元に戻らず、ひどい場合は緑内障や網膜剥離になる可能性もあるという。本書では、スマホアイを防ぐ対策もしっかりと解説している。

目をつぶりたくなるような話がいくつもあるが、痛い目に遭う前に目を通しておいて損はない。現代人必読の一冊だ。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

松岡俊行(まつおか としゆき)
医学博士。眼科専門医。
大阪市出身。幼少より左右の視力に差があること(不同視)で目に興味を持つ。灘中学校・高等学校を経て、1992年京都大学医学部医学科卒。眼科研修の後、1996年京都大学大学院医学研究科、2001年、ロンドン大学UCL(University College London)客員研究員。京都大学大学院在学中に「Science」に、ロンドン留学中に「Nature」に論文掲載。2008年、京都大学大学院医学研究科准教授。2019年、大阪府吹田市に江坂まつおか眼科を開業。2021年、医療法人アメミヲヤ設立。2022年、「近視の撲滅を目指す Dr.まつおか」YouTubeチャンネル開設。
スマートフォンの普及による子どもの視力低下や、眼球運動、両眼視機能への悪影響などを懸念し「スマホアイ」と称して警鐘を鳴らす。子どもの目を守る眼科医として、寝ている間に専用のコンタクトレンズを装着することで視力回復を図る「オルソケラトロジー」を推進するほか、自宅でできる手軽な視力回復メソッドとして「マジカルフレーズ」を考案。視力の維持・回復だけでなく、視機能を守ることで子どもの健やかな成長を促す活動に注力している。
近著に『眼科医が考案 1日1分読むだけで目がよくなるマジカルフレーズ』(アスコム)。

本書の要点

  • 要点
    1
    近くばかりを凝視するスマホ用の目「スマホアイ」になると、目の機能が低下して脳や体に悪影響を及ぼす。具体的には、近視の進行、視野狭窄、遠近感がつかめないなどで、ひいては学力や運動能力の低下も招く。
  • 要点
    2
    「見ること」と子どもの脳の発達には密接な関係がある。目と脳の「見る能力」を伸ばすには、6歳ごろまでにいろいろなものを実際に見せて、脳に刺激を与える必要がある。
  • 要点
    3
    スマホアイを防ぐには「近くを長時間見続けないこと」が大切だ。そのための方法として「20・20・20ルール」がある。

要約

【必読ポイント!】新現代病「スマホアイ」

スマホ用の目「スマホアイ」

もし手元からスマホがなくなったら、あなたは何日耐えられるだろうか。ある調査結果によると、30代以下の女性の半数以上が「1日も耐えられない」と答えたという。

生物の進化には何千年、何万年といった歳月が必要で、人類の目も長い時間をかけて環境に適してきた。スマホが誕生してからまだ20年にも満たないが、私たちは20センチほどの小さな画面を見続けている。これは目にとって非常にストレスフルな状況だ。

この状況になんとか適応しようともがいた結果、誕生したのが「スマホアイ」だ。著者が命名したこの「スマホアイ」とは、近くの狭い範囲を見ることに慣れた「スマホ用の目」のことである。

スマホアイには「眼球運動が鈍い」「視野が狭い」「両眼視機能が弱い」といった特徴があり、さらに、近視の進行やドライアイ、眼精疲労といったさまざまな症状を引き起こす。睡眠不足やスマホ依存など間接的な影響も含めると、さらに広範に及ぶ。

スマホで撮影した写真を見て「なんか違う」とがっかりしたことはないだろうか。実は、私たちが目で見て認識しているものは、脳が複雑に処理をした映像だ。私たちは、目ではなく脳でものを見ているのだ。

子どもにどんな悪影響があるか
Orbon Alija/gettyimages

「スマホアイ」は子どもにどのような影響を与えるのか。

まず、視野が狭くなることだ。「歩きスマホ」をしているとき、急に目の前に人が現れてぶつかりそうになる……ということはないだろうか。このとき、目のピントはスマホの小さな画面に合っていて、周囲が視界に入っていても認識していない状態だ。視野が狭まり、視界の中心しか認識できないスマホ仕様の目になってしまうのだ。

スマホアイになると、立体感・遠近感がつかみづらくなる。人間は左右の目で見た情報を脳内で合わせ、立体感のある映像として認識する。しかし両目で近くを凝視した状態が長く続くと、左右の視力に差が出て、両目でものを見る能力である「両眼視機能」が衰える。両眼視機能が弱いと遠近感がつかめず、階段を踏み外しやすくなったり、ボールをうまくキャッチできなくなったりする。

目の機能低下は学力にも影響する。たとえ視力がよくても両眼視機能など視覚情報の認知機能に問題があると、「どこを読んでいるかわからなくなる」「算数の文章題が解けない」といったことが起こる。スマホアイは間接的に子どもの勉強を邪魔しているのだ。

スマホアイのサイン

子どもがスマホアイになっていないか、大人は目を光らせる必要がある。「目の様子がおかしい」「運動や勉強は得意だが、球技や音読が苦手」といった場合は要注意だ。

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要約公開日 2024.08.08
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