自己中心的な人(以下、自己中)はいつも楽しそうだ。それはなぜだろうか。
大なり小なり、人は誰しも自己中だ。人生の主人公は自分であり、自分が楽しいと思うこと、自分にとって価値があることを追い求める。
そしてどんな生物も、自分の生存を何より優先する。生き残るために食べ、縄張りを作り、外敵と戦う。
これらの行動はすべて自分中心、自己中である。つまり自己中な振る舞いは生物の本能のようなものなのだ。
そう考えれば、自己中が楽しい理由は「それが生物の本能だから」という単純明快な答えとなる。
倫理学の世界では、自己中をエゴイズムという概念で説明する。エゴイズムの基本的な考え方は「常に自分を中心に考え、他者よりも自分を優先させること」だ。
近世イギリスの哲学者、トマス・ホッブズは人間の本質をエゴイズムのうちに見いだした。ホッブズは人間を「生まれながらに平等な存在である」とする。ここでいう平等とは、「平等な権利を持っている」ということではない。「同じくらいの力を持っている」、つまり「我々の体力や知性には個体差があるが、大した違いではない」という意味だ。
すべての人間が平等な世界では、絶対的な強者や弱者はいない。つまり、争いが起こったとしても、その戦いは拮抗する。どれだけ体力や知性に優れた人でも勝ち続けることはできず、誰かに殺されてしまう可能性もある。
絶対的な強者のいない戦いは、明確な勝ち負けがつかず、終わりのないものとなる。こうした状態をホッブズは「万人の万人に対する闘争」と呼んだ。万人の万人に対する闘争は、猜疑心により、自分が殺されないために先手を打って他の人を殺すことになる。
すべての人が自己中だと、人々は争い合い、殺し合うことになってしまう。この問題はどのように解決されるべきか。
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