「才能のある人」と「性格がいい人」で、長期的に見て成功する確率が高いのは「性格がいい人」だ。
性格が人生の成功に大きな影響を与えていることは、数々のリサーチからわかっている。これまでは「頭がいい人ほど優秀であり、出世しやすい」と考えられてきた。しかし、IQ(知能指数)と比べて性格は約2.5倍、収入に影響を与えるという研究結果がある。メンタルヘルスの面でもその差は歴然だ。頭のよさも才能も大切だが、「『性格』でも勝負できる」のである。
おとなしい性格も成功の要素に数えられつつある。「おとなしい」「内向的」という言葉には否定的な印象を受けがちだが、内向的な性格にも長所は多い。本書は、最新の脳科学研究を背景として、「おとなしさの真実」と「性格をリセットして成長する方法」をまとめている。
パーソナリティ研究の父であるハーバード大学の心理学者ゴードン・オールポートは、「性格とはある状況で何度も繰り返される思考パターン」と定義している。性格は固定的なものではなく、科学的な方法でシフトできるのだ。
内向性と外向性はよく対比され、内向型はあまり明るくない性格だと思われている。外向型は優れたコミュニケーターであり、リーダーとして頭角を現しやすいことを示す研究もある。
かと言って、内向型が営業の世界で圧倒的に不利だというわけではない。コールセンターの販売員を外向型、内向型、その両方をあわせ持つ両向型の3つのグループに分け、どの性格が高い営業成績を上げているのか分析したペンシルバニア大学の研究では、内向型は外向型よりも約10%高く売り上げていた。最も成績の良かった両向型は、外向型と比べて約32%も高い結果であった。
外向性の高い人は、人が好きでエネルギーにあふれ、話がうまいとされるが、その積極的な姿勢にかえって顧客が引いてしまうこともあるという。自分の視点で物事を捉えがちなのも特徴だ。一方、内向性が高い人は控えめで相手の話をよく聞くため、顧客の信頼度が上がる。両方の性質を持つ両向型は、相手が必要とする情報を積極的に与えつつ、相手の話もしっかり聞ける。
スポーツの世界でも、トップアスリートのおよそ9割は内向型というリサーチ結果がある。スポーツは自己管理や自分自身の心との闘いが必要になる。改善点と忍耐強く向き合える内向的な性格が、一流を形成しているのかもしれない。
「私は内向的で人見知り」という言葉をよく耳にする。人見知りとは一般に、人前で緊張しやすく、対人関係や仕事に支障をきたすことがあり、自分の考えで頭がいっぱいになりがちな傾向を指す。しかし、内向的な人が必ず人見知りになるわけではない。
人見知りとは、「3つの性格が同時に存在したときに初めて生まれる『性格』である」ことは研究で示されている。すなわち、内向性に加えて、マイナス面を気にしてしまう「神経症傾向」が高く、人に合わせがちな「協調性」も高い人たちだ。
人格心理学のジョナサン・チーク教授は内向型を「社交系」「思考系」「不安系」「抑制系」の4つに分類している。明るい「社交系内向型」は、集団行動はするが基本的に一人でいることが好きで、気のおけない少人数での行動を好む。自分の好きなことを話すときは楽しそうなのは「思考系内向型」で、1つのことを突き詰めるタイプなので研究者や職人気質な人に多い。神経質な「不安系内向型」は慣れない状況で不安を感じやすいタイプで、自意識が強く、人見知り傾向があり、いわゆる「繊細さん」も多い。怖がりだがマイペースな「抑制系内向型」は、じっくり計画を立て、時間をかけて考えをまとめてから行動する、協調性の低いタイプだ。
内向型だから暗いのではなく、神経症傾向があるから対人関係での悩みが生まれるのである。この神経症傾向は環境の影響も大きいため、その程度を後天的に抑えることが可能だ。
内向的な性格を直したいと考える人は多いが、本書には「内向型にまつわる4つの非常識」が書かれている。ここでは3つ紹介しよう。
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