知的文章術

誰も教えてくれない心をつかむ書き方
未読
知的文章術
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知的文章術
出版社
出版日
2024年05月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書の冒頭はこんなエピソードから始まる。

昭和40年〜59年にかけて南極観測船として運用された「ふじ」。そこに乗り組んだ夫にあてて、日本にいる妻から打たれた電報はたった3文字。「ア ナ タ」であった――

どんな長い文章よりも多くを語るこのメッセージを読むと、文章は技術ではないということを思い知らされる。ちなみにこのメッセージは、酒で失敗した夫をたしなめるつもりで妻が打ったものだという裏話があるのだが、それを知ってもなおこの3文字にはさまざまな思いが込められているように思えてならない。

本書の著者は、200万部を超えた不朽の名著『思考の整理学』をはじめ、数多くのベストセラーを送り出してきた外山滋比古だ。96歳まで書き続けた著者は、ことばの表現は心であって、技巧ではないと語る。書く人に切実な思いがあってこそ、人の心を打つ文章が生まれる。本書は、そんな著者が「読まずにはいられない文章」を書くための極意を指南した一冊だ。文章を書くための心構えから始まり、読まれる文章のコツ、心をつかむ構成についての考えを書きつらね、よりよい文章を書きたいと願う人の歩むべき道を明るく照らしてくれる。自分には文章術など関係ないと思っている人でも、本書を読み終わったら文章の力の絶大さに心を惹かれてしまうはずだ。現代を生きる人に広く本書をおすすめしたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

外山滋比古(とやま しげひこ)
1923-2020年。愛知県生まれ。英文学者、文学博士、評論家、エッセイスト。東京文理科大学卒業。「英語青年」編集長を経て、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授などを歴任。専門の英文学をはじめ、日本語、教育、意味論などに関する評論やエッセイを執筆した。40年以上にわたり学生、ビジネスパーソンなどを中心に圧倒的な支持を得た287万部突破のベストセラー『思考の整理学』をはじめ、『乱読のセレンディピティ』(扶桑社)、『50代から始める知的生活術』(だいわ文庫)など著作は多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    どんなに栄養があっても、まずい料理はいい料理ではない。同じように、内容がりっぱでも読みたくないと思われる文章はいい文章ではない。気がついたら読み終わってしまうような文章が名文といえる。
  • 要点
    2
    読まれる文章を書くには、センテンスは短く、「が」でセンテンス同士をつながない、つなぎは入れない、という3点を心がけるべきだ。
  • 要点
    3
    おもしろく伝えるには、因果関係を追って述べるのではなく、一番言いたいところ、まん中から話を始めるとよい。

要約

文章を書く心構え

料理のように
miniseries/gettyimages

文章には必ず読んでもらう相手がいる。自分のために書く場合であっても、書くときの自分と読むときの自分は同じではない。個人的な日記は人に見せるものではないが、あとで読んでわからないようでは日記をつける意味がない。日記であってもやはり、読む人のことを考えて書かなければならない。

手紙やはがきのように、読む相手がはっきりしている文章もあれば、印刷物になる原稿で、どこでだれが読むかわからない文章もある。相手あっての文章だと考えると、文章は料理のようなものだということがわかってくる。

料理は作った人も食べるものだが、食べてくれる人がいなければ張り合いがない。うまいと言ってくれる人がいるからこそ、腕をふるう気になるというものだ。

文章は料理だと考えると、まず食べられなくてはならない。何の料理かわからなければ食べてもらえないように、何を言っているのかわからない文章では相手に迷惑だ。誤字、脱字、当て字のたぐいは料理の中の石のようなもので、入っていたら文章を台なしにしてしまう。それから、料理は見てくれだけでなく、栄養がありハラもふくれるということが大事なように、いくら表現にこっていても、中身がなくてはいい文章とは言えない。

なによりも大切なのは、おいしいということだ。どんなに栄養があっても、まずければいい料理ではない。内容がりっぱでも、読みたくないと思われるような文章ではいけないのだ。興味を引かれ、続きが読みたくなり、気がついたら読み終わっていたというのが名文だ。

文章は料理のように、おいしくなければならない。

案ずるよりは書いてみる

文章の期限が決まっていると、妙に負担になるものだ。いいものを書こうと意気込むとよけいに気が重くなる。締切りは迫ってくるのに、思うように原稿が進まず、大して急ぎではないほかの仕事に手を出してしまうことさえある。こうなるともう、約束の原稿は書けない。

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要約公開日 2024.07.28
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