本書は学び続けることの意味を提示しようとするが、新しい知識を身に着けるべきだと主張したいわけではない。既存概念を捨て去ってチャンスをつかむという意識変革こそが重要だ。プログラミングやAIなどの重要性がマスコミで語られると、最先端の知識を学ぶことができる若者だけが、変化をプラスに受け入れられると思いがちである。しかし、技術革新は、そうした技術に関係した知識を身につけた人たちにとってだけ意味があるわけではない。技術を使う側に回れば、それまでは面倒だったことや大資本がないとできなかったことが最も簡単にできるようになる。この意味で、技術革新はどんな層にも恩恵をもたらすものだ。
経験や知識の豊富なシニア層にとっても、これまでにない大きなチャンスが生まれている。しかし、経験や知識はそのままでは活かせない局面も多い。今までの経験をしっかりとした武器に変えるためにこそ、学びが必要なのだ。リスキリングはまったく新しいスキルを身につけることを意味するわけではない。経験を整理し、新しい職場や環境でも利用できるものにすることも、立派なリスキリングだ。
人生100年時代といわれる今、終身雇用はもはや持続可能性はないという前提で社会のあり方を考えていかなければならない。企業自体の存続が危ぶまれるような環境変化が生じている現代では、一人ひとりの能力を高めて、より付加価値を高める労働ができる人材になることが、所得と活躍場所の安定的な確保につながっていく。
企業としても、従業員のリスキリングを重要課題と位置づけているはずだ。しかし、現状ではリスキリングの教育を十分に提供できる体制が整っていないというのが多くの企業の現状だろう。コロナ禍をきっかけにリスキリングの意義が再確認されたことによって、今後は多くの企業がこの課題に真剣に向き合うようになると予想される。
日本企業は自社でしか通用しないスキルを従業員に蓄積させ、生産性を上げてきた。しかし、会社の成長が限界にきている現状では、リスキリングを促して会社を移っても通用するスキルを身につけさせ転職できる人材に育てたほうが、会社にも社会にもプラスになる。
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