東大教授がゆるっと教える

独学リスキリング入門

未読
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独学リスキリング入門
出版社
中央公論新社

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出版日
2024年03月10日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

人生100年時代という言葉とともに注目されるようになった「リスキリング」。これは学び直しの必要性を指すものである。しかし、リスキリングと聞くと、会社から勉強を強制されているような感覚になるかもしれない。そんな不安を抱く方にこそ、本書を手に取ってほしい。

本書で紹介されているリスキリングは、新しいことを学び身につけることを推奨しようとするのではない。むしろ、今までに身につけたことを他の場でも活かすための意識改革としてリスキリングをとらえている。この考え方であれば、何歳になってからも学び直しは可能だし、今まで学んできたことが無駄になることもない。むしろ、リスキリングは今後の人生を充実させるための新たなスタート地点にさえ思える。

著者は、小学校から大学院までの多くの時間を海外で過ごし、高校にあたる年齢ではブラジルで独学で勉強し大検を受けたというユニークな経歴を持っている。本書では、著者が実践してきた独学を振り返りつつ、独学のコツを伝授してくれる。著者なりの独学のポイントは「自分のペースで、時間が空いた時に、自分が学びたいことを学ぶ」こと、そして「頑張りすぎないこと」だ。本書を読んでいると、独学を選択肢として持っておくことは、自分の世界や人生を広げてくれるものだと感じられる。学校の勉強が苦手だった人でも、自分にあった勉強法で、自分の興味について学び、人生を広げようとするならば、楽しく学び直せるのではないだろうか。リスキリングという言葉にプレッシャーを感じている人にほど、本書を読んでもらいたい。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

柳川範之(やながわ のりゆき)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授。中学卒業後、父親の海外転勤に伴いブラジルへ。高校に通わず独学生活を送る。大検(当時)を受け慶應義塾大学経済学部通信教育課程へ入学、シンガポールで通信教育を受けながら独学生活を続ける。卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。『法と企業行動の経済分析』(日経・経済図書文化賞)、『東大教授が教える独学勉強法』『東大教授が教える知的に考える練習』、『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(為末大氏との共著)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    リスキリングとは「将来にわたって能力をできるだけ発揮できるように、能力を高めていくこと」である。このためには雑多な情報や経験を整理し、一般化していくプロセスが必要になる。
  • 要点
    2
    今後の日本が活力ある社会を作り出すためには、一人ひとりのやる気やモチベーションといった「インセンティブ」を高めていくことが必要になる。閉塞感の漂う環境では、将来への希望は持ちにくい。勉強法や働き方が多様化し、選択肢が広がることは、活力につながる重要なファクターである。

要約

大人の学び直しはなぜ必要なのか

技術革新を新たなチャンスに

本書は学び続けることの意味を提示しようとするが、新しい知識を身に着けるべきだと主張したいわけではない。既存概念を捨て去ってチャンスをつかむという意識変革こそが重要だ。プログラミングやAIなどの重要性がマスコミで語られると、最先端の知識を学ぶことができる若者だけが、変化をプラスに受け入れられると思いがちである。しかし、技術革新は、そうした技術に関係した知識を身につけた人たちにとってだけ意味があるわけではない。技術を使う側に回れば、それまでは面倒だったことや大資本がないとできなかったことが最も簡単にできるようになる。この意味で、技術革新はどんな層にも恩恵をもたらすものだ。

経験や知識の豊富なシニア層にとっても、これまでにない大きなチャンスが生まれている。しかし、経験や知識はそのままでは活かせない局面も多い。今までの経験をしっかりとした武器に変えるためにこそ、学びが必要なのだ。リスキリングはまったく新しいスキルを身につけることを意味するわけではない。経験を整理し、新しい職場や環境でも利用できるものにすることも、立派なリスキリングだ。

会社に一生を捧げる生き方をやめよう
78image/gettyimages

人生100年時代といわれる今、終身雇用はもはや持続可能性はないという前提で社会のあり方を考えていかなければならない。企業自体の存続が危ぶまれるような環境変化が生じている現代では、一人ひとりの能力を高めて、より付加価値を高める労働ができる人材になることが、所得と活躍場所の安定的な確保につながっていく。

企業としても、従業員のリスキリングを重要課題と位置づけているはずだ。しかし、現状ではリスキリングの教育を十分に提供できる体制が整っていないというのが多くの企業の現状だろう。コロナ禍をきっかけにリスキリングの意義が再確認されたことによって、今後は多くの企業がこの課題に真剣に向き合うようになると予想される。

日本企業は自社でしか通用しないスキルを従業員に蓄積させ、生産性を上げてきた。しかし、会社の成長が限界にきている現状では、リスキリングを促して会社を移っても通用するスキルを身につけさせ転職できる人材に育てたほうが、会社にも社会にもプラスになる。

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要約公開日 2024.08.12
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