福岡県九州市にある遠賀郡岡垣町で生まれ育った著者は、東京の大学に進学するまでずっとその小さな町で暮らしていた。英語学習への転機が訪れたのは予備校時代。発音がネイティブ並みの魅力的な先生に出会い、授業中は先生の発音を真似て音読、家でもひたすら音読の練習を繰り返した。英語教育の権威である先生やお弟子さん、海外体験の話をしてくれる先生にも出会い、楽しく英語を教わることができた。当時は「読み書き以外の英語」を学ぶことはとても新鮮なことだった。「音」を使って学ぶ体験によって、一気に英語への関心が高まった。
「英語を話せるようになりたい!」と思った著者は、浪人を経て2回目の大学受験で上智大学の英語学科への進学を選択した。意気揚々と入学したが、英語学科のレベルは地方出身の著者を打ちのめすものだった。帰国子女などの海外経験者が入学者のうちかなりの数を占め、英語は聴けて話せて当たり前。受験勉強で身につけた英語は通用せず、授業で先生が話す英語がほとんどわからなかった。
英語学習のモチベーションが下がりフラストレーションが溜まっていた著者は、「アメリカに行けば英語が話せるようになる」という話にすがり、アルバイトで貯めたお金で2ヶ月半の全米を放浪する旅に出る。
当然ながら、アメリカへ行ってたった2ヶ月半でネイティブなみの英語力が身につくことはなかった。しかし、この経験は著者のマインドセットを大きく変えた。滞米中に一緒に過ごした旅行者たちの英語に対する姿勢は日本人とはまるで違っていた。彼らは英語を道具だと捉えて、自分の意見を伝えるために間違うことも気にせずにどんどん使っていたのだ。初歩的な文法の間違いがあっても、周囲の人を惹きつけ、感心させたり笑わせたりしている人たちがいる。これが世界で使われている英語なんだと知ったことは大きかった。
英語の技能向上はもちろん大切だが、それを現場で使いこなせなければ意味がない。対話力の重要性を認識した著者は、帰国後にアウトプットを重視する勉強法に変えて、もう一度英語に向き合った。
1年後に再度渡米したときには、英語を聴く力は大きく改善し、「対話する英語」になっているのを感じられた。TOEIC900点、TOEFL600点、英検1級と、英語科の学生としても申し分ないレベルに到達して卒業し、東進ハイスクールの英語講師として35年以上教壇に立ち続けている。
本書で伝えるのは、そんな経験に裏打ちされた、マインドセットを変えることから始める英語の正しい学習方法だ。
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