大人になるとなぜ、時間に追われるようになるのだろう。
著者は小学校の頃、20分ほどの休み時間には校庭に向かい、ときにはオリジナルの遊びを生み出しながら、時間いっぱい創造的で健康的な時間に没頭していた。しかし大人になった今では「20分では何もできない」と感じ、手元のスマホで時間を浪費してしまうことがある。
本書のテーマは時間であるが、扱うのは「時短術」や「効率術」ではない。「時間がない」と嘆いているのに、スマホいじりなどで時間を浪費してしまう。そんなチクハグな時間感覚から抜け出し、生きていることそのものを楽しむような瞬間を取り戻すことが目的だ。
「大人になると時間の進み方が早くなる」理由には諸説ある。スターリング大学の実験によると、「周囲の文脈から対象を把握する脳の能力は、成長とともにゆっくりと発達する」という。何かを判断する時、大人になるにつれ経験から推測したり、場の空気を読んだりすることを覚えていく。それは脳の省エネのために有効ではあるが、「思い込み」にとらわれて、現実によくない影響をおよぼすこともある。
時間の感覚もその一例である。小学校の時の時間感覚を失ってしまうのは、大人になった現在の時空が歪んでいるからかもしれないのだ。
現代は昔に比べて便利になったはずなのに、時間はあっという間に過ぎていっているように感じる。本書は現代人の課題を「有意義な時間の使い方」にあると考え、後悔しない人生を送るための方法を体系的に整理する。
時間術について書かれた書籍は多い。こうした本を読むと、人間は時間を自由自在にコントロールできるかのような錯覚に陥る。しかし、現実にはそううまくいかない。お金は使わなければ貯められるが、時間は貯金ができない。時間は使っても使わなくても、刻一刻と失われるのである。
著者は、「有意義な時間を過ごす」というテーマに対し、ある前提をおいた。それは、人は本当は有意義な時間を過ごしたいと思っているが、やるべきことをしようとすると邪魔が入り、後回しにしてしまっている、ということだ。これが繰り返されると、「日々をこなす」だけで時間が過ぎてしまい、「このままでいいのかな」という漠然とした焦りや不安が生まれるのではないだろうか。
時間の使い方に関する真の課題は、当の本人すら「自分にとって有意義な時間とはなにか」、そして「有意義な時間を邪魔するものの正体」も分かっていないことである。
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