指示をされても、その通りに動けない人がいる。
典型的なケースを紹介したい。ある日、上司が部下に「顧客データを入力しておいて、終わったらシュレッダーにかけて」と指示した。するとその部下はいきなり顧客データをシュレッダーにかけようとし、それに気づいた上司が慌てて止めることとなった。
また、他の部署から頼まれた仕事をその部下に任せ、できあがったら依頼元の部署に持っていくよう指示しておいた。すぐに終わるような仕事だったが、半日経っても依頼元の部署には届いておらず、催促されてしまった。部下に問いただすと、「作業はだいぶ前に終わってるけど、その部署に持って行けとは言われていない」と譲らない。
このようなことが続いたため、周囲は「試用期間のうちに辞めてもらうしかないだろう」と言う。だが本人はまじめに働いているため、簡単に切り捨てる気にはなれない――。
このケースにおいて、部下がうまく対応できなかった原因は2つ考えられる。まず一つは、複数の指示を一度に理解するのが困難だということだ。「顧客データを入力しておいて、終わったらシュレッダーにかけて」という指示は、厳密にいうと、「顧客データの入力を頼む」と「入力が終わったらシュレッダーにかけて」という2つの指示で構成されている。このような指示に混乱してしまう人には「顧客データの入力→入力が終わったらシュレッダーにかける」と記した紙を渡し、まずはデータ入力に集中してもらうのがよい。指示の流れを記憶にとどめておくことさえできれば、問題なく仕事を遂行できるだろう。
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