「指示通り」ができない人たち

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「指示通り」ができない人たち
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2024年03月08日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

コミュニケーションはいつも難しいものだが、とりわけ上司と部下、同僚同士、取引先とのコミュニケーションは、仕事における悩みの大部分を占めるのではないだろうか。本書は、特に経営者や管理職に向けた、部下や従業員に接する際の“困りごと”解消のための指南書である。

伸び悩む従業員というのは、どの時代、どの業界、どの職場にも一定数いるものである。その中でも本書では、指示通りに動けない人、質問に対する回答が要領を得ない人、自分の課題に目を向けられない人、何度も同じミスを繰り返す人、仕事はそつなくこなすのに成長スピードが遅い人、すぐに感情的になる人などが挙げられている。これらの人たちに共通するのは、一生懸命やっているのにうまくいかないことだ。

本書の著者、榎本博明氏は心理学者として、職場の困った人たちの思考・行動パターンを分析し、その原因を3つに分類した。著者によると、やる気はあるのに伸び悩む人たちは、認知能力、メタ認知能力、非認知能力のいずれかが欠けている可能性が高い。その前提のもと、一つひとつの行動の原因と対応策が示されている。

本書を一読すれば、困った従業員への対応方針が明らかになるだろう。これまで「気質の問題だから仕方ない」「重要な業務は依頼しないようにしよう」という方針で接していた従業員に対しても、その能力を引き出し、いきいきと活躍してもらう方法が見つかるかもしれない。部下や従業員とのコミュニケーションやマネジメントに悩む人におすすめしたい一冊だ。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

榎本博明(えのもと ひろあき)
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表。著書に『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』『「上から目線」の構造』など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    指示通りに動けない人は、認知能力が欠けている可能性がある。このような人たちへの対応策の一つは、指示内容を分割して、対応すべき順を紙に書き出して渡すことだ。
  • 要点
    2
    何度も同じようなミスを繰り返す人はメタ認知に問題があると考えられる。ミスをしたときに「何がいけなかったんだろう?」「今後どういうことに気をつける必要があるだろうか?」などと自問自答する習慣づけを促すとよい。
  • 要点
    3
    すぐ感情的になってしまう人の多くは、非認知能力の一つである「自分の感情をコントロールする力」が欠如している。まずは感情的になることのデメリットを伝えよう。

要約

【必読ポイント!】 認知能力の改善が必要な人

指示したことができない
FreshSplash/gettyimages

指示をされても、その通りに動けない人がいる。

典型的なケースを紹介したい。ある日、上司が部下に「顧客データを入力しておいて、終わったらシュレッダーにかけて」と指示した。するとその部下はいきなり顧客データをシュレッダーにかけようとし、それに気づいた上司が慌てて止めることとなった。

また、他の部署から頼まれた仕事をその部下に任せ、できあがったら依頼元の部署に持っていくよう指示しておいた。すぐに終わるような仕事だったが、半日経っても依頼元の部署には届いておらず、催促されてしまった。部下に問いただすと、「作業はだいぶ前に終わってるけど、その部署に持って行けとは言われていない」と譲らない。

このようなことが続いたため、周囲は「試用期間のうちに辞めてもらうしかないだろう」と言う。だが本人はまじめに働いているため、簡単に切り捨てる気にはなれない――。

このケースにおいて、部下がうまく対応できなかった原因は2つ考えられる。まず一つは、複数の指示を一度に理解するのが困難だということだ。「顧客データを入力しておいて、終わったらシュレッダーにかけて」という指示は、厳密にいうと、「顧客データの入力を頼む」と「入力が終わったらシュレッダーにかけて」という2つの指示で構成されている。このような指示に混乱してしまう人には「顧客データの入力→入力が終わったらシュレッダーにかける」と記した紙を渡し、まずはデータ入力に集中してもらうのがよい。指示の流れを記憶にとどめておくことさえできれば、問題なく仕事を遂行できるだろう。

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要約公開日 2024.08.27
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