池上彰の未来予測 After 2040

未読
池上彰の未来予測 After 2040
池上彰の未来予測 After 2040
著者
未読
池上彰の未来予測 After 2040
著者
出版社
主婦の友社

出版社ページへ

出版日
2024年07月31日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

本書は池上彰氏が「2040年の世界」を予測し、明るい未来をつくるための提言をまとめた本だ。「仕事」「教育」「自然災害」「暮らし」「健康」の5つのカテゴリーに分け、現在や過去に起こったことと、それらから考えられる未来予想図が記されている。300ページを超える厚い本ではあるが、なめらかな筆致とわかりやすい解説で、池上氏の番組を視聴するかのごとく読み進められる。

「2040年」は、2024年を起点とすると16年後の世界である。少し先のことのように感じるかもしれないが、16年前を振り返ると、ちょうどスマートフォンが世に出始めた頃である。当時はまだガラケーが優勢で、「スマホに乗り換えるかどうか」を迷っている人も大勢いた。

しかし、この16年でスマホは「生活必需品」と言われるまでになった。コミュニケーションから支払い、健康管理、テレビ視聴など、あらゆることがスマホ1台で完結できるようになり、私たちのライフスタイルは大きく変わった。このダイナミックな変化を考えると、次の16年で何が起きても不思議ではない。

これからの時代は、生成AIなどテクノロジーの進化がカギを握っているのは間違いない。本格的なAI時代を前に、戦々恐々としている人もいるだろう。しかし、未来はいつも現在の先にある。世の中を見渡し、未来を変えるかもしれない「小さな兆し」を見つけて、今からそれに備えていけばいいのである。本書を「未来への準備」の参考書として活用してほしい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

池上彰(いけがみ あきら)
1950年、長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年にNHK入局。報道記者としてさまざまな事件、災害、消費者・教育問題などを担当。1994年からは11年にわたりニュース番組のキャスターとして「週刊こどもニュース」に出演。2005年よりフリーのジャーナリストとして執筆活動を続けながらテレビ番組などでニュースをわかりやすく解説し、幅広い人気を得ている。また、5つの大学で教鞭をとる。『池上彰が大切にしているタテの想像力とヨコの想像力』(講談社)『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』(主婦の友社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    AIの進化により、多くの仕事が代替されていくだろう。しかし、過去にも消滅した仕事はたくさんあったが、それで失業率が上がっているわけではない。
  • 要点
    2
    子ども時代は視野を広げ、教養を身につけることが大切だ。教養はじわじわと効き、生涯にわたって役に立つ。
  • 要点
    3
    急激な円安の背景には、日米の金利差がある。ドル買い円売りが進むことで、日本円が海外に流れてしまうことが危惧される。
  • 要点
    4
    「ベーシックインカム」の導入に前向きな国はまだない。年金や健康保険などの社会保障を財源に充てるため、失敗したときのインパクトが大きいためだ。

要約

仕事

AIは私たちの仕事を奪うのか?

急速な生成AIの進化により、多くの人が「将来的には今の仕事がなくなってしまうかもしれない」という不安を抱いている。オープンAIとペンシルベニア大学の論文によると、生成AIの普及は、アメリカの労働者の約8割に影響を与える見込みだという。弁護士など参入障壁が高い仕事やホワイトカラーの仕事にも、職種によっては大きな影響があるだろう。

単純作業のアルバイトも減っていくことが予測される。実際、ファミリーレストランではタッチパネル注文や配膳ロボットに代替されつつあり、スーパーやコンビニでもセルフレジを導入する店が増えている。

だが過去を振り返ると、さまざまな仕事が消えている。たとえば、かつては駅員が改札で切符に1枚ずつハサミを入れていたが、国鉄からJRへと民営化した際、自動改札機が導入された。これにより多くの駅員が余ってしまい、キヨスクの販売員に配置転換させられた人もいた。

しかしJRはその後、鉄道以外の分野でも利益を出せる企業に刷新し、新しい仕事もどんどん生まれている。一部の仕事が消えても、失業率が高いままというわけではないのだ。

長年続けてきた仕事がなくなるのは悲しいかもしれないが、そんなときこそ好奇心を持ち、新しい仕事に挑戦しよう。

日本は「ものづくり幻想」から脱却せよ
UniqueMotionGraphics/gettyimages

日本はいまだ、高度経済成長期の成功体験「ものづくり幻想」を引きずっている。今やものづくりは「世界の工場」である中国が圧倒的であり、品質も向上しつつある。たとえば、電気自動車の分野では中国のEV最大手「BYD」の売れ行きが好調だ。22年には世界で約186万台を販売し、イーロン・マスクのテスラ(約131万台)を追い抜いた。

日本の自動車メーカーがガソリン車にこだわっている間に、世界ではEVの開発競争が激化した。自動車の主流がEVになると、日本の自動車メーカーは部品を作る下請け企業になる可能性がある。AmazonやGoogleも自動運転車の研究をしているというニュースもあり、将来的には「巨大ITが自動車産業を牛耳り、日本はハード部分だけを作るようになるのでは」という予測が現実のものになりつつある。

「ソフト面」も楽観視できない。日本のマンガやアニメは世界で大人気だと騒がれているが、実際は、日本のアニメ業界は中国の下請けになっている。かつては人件費の安い中国にアニメ制作を発注していたが、今は日本の方が安いため、その逆の現象が起こっているのだ。

中国発のオリジナルアニメも世界で人気を博している。もちろん日本にも優れたクリエイターはいるが、中国は日本の10倍以上の人口を持つ。才能あるクリエイターが日本の10倍以上いると考えるべきだ。

日本はものづくり幻想を捨て、ソフト面、コンテンツ作りに力を入れていく必要がある。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3075/4233文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.09.04
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
努力革命
努力革命
伊藤羊一尾原和啓
未読
精神科医Tomyのほどほど力
精神科医Tomyのほどほど力
精神科医Tomy
未読
報道、トヨタで学んだ伝えるために大切なこと
報道、トヨタで学んだ伝えるために大切なこと
富川悠太
未読
働くということ
働くということ
勅使川原真衣
未読
うまく「雑談できる人」と「できない人」の習慣
うまく「雑談できる人」と「できない人」の習慣
松橋良紀
未読
凡人が天才に勝つ方法
凡人が天才に勝つ方法
つんく♂
未読
一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略
一日の休息を最高の成果に変える睡眠戦略
角谷リョウ
未読
あっという間に人は死ぬから
あっという間に人は死ぬから
佐藤舞(サトマイ)
未読