急速な生成AIの進化により、多くの人が「将来的には今の仕事がなくなってしまうかもしれない」という不安を抱いている。オープンAIとペンシルベニア大学の論文によると、生成AIの普及は、アメリカの労働者の約8割に影響を与える見込みだという。弁護士など参入障壁が高い仕事やホワイトカラーの仕事にも、職種によっては大きな影響があるだろう。
単純作業のアルバイトも減っていくことが予測される。実際、ファミリーレストランではタッチパネル注文や配膳ロボットに代替されつつあり、スーパーやコンビニでもセルフレジを導入する店が増えている。
だが過去を振り返ると、さまざまな仕事が消えている。たとえば、かつては駅員が改札で切符に1枚ずつハサミを入れていたが、国鉄からJRへと民営化した際、自動改札機が導入された。これにより多くの駅員が余ってしまい、キヨスクの販売員に配置転換させられた人もいた。
しかしJRはその後、鉄道以外の分野でも利益を出せる企業に刷新し、新しい仕事もどんどん生まれている。一部の仕事が消えても、失業率が高いままというわけではないのだ。
長年続けてきた仕事がなくなるのは悲しいかもしれないが、そんなときこそ好奇心を持ち、新しい仕事に挑戦しよう。
日本はいまだ、高度経済成長期の成功体験「ものづくり幻想」を引きずっている。今やものづくりは「世界の工場」である中国が圧倒的であり、品質も向上しつつある。たとえば、電気自動車の分野では中国のEV最大手「BYD」の売れ行きが好調だ。22年には世界で約186万台を販売し、イーロン・マスクのテスラ(約131万台)を追い抜いた。
日本の自動車メーカーがガソリン車にこだわっている間に、世界ではEVの開発競争が激化した。自動車の主流がEVになると、日本の自動車メーカーは部品を作る下請け企業になる可能性がある。AmazonやGoogleも自動運転車の研究をしているというニュースもあり、将来的には「巨大ITが自動車産業を牛耳り、日本はハード部分だけを作るようになるのでは」という予測が現実のものになりつつある。
「ソフト面」も楽観視できない。日本のマンガやアニメは世界で大人気だと騒がれているが、実際は、日本のアニメ業界は中国の下請けになっている。かつては人件費の安い中国にアニメ制作を発注していたが、今は日本の方が安いため、その逆の現象が起こっているのだ。
中国発のオリジナルアニメも世界で人気を博している。もちろん日本にも優れたクリエイターはいるが、中国は日本の10倍以上の人口を持つ。才能あるクリエイターが日本の10倍以上いると考えるべきだ。
日本はものづくり幻想を捨て、ソフト面、コンテンツ作りに力を入れていく必要がある。
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