リクルートワークス研究所が未来予測に取り組んだ発端は、日本社会における「労働供給制約」という切迫した状況に、強い問題意識を持ったことである。労働供給制約とは、社会を維持するために必要な働き手の数を供給できなくなる構造的な人手不足を指す。
社会の高齢化は、著しい労働の需給ギャップ、需要過剰をもたらすと考えられる。人は何歳でも労働力を消費するが、加齢とともに労働力の提供者ではなくなっていくためだ。日本では世界最速で高齢化が進むため、社会に必要な労働力の需給のバランスが崩れ、慢性的な労働供給不足に陥ってしまう。これを「労働供給制約社会」と呼ぶ。
これは、後継者不足や技能承継難、デジタル人材の不足といった産業・企業視点の問題だけではない。生活維持に必要な労働力を日本社会が供給できなくなるという「生活者の問題」なのである。
これから起こる人手不足は、景況感や企業業績に左右されず、労働供給量がボトルネックになって発生する。予測されるのは、人手不足感が特に高い業種が現れることだ。懸念されるのは生活維持サービスの低下・消滅である。物流や建設・土木、介護・福祉、接客などの職種は、すでに需給ギャップが顕在化している。
日本が労働供給制約社会になることは、ほぼ確実な未来である。なぜなら、人口動態統計という最も確実な予測が可能なデータに基づいているためだ。
「Works未来予測20XX」プロジェクトのシミュレーション結果を見てみよう。もし何の打ち手も講じなければ、次のような問題が顕在化する。
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