中高年リスキリング 
中高年リスキリング 
これからも必要とされる働き方を手にいれる
中高年リスキリング 
出版社
朝日新聞出版

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出版日
2024年08月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

デジタル技術の進化が加速する中、時代は「リスキリング」を求めている。リスキリングとは、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」を意味する。本来は、「企業が自社の従業員をリスキルする」などと組織主体で語られることも多い。だが、本書がフォーカスするのは「働く個人」、とりわけ中高年のビジネスパーソンである。この世代は、会社勤めの場合、早期退職、役職定年、定年と再雇用などと向き合うことを迫られている。

本書がめざすのは、「これからも必要とされる働き方を手に入れる」ことだ。そしてその一番の解決策がリスキリングであるという。定年の概念や雇用環境の変化を概観したうえで、リスキリングの具体的な進め方、AI時代に必要なスキルを解説している。リスキリングで注目の分野や、新たな成長領域の仕事に就くためのステップなど、実践的な内容ばかりだ。

著者の後藤宗明さんは、自身がリスキリングの体現者でもある。40代の頃に転職で苦しみながらもリスキリングした結果、デジタル分野でチャンスをつかんだという。そして現在は日本でのリスキリング浸透に力を注いでいる。そんな著者のアドバイスは実に説得力がある。

将来の選択肢を増やし、しなやかに働き続けるために、どんなアクションをとるとよいのか? 本書は、自身のスキルをアップデートし続けたい方々を勇気づけてくれるにちがいない。

ライター画像
松尾美里

著者

後藤宗明(ごとう むねあき)
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。富士銀行(現・みずほ銀行)を経て、米国で起業。帰国後、米国のフィンテック企業の日本法人代表などを務めたのち、2021年に一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立し、代表理事に就任。現在は、リスキリングプラットフォームを提供する米国企業「SkyHive Technologies」の日本代表も務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    これからは定年4.0時代を迎える。定年4.0とは「リスキリングで現在の雇用に頼らない人生とキャリアを自ら創造するシニア像」と定義される。
  • 要点
    2
    中高年の方々は労働寿命と雇用寿命を延ばすことが求められる。ポイントは、マインドセット、スキルセット、ツールセットという3つの「セット」を整えることである。
  • 要点
    3
    AI時代には「学際的スキル」がますます重要となる。
  • 要点
    4
    意識的に自己投資をするとよいのは「スキルと学び」「健康」「お金」「人間関係」「仕事」の5つである。

要約

定年4.0時代のリスキリング

定年4.0とは?
mapo/gettyimages

今後、中高年の方々は、外部環境の変化と向き合い、定年の概念をアップデートする必要がある。経済コラムニスト大江英樹さんの著書では、定年3.0に至る過程が次のように分類されている。

• 定年1.0:生活の不安なくのんびりと暮らせた時代のシニア像

• 定年2.0:「老後のお金」に関する常識が大きく変化した時代のシニア像

• 定年3.0:「お金」「健康」「孤独」の3つの問題をそれぞれ解決すべき時代のシニア像

これらを踏まえると、定年前の現役世代は、定年後も積極的に働くことを前提にせざるを得ない。これから描くべき定年の姿を、著者は定年4.0と位置づける。そのうえで、「リスキリングで現在の雇用に頼らない人生とキャリアを自ら創造するシニア像」と定義する。

労働市場では4つの変化が起きている。それは、「AIやロボットによる単純労働の自動化(ホワイトカラー含む)」「慢性的な人材不足と雇用の偏在(都市と地方)」「大きな労働移動の必要性(配置転換、副業、転職など)」「正社員からフリーランスへ(自分の雇用を自分で創出)」である。こうした変化の結果、高齢者には人材不足の分野でしか働く選択肢がない未来もあり得る。中高年はどんな対策を講じることができるのか。

まずは労働寿命と雇用寿命を延ばすことが必要だ。労働寿命は働くことができる時間を指す。一方、雇用寿命は企業などの組織に雇われる時間を指す。雇用されることが難しくても、個人事業主やフリーランスとして働き、自らの仕事を生み出すことができれば、労働寿命を延ばせるのだ。

技術的失業に関する問題

急激なデジタル技術の浸透により、技術的失業に関する議論が再燃している。技術的失業とは、テクノロジーが浸透し、人間の労働の自動化が進むことで、AIやロボットに人間の雇用が代替されることである。

生成AIを含むテクノロジーの進化により、ホワイトカラー人材の余剰が本格化し、技術的失業は現実味を増している。雇用削減が加速する未来を予測する報道も増えてきた。

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要約公開日 2024.10.25
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