エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書

事例から学ぶ、生産性向上への取り組み方
未読
エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書
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事例から学ぶ、生産性向上への取り組み方
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エンジニア組織を強くする 開発生産性の教科書
出版社
技術評論社

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出版日
2024年07月11日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

現代の企業は、どのような業種、業務形態であれ、エンジニアの貢献なくしては業務が成り立たない。だからこそ、エンジニアの開発生産性が上がれば、組織全体の利益や従業員の働きやすさも大きく向上させることができる。しかしながら、エンジニアの業務は専門的であるため、営業などの他職種や、経験と知識を持たない経営層からすると、具体的にどのように開発生産性を向上すれば良いのか、見当もつかないだろう。

本書は、執筆者たちの豊富な知識と経験に基づき、エンジニア組織の開発生産性向上のための詳細で具体的な方法が、様々な実例とともにていねいに解説された本である。実際にエンジニアの業務に携わっている人にとっては、自分が関わっている業務と照らし合わせながら、開発生産性向上のための課題とその解決策を見つけるための参考になることは間違いないだろう。また、エンジニアの業務に直接携わっていない他職種の人や経営に関わる人であっても、エンジニアの開発生産性向上をどのように実践すればよいのか、正確な理解を得るための一助となるはずだ。

本書で述べられているように、エンジニアだけでなく組織全体で開発生産性向上に関する認識を共有することが重要である。組織の中でどのような立場に置かれているにせよ、本書を読むことで得られるものは大きいだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

佐藤将高(さとう まさたか)
東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻卒業後、グリー株式会社に入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月、ファインディ株式会社立ち上げに伴い取締役CTO就任。Findy、Findy Freelance、Findy Team+、Findy Toolsの立ち上げを行い、プロダクト全体の新規コンセプト策定や企画・開発を担当。

本書の要点

  • 要点
    1
    生産性は「得られた成果物(アウトプット)÷投入した生産要素(インプット)」として表現されるが、それぞれの組織によって何がインプットでアウトプットなのかが異なる。自分たちにとってそれらが何を指すのか、何をもって開発生産性が向上したとするのか、事前に組織全体で認識を共有することが重要だ。
  • 要点
    2
    エンジニアリングの開発生産性が向上すれば、プロダクト提供においてエンジニアリングがボトルネックになることがなくなる。迅速にプロダクトを提供できるようになるだけでなく、エンジニアの採用にも好影響をもたらすだろう。
  • 要点
    3
    課題を可視化するためには、抽象的な観点の定性的な現状把握と数値に基づく定量的な現状把握が必要である。Four KeysやSPACEフレームワークといった指標が有効だ。

要約

【必読ポイント!】 開発生産性とは何か

開発生産性がもたらすもの

近年ではソフトウェア開発で「高い開発生産性」が求められるようになった。企業もエンジニアもそれに向けた様々な取り組みを行っているが、そもそも「開発生産性が高い」とは具体的に何を意味し、どのようにして高められるのかということについての認識がはっきりしていないケースが多く見られる。

開発生産性が改善されれば、プロダクトのリリース時間の短縮や品質の向上が期待でき、企業の採用広報に対しても良い影響をもたらして、エンジニアの働く意欲、組織全体のエンゲージメントを高めることができる。しかし、そのような状況を作り出すことは簡単ではない。本書では、開発生産性を高めるための課題を洗い出し、解決策を提供することが目的とされている。

組織で開発生産性の定義を共有する
recep-bg/gettyimages

開発生産性向上について考える上で必要なのが、「プロダクトは何をゴールとしているのか」を明確にすることだ。プロダクトは、作成されること自体がゴールなのではなく、「プロダクトを使ってもらうことで達成されるKPI」や、それによって得られる売上や利益に意味がある。

開発生産性とは、人によってコンテキストが異なり、様々な意味を指し示す言葉であるため、まずは言葉の定義を明確にしておこう。生産性とは、「得られた成果物(アウトプット)÷投入した生産要素(インプット)」として表現できる。ただし、インプットとアウトプットは組織やプロジェクトごとに多様だ。自分たちの組織や開発チームが何をインプット、アウトプットとするのか、何を開発生産性と呼ぶのかを事前にはっきりとさせておく必要がある。

開発生産性の向上は、エンジニアだけが取り組んで進めるものではなく、プロダクトマネジメントや営業など、組織全体で連携して対応しなければならない。組織レベルでの開発生産性の定義と測定方法の共有、継続的な改善が、プロダクトを成功に導くはずだ。

開発生産性の3つのレベル

開発生産性のレベルとして、3つの階層を定義することができる。

レベル1は、純粋に作業量の観点からどれだけ効率的にこなせたかという生産性を評価する「仕事量の生産性」を指す。レベル2は、仕事量に加えて、「各施策がプロダクトにどれだけの価値をもたらすか」を考慮に入れる「期待付加価値の生産性」だ。開発組織全体のアウトプットについて、「期待される価値がどの程度リリースできたか」を検証する。レベル3は、売上やKPIなど、具体的な貢献を評価する「実現付加価値の生産性」である。組織全体で、「そのタスクが実際にビジネスの目標に貢献できているか」を見ていく。

レベル1は自分たちだけでコントロールできるため取り組みやすいが、最終的にはレベル3の向上を目標としたい。レベル1とレベル2は、成果や結果を「なんとなく」で定性的に把握するだけでなく、「コードレビューやバグ修正に要する時間」「適切なリソース配分」「施策の優先度」など、数値の推移を定量的に把握することも大切だ。レベル3の開発生産性の改善は、組織全体で職務を超えて取り組む必要があるため容易ではない。「どうやったら全チームで連携してユーザーに価値を提供してKPIや売上を上げられるのか」という「改善するマインド」を、全員が持ち続ける必要がある。

開発生産性向上はなぜ必要なのか
JLco - Julia Amaral/gettyimages

スピードと効率をつねに求められるエンジニアリングにおいて、開発生産性の向上にはいくつかのメリットがある。

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要約公開日 2024.10.24
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