経済学は、伝統的にミクロ経済学とマクロ経済学に分野を分けている。ミクロ経済学が対象とするのは個々の市場(労働市場、為替市場、コメの市場など)の需要や供給だ。需要と供給から価格がどう決まるか、そしてそうした価格形成に伴って企業の生産活動や消費者の消費行動はどのように影響を受けるのか、という点が分析の主な対象となる。
経済学で需要と供給について学ぶとき、縦軸には価格が、横軸には需要量と供給量がとられた、右下がりの曲線と右上がりの曲線が交差した図が必ずといっていいほど用いられる。
右下がりになっているのが「需要曲線」で、これは価格が安くなればその商品の需要が増大することを指す。例えば、クレープが1枚500円や1000円もすれば、クレープを買う人はあまりいないと考えられるが、1枚数十円であればクレープを買う人は増えるだろう。需要曲線はこのような関係を示している。
一方、右上がりの曲線は「供給曲線」で、価格が高くなればその商品の供給が増えることを指している。クレープが高く売れるのであれば、クレープを売る人も増えると考えられるが、逆にクレープの値段が安ければ、クレープを売ろうとする人も少なくなるに違いない。
需要・供給曲線のグラフで、2つの曲線の交点は重要な意味を持っている。この点で、需給が一致するからだ。このように需要と供給を一致させる点を「均衡点」と呼び、需給の一致をもたらすような価格を「均衡価格」と呼ぶ。
均衡価格よりも価格が高く、供給が需要を上回って売れ残りが出てしまう状態のことを「超過供給」と言う。また、均衡価格よりも価格が低く、需要が供給を上回って買いたくても買えない人が出てしまうことを「超過需要」と呼ぶ。超過供給や超過需要の状態は長続きせず、均衡価格への調整が行われる。このように価格が需要と供給のバランスを実現するよう調整されることを、経済学では「価格調整メカニズム」と呼んでいる(ただし市場に競争者が多数いて、個々の供給者に価格支配力がない状態(完全競争)の場合)。
需要曲線についてもう少し詳しく見てみよう。需要曲線とは、ある財の価格とその財に対する需要量の間の関係を図に示したものだ。
価格の変化に対して需要量が大きく変化するとき、そのような需要曲線は「価格に対して弾力的な需要曲線」と言い、その場合の需要曲線の傾きはなだらかになる。一方、価格の変化に対して需要量があまり変化しない場合、そのような需要曲線は「価格に対して非弾力的な需要曲線」と呼び、その場合の需要曲線の傾きは急になる。米や味噌などの必需品は価格が多少変化しても需要量に大きな変化があるとは考えにくく、価格に対して非弾力的と言える。一方で海外旅行のような奢侈品的な性格が強いものは、需要は価格に対して弾力的であり、海外旅行の料金が低下すれば旅行者数が大幅に増えると予想される。
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