職場の同僚のフォローに疲れてしまっている人が増えている。職場には「協力」、「助け合い」という言葉のもとに、釈然としない「名もなきフォロー」が数多く存在する。
「人のフォローがしんどくなる」状況が生まれる背景には、産業構造の変化がある。かつては生産性の高い分野に人材が集まっていたが、2000年代以降、生産性の低い分野に労働力が流れるようになった。パートタイマーや非正規従業員の割合が増え、人手不足の職場では「パートの人の仕事がまわるように、正社員が調整する」「本来は正社員の仕事だけど、契約社員がフォローする」といったことが起きている。これが「名もなきフォロー」の正体だ。
「名もなきフォロー」は職場の余裕を奪っていく。誰もが目の前の仕事に手一杯であるため、評価されない穴埋め仕事は避けるようになる。その役割を負わざるを得ないメンバーは、「なんで自分が?」と割を食った気持ちになりやすい。こうして職場での対立が起こりやすくなるのである。
職場の余裕のなさは、働く人のメンタルにも影響を与える。
厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調による休職者は年々増加している。休職者が出ると残りのメンバーの負担が増え、休職者が相次ぐ「休職ドミノ」が起きることがある。
本来、職場では誰か1人が抜けても円滑に対応できるよう、業務の標準化や平準化、1人で複数の業務ができる多能工化が必要だ。しかしそれは、人員に余裕がなければ不可能だ。「1人抜けたらアウト」というギリギリの状況のため、疲労の蓄積からメンタルヘルス不調に陥る人は後を絶たない。
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