脳が一生忘れないインプット術
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える
脳が一生忘れないインプット術
著者
脳が一生忘れないインプット術
出版社
出版日
2024年06月18日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

ドラえもんの秘密道具「アンキパン」に憧れた人は多いのではないか。アンキパンは本をパンに写しとって食べると丸暗記できるという夢のアイテムだ。アンキパンは無理にせよ、テクノロジーは発達したというのに人間の頭の容量は変わらず、むしろインターネットや生成AIに頼れるようになった今、理解力や記憶力が落ちていると思うこともしばしば。生まれながらにして高い能力を備えている人をうらやましく思ってしまう。

ところが本書では、“理解力や記憶力はやり方次第で後天的に高められる”という嬉しい事実が、根拠となる論文や研究を明示して次々と明かされる。情報が絶え間なく更新される現代、一番ほしい能力の一つであるインプット力を飛躍的に向上させる方法を、スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長である星友啓氏がテンポよく解説してくれるのだ。各所にポイントのまとめと読者の共感を呼ぶショートストーリーがあり、頭に入りやすい構成になっているのも、教育者ならではのアプローチだろう。

印象的だったのは、速読や記憶の定着に効果的なノウハウを、たとえば動画によるインプットなら「1.25倍速がおすすめ」といったように極めて具体的に教えてくれるだけでなく、モチベーション維持の方法や情報の見定め方まで指南してくれること。著者が言うように「最高のインプットには、最高のやる気の維持が大切」であるし、インプットする情報がフェイクニュースでは元も子もない。本書はかつてなく情報処理能力が問われる現代に必携の一冊となりそうだ。

著者

星友啓(ほし ともひろ)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長/哲学博士/EdTechコンサルタント
1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修過程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士課程修了。同大学哲学部講師として論理学で教鞭をとりながら、スタンフォード・オンラインハイスクールスタートアッププロジェクトに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて、教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。
著書に『スタンフォード式 生き抜く力』(ダイヤモンド社)、『脳科学が明かした!結果が出る最強の勉強法』(光文社)、『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』『脳を活かすスマホ術』(いずれも朝日新聞出版)、『スタンフォード・オンラインハイスクール校長が教える子どもの「考える力を伸ばす」教科書』(大和書房)、『スタンフォードが中高生に教えていること』『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(いずれもSBクリエイティブ)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    速読ができる人は「つまみ読み」している。つまみ読みのコツは、見出しやタイトルを先にしっかりと読むこと、全体を把握した上でそれぞれにかける時間配分を決めること、章やセクションのはじめと各段落のはじめに目をつけること、だ。
  • 要点
    2
    より速く効率的にインプットするためには、読む前・読みながら・読んだ後の3つのフェーズに分けて「アクティブ・リーディング」を実践するとよい。
  • 要点
    3
    インプットした内容をしっかり定着させるには「リトリーバル」が有効だ。一度インプットした内容を意識的に脳の中から取り戻そう。

要約

速読者が実践する「読み方」

速読の鍵は「目の動かし方」ではなく「脳の理解力」

速読の達人アン・ジョーンズは、784ページに及ぶハリー・ポッター最終作を47分で読破した。アンのような驚異の速読を一般人が真似することは可能なのだろうか。ここでは、インプットの王道である「読む」を、より速くより効果的に行うスキルについて考えていく。

まず、視野を広くしたり目を速く動かしたりしても、アンのような高速読書はできない。さまざまな研究により、視野の広さや目を動かす速さには限界があることが示されている。

またある実験によると、読書時間のおよそ8割は、目から新しい視覚情報をインプットする作業ではなく、脳が言葉の意味を理解する作業に費やされていることがわかっている。つまり速読の鍵は、目の動かし方ではなく脳の理解力にあるのだ。

速読の3つのコツ
Imgorthand/gettyimages

アン・ジョーンズのように、驚異的な速読術を身につけた人たちは一体どのように読んでいるのだろうか。

科学的研究によると、速読者たちは「効率的なつまみ読み」を実践している。これは、書いてある文字情報を全て目に入れようとするのではなく、重要そうな部分にだけ注目する読み方だ。

速読者たちは、「つまみ読み」で得られた情報と自分の持っている知識を重ねて、全体の内容を推測している。冒頭のアンの例では、読んだ本がハリー・ポッターであり、前作までの知識があったことも有利に働いたと考えられる。実際、速読者であっても、予備知識のない文章を読んだ後では、理解度テストの点数は普通の人と変わらないという実験結果もある。

つまみ読みのコツは次の3点だ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3791/4463文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.02.27
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
うまく「聞ける人」と「聞けていない人」の習慣
うまく「聞ける人」と「聞けていない人」の習慣
山本衣奈子
いつもごきげんで感情の整理がうまい人
いつもごきげんで感情の整理がうまい人
鹿島しのぶ
時間デトックス
時間デトックス
吉武麻子
なぜか好かれる「人前での話し方」
なぜか好かれる「人前での話し方」
岡本純子
[新書版]生きる意味
[新書版]生きる意味
アルフレッド・アドラー長谷川早苗(訳)
仕事のできる人がやっている減らす習慣
仕事のできる人がやっている減らす習慣
中村一也
感謝脳
感謝脳
樺沢紫苑田代政貴
4日で若返る「毒出し」のトリセツ
4日で若返る「毒出し」のトリセツ
織田剛