ニセコ化するニッポン
ニセコ化するニッポン
ニセコ化するニッポン
出版社
出版日
2025年01月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたはニセコというエリアについて、どのようなイメージを抱いているだろうか。おそらく「物価が高い」「外国人観光客ばかりで、まるで海外のよう」というイメージが一般的だろう。

本書の著者、都市ジャーナリストの谷頭和希氏は「ニセコ化」というキーワードを提唱する。ニセコ化とは、「『選択と集中』によってその場所が『テーマパーク』のようになっていく」現象のこと。ニセコで言うなら、富裕層の外国人観光客というターゲットを「選択」し、ターゲットを満足させるサービスを「集中」的に提供することで、日本であって日本でない「テーマパーク」のような場所になっている。

さらに谷頭氏は、日本全国の観光地、そして私たちの日々の消費活動においてもニセコ化が進んでいると指摘している。多くの外国人観光客がやってくる都市部の高級ホテルや飲食店街はもちろん、飲食店ならスターバックスやびっくりドンキー、街なら渋谷や新大久保、公共施設なら渋谷のMIYASHITA PARKでもニセコ化が進んでいるというから驚きだ。

ニセコ化により、そのサービスは狭いターゲットに深く刺さるようになる。多様化する現代において、ターゲットが狭まることは避けられないのだから、そのターゲットの心を掴むためにニセコ化を進めるのは企業にとって自然な選択だろう。

一方で、ニセコ化には問題もあると谷頭氏は指摘する。さて、ニセコ化はどのような問題をはらんでいるのか。ぜひ自分なりの仮説を準備してから読み進めてほしい。

著者

谷頭和希(たにがしら かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材等を精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社新書)など。また、講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)、「DayDay.」(日本テレビ)、「Abema Prime」(ABEMA TV)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    スキーブームの終焉とともに集客のピークを過ぎていたニセコは、売りを見きわめてターゲットを「選択」し、ターゲットに合うサービスを「集中」的に提供するというプロセスを通して、世界的なスキーリゾートになった。日本各地の観光地でも同様の「ニセコ化」が進み、集客に成功している。
  • 要点
    2
    スターバックスが成功している理由の一つは、「商品ラインナップ」と「商品価格」の2点において「選択と集中」しているからだ。
  • 要点
    3
    ニセコ化によって「選択」される人がいる一方で、「排除」される人もいる。

要約

「ニセコ化」とはなにか

ニセコ化=「選択と集中によるテーマパーク化」

本書のテーマである「ニセコ化」とは、「『選択と集中』によってその場所が『テーマパーク』のようになっていく」現象である。

もともとニセコ地区は一般的な日本のスキーリゾートだった。しかし、景気低迷やスキーブームの終焉により、経営が立ち行かず、これらの施設は撤退してしまう。

そこに目をつけたのが海外資本のホテルだ。いまやニセコは多くの外国人観光客がやってくる高級リゾートとなっている。

ニセコで行われた「選択と集中」
Keattisak A/gettyimages

外資のホテルはニセコで「選択と集中」を行った。

「選択」とは、その場所にやってくる人々を「選ぶ」こと。ニセコの場合は富裕層の外国人観光客がターゲットだ。

ニセコのラグジュアリーホテルでは、一泊10万円以上はザラ、1週間で3500万円のコンドミニアムもある。物価の高さは、ここにやって来る人を静かに「選択」していると言えるだろう。

さらにニセコでは、「選択」されてやって来た外国人富裕層に刺さるサービスが「集中」的に提供されている。看板は外国語のものばかりで、コンビニでは高級シャンパンが売られており、ホテルスタッフの多くは外国人だ。とにかく外国人富裕層にとって便利で快適な場所にするための空間作りが行われている。

なお、こうした「選択と集中」が起こる大前提として、ニセコの売りの一つである「パウダースノー」があることは見落とせない。「選択と集中」された外国人富裕層たちがこの地にやって来るのは、あくまでニセコの雪質に魅了されているからだ。

ニセコの売りを見きわめ、ターゲットを「選択」し、ターゲットに刺さるサービスを「集中」して提供する。こうしたプロセスにより、ニセコは世界的なスキーリゾートへと大化けしたのだ。

ニセコで進む「テーマパーク化」

私たちは、東京ディズニーリゾートにいるとき、そこを日本だとは思わない。東京ディズニーリゾートの中では、その世界観に合うものが「選択」され、「集中」的に配置されて、イメージを壊すものは徹底的に排除されているからだ。

ニセコも同様である。そこは日本であって日本ではない雰囲気だ。外国語の看板に海外資本のホテル、働いている人は外国人ばかりと、外国人富裕層に合う世界観を作り上げるために、そこで売られるものや施設などが「選択と集中」されている。

「選択と集中」が行われた結果、ニセコは「テーマパーク」のようになったのだ。

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要約公開日 2025.03.07
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