それ、パワハラですよ?
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それ、パワハラですよ?
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2024年10月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「甘やかしては本人のためにならない、自分が若い頃はもっと厳しい環境だった」「パワハラだと言われそうで厳しく指導できない」――もしあなたが部下に対してこんなふうに考えているなら、本書を熟読することを勧める。

著者の梅澤康二氏は、法律事務所の代表であり、労務全般や紛争対応の第一線で活躍する弁護士だ。本書では、梅澤氏が豊富な実務経験に基づいて85の具体的事例を挙げながら、パワハラとは何かを解説している。

複数の人をCCに入れたメールで叱責する行為や、ノルマ未達時に反省文を書かせる対応、過剰な進捗報告の要求、部下の手柄を横取りするような振る舞い、精神的に不安定になっている部下に対する休職の提案……これらがパワハラに該当するか、それとも上司として当然の指導の範疇なのか、あなたは即答できるだろうか。

本書は、誰でも「パワハラか、それとも指導か」と迷ってしまいそうな事例を挙げながら、パワハラと正当な指導の境界線を明らかにし、読者に自身の言動を振り返る機会を与えてくれる。健全な職場環境のもと、部下とともに大きな成果を出したいと願うリーダーにとって、必読の一冊だ。また、上司とのコミュニケーションに悩む人にも手に取ってもらいたい。

著者

【著者】梅澤康二(うめざわ こうじ)
弁護士法人プラム綜合法律事務所代表、弁護士(第二東京弁護士会 会員)。2006年司法試験(旧試験)合格、2007年東京大学法学部卒業、2008年最高裁判所司法研修所修了、2008年アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所、2014年同事務所退所、同年プラム綜合法律事務所設立。主な業務分野は、労務全般の対応(労働事件、労使トラブル、組合対応、規程の作成・整備、各種セミナーの実施、その他企業内の労務リスクの分析と検討)、紛争等の対応(訴訟・労働審判・民事調停等の法的手続及びクレーム・協議、交渉等の非法的手続)、その他企業法務全般の相談など。著書に『ハラスメントの正しい知識と対応』(ビジネス教育出版社)がある。

【マンガ】若林杏樹(わかばやし あんじゅ)
漫画家。普通の人が聞きづらい「ぶっちゃけどうなの?」の部分を、わかりやすく漫画にするのが得意。共著に『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』『貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!』(共にサンクチュアリ出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「パワハラ」と「指導」を見分けるポイントは、行為が業務と関連しているかどうか、行為が業務遂行のために必要であるかどうか、行為が常識的に許容されるものであるかどうか、の3点である。
  • 要点
    2
    企業は社員に対して注意指導をしたり教育訓練を行ったりする権利を有しているため、上司の注意や叱責に恐怖を覚えたとしても、それだけでただちに上司の行為が違法なハラスメント行為だとは断言できない。
  • 要点
    3
    有給休暇の権利を行使した結果、仕事に差し支えが生じるかどうかは、会社が時季変更権を行使するか否かで判断されるべきであって、労働者が自ら検討する問題ではない。上司が有給休暇の取得を認めたのにもかかわらず、取得を叱責されたとしたら、その程度によってはパワハラに該当する可能性がある。

要約

【必読ポイント!】 これって指導? それともパワハラ?

「パワハラ」と「指導」を見分ける3つのポイント

本書では、パワーハラスメント(以下、パワハラ)を、「業務遂行のために許容される限度を超えて相手を苦しめる行為」の総称と定義する。

上司の指導が「合法的な業務命令」なのか、「許されない違法なパワハラ」なのかは、「業務遂行のために許容される限度」に留まるかどうかという観点で区別される。

パワハラと指導を見分けるポイントは、次の3つだ。

(1)業務との関連性:行為が業務と関連しているかどうか

(2)業務上の必要性:行為が業務遂行のために必要であるかどうか

(3)態様の相当性:行為が常識的に許容されるものであるかどうか

「大声での叱責」はパワハラ?
erhui1979/gettyimages

上司から部下への叱責は、どの程度許容されるのだろうか。

そもそも企業は社員に対して注意指導をしたり教育訓練を行ったりする権利を有している。そのため、社員は注意指導や教育訓練に不服や不満があっても、「契約上の義務」として原則的に従わなければならない。たとえ上司の注意や叱責に恐怖を覚えたとしても、それだけでただちに上司の行為が違法なハラスメント行為となるわけではないのだ。

具体的な事例を見てみよう。

広告営業をしている新入社員の20代女性。毎月の目標を達成しているものの、自分の業務が終わると他の社員よりも早く帰宅するので、それが男性上司の気に障ったようであった。ある日、上司に提出物を渡そうとしたときに、「どうしていつも早く帰宅するのか?」「みんなと一緒にがんばろうという気はないのか?」「土日は何をしているのか?」などとフロア内に響き渡るような声で、30分以上どなられた――。

「土日は何をしているのか?」といった私生活上の問題はそもそも「業務との関連性」がないため、上司が大声をあげたり長時間叱責したりする行為は、特別な理由がないかぎり、業務の適正な範囲を超えたパワハラであると評価されやすい。

これに対し、部下が仕事でミスをしたり、危険な行為を行なったりした場合に上司が叱責するのは「業務との関連性」があるとジャッジされるケースが多い。相手の人格や人間性を否定するような叱責でないかぎり、パワハラと判断される可能性は低い。

「高すぎる目標」はパワハラ?

企業は社員に対して「業務の内容や品質を指定する雇用契約上の権利」を有している。その権利行使の一環として、社員に対して一定の業務目標を課すことに加え、業務目標の達成を強く求めることや、業務目標が達成されない場合に改善を求めることも原則として許容される。要するに「会社から一方的にノルマを設定された」「ノルマを達成しなかったことについて叱責された」というだけでは、ただちにパワハラと判断されるわけではない。

ところが、明らかに達成できないノルマを設定したり、ノルマを達成できないことを理由に理不尽な要求をしたりする行為は、業務上適正な範囲を超えたパワハラであるとされる可能性がある。事例を見ていこう。

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要約公開日 2025.03.11
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