プロテニスプレーヤーになったころの松岡氏は、ボレーショットが苦手だった。ボレーショットとは、ボールがバウンドする前に打ち、相手のコートに返すショットだ。
だからこそ、ボレーショットがうまく決まったときは、ここぞとばかりに「ナイスボレー! 修造!」と自分をほめた。
何度も自分をほめているうちに、自分はボレーがうまいのではと思えるようになってきた。そのうち、ネット際のプレイはどんどん良くなっていったという。自分の脳にポジティブな言葉を浴びせることが、苦手意識の克服につながったのだ。
苦手なことに取り組むときには、人にほめられる前に自分をほめてしまおう。
脳科学者の茂木健一郎氏によると、「脳は苦しいなあと思うときほど喜んで動いている」のだそうだ。
つまり、仕事や勉強が苦しく、自分の限界を感じるときにでも、体の中で脳だけは最高に喜んでいるのだ。このことを知ってから、松岡氏はいきづまったり、難解な本を理解できずに困ったりすると、「やったー! 俺の脳、いまブルブル震えて喜ぼうとしているよ!」と思うことにしている。そうすると、ふしぎにいいアイデアが出てきたり、本がすいすい読めたりする。
壁にぶつかったら喜び、乗り越えたらさらに喜ぼう。すると脳も喜んで、どんどん自分を成長させることができるはずだ。
「ベストを尽くす」という言葉はすばらしい言葉だが、そこに言い訳がひそんでいてはいけない。「ベストを尽くす」と言いながら、「ベストを尽くすのだからどんな結果になっても仕方がない」という弱気な気持ちを抱えていることはないだろうか。これは、良くない。
松岡氏は、テニスで自分より強い相手に挑もうとするとき、そのように感じたそうだ。だから、「ベストを尽くす」だけでなく、「勝ちにいく」と付け加えて、自分を力づけることにした。
「ベストを尽くす」というふうに発言するとき、自分の心に弱いところはないだろうか。もし、言い訳がましい気持ちを見つけてしまったら、「必ず契約を取る」「完璧な企画書にする」など、具体的な成果を表す言葉をプラスして、自分を力づけよう。
崖っぷちに追いつめられているときは、無我の境地で最高のものを出せる。だから、崖っぷちには感謝すべき、「崖っぷちありがとう!」なのだ、と松岡氏は語る。
そのため、あえて自分を崖っぷちに追い込むという。手軽な方法に、時間を区切るということが挙げられる。30分で、15分で、目の前のことを片付けると思えば、脳が活性化して集中力も上がる。また、テレビ番組の視聴率でも、「10%取らなければ意味がない!」などと自分を追い込むという。
でも、できないときがあってもいいのだ。崖っぷちから落ちてもかまわない。落ちることを考えるよりも、崖っぷちをつくって挑むことが大事だ。
松岡氏は、「この仕事が終わったら、ケーキだ」と思うだけで燃えてくるらしい。
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