建設業界は細かく分業されている。例えば、新築戸建住宅を一軒建てるために、現場監督、電気、給排水、基礎、外壁、屋根など、10種類以上のプロが関わる。
分業制になっている理由は、工事に関わる行政許可の種類が違い、職種による資格・検定の種類も違うからだ。
一定金額以上の建設工事を請け負うためには、建設業法に定められた行政許可「建設業許可」を取得しなければならない。許可の種類は大工、左官、とび・土工、解体など29種類。建設業許可業者は「国家資格者や実務経験者を常勤で配置しなくてはならない」「経営者に一定期間の経営経験がなくてはならない」「自己資本などが一定額以上なくてはならない」などの要件を満たす必要がある。
加えて建設業界には、厚生労働省所管の建設関係の技能検定職種だけでも30種類以上が存在している。大工などの職人だけでなく、工事の工程管理、品質管理などの「段取り」を行う現場監督=施工管理も国家資格がある。
建設業界の市場規模は国内建設投資だけで70兆円。建設投資は2010年度に42兆円まで減少したが、東日本大震災のあった2011年以降、増加を続けている。
建設業就業者数は483万人で、全産業で4番目に多い(就業者全体の7%)。483万人の建設業就業者の内訳を詳しく見てみよう。
男女比で見ると女性は18%。「男社会」のイメージの強い建設業界だが、5人に1人は女性である。女性就業者のうち18%は現場監督や職人などの「現場職」だ。
職種別で見ると、職人が63%で最も多く、次に多いのは事務職で18%。 施工管理などの技術者が8%で、残りは営業職と管理職だ。「現場職」のイメージが強い建設業界だが、2割弱は事務職である。
年齢構成で見ると65歳以上が17%で、6人に1人は65歳以上と他業界より高齢化が進んでいる。なお、建設業界に新卒で入ってくる若者は微増傾向にあり、「頑張って若者を採用して、高齢化を必死に食い止めている」のが実態だ。
「最近の建設現場は外国人ばかりだ」というイメージがあるかもしれないが、それは誤解だ。国内建設業界で働く外国人労働者は建設業就業者全体の3%弱しかいない。しかも、外国人を受け入れる事業所は東京、神奈川、愛知、静岡など特定地域に集中している。
建設業界の人手不足問題は他業界と事情が違う。建設職人は有料人材紹介も人材派遣も法令で制約されているのだ。
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