本質思考

MIT式課題設定&問題解決
未読
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本質思考
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2015年02月05日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

企業が打つCM、または経営方針転換のニュースなどを見て、違和感を覚えることはないだろうか。その新商品、あるいは組織改革は、その企業を救うだろうか。果たして本当に正しい打ち手であっただろうか。頭の良い人たちが一生懸命考えたはずなのに、「スジの悪い答え」のもと、組織が間違った方向に動いてしまうことが多々ある。

それでは、「スジの良い答え」を導くにはどうすれば良いのか。著者は、表層的な現象だけを見るのではなく、本質から考えることが有効だとしている。具体的には、今その現象が起こっている裏にひそむモデルとダイナミズムを探ることだ。コンサルタントである著者がMITで学んだ「システムダイナミクス」というシミュレーション手法の枠組みから、豊富な事例を用いて本質思考のアプローチを紹介する。

非常に整理された内容で、順を追った説明があり、適切な場所で事例やコラムが入るため、読むスピードと理解のスピードがしっかりとマッチする。前半の「人は意外に深く考えていない」という部分について、全く他人事と思う人は少ないだろう。基礎というと、簡単なことだと考えがちだが、むしろ基礎とはそこをおさえない限り次に進めないということだ。その意味で本書は思考法の偉大な基礎の一つを示しており、新人はもちろん、ある程度の規模で仕事を任されるようになった人まで、自分の思考のクセを見直し、結果を出したいと望む全てのビジネスパーソン必読・必携の書と言える。

ライター画像
ガルシア万知子

著者

平井孝志
ローランド・ベルガー執行役員シニアパートナー。慶應義塾大学特別招聘教授。早稲田大学ビジネススクール客員教授(2015年4月より就任予定)。東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールMBA。博士(学術)。ベイン・アンド・カンパニー、デル、スターバックス、ネットベンチャーを経て現職。製造業、商社など幅広い業界においてコンサルティングに従事し、グローバル戦略、新規事業開発・R&D戦略、営業・マーケティング戦略の立案・実行支援に関わる。経営戦略、マーケティング、ロジカルシンキングなどの企業研修も手掛ける。

本書の要点

  • 要点
    1
    経済的に大きな成長は望めず、情報化が進んで世の中が複雑化した現在、本質から問題を考えることができるかどうかは、アウトプットに大きな差を生む。本質思考を妨げる、自分の思考のクセは改めよう。
  • 要点
    2
    本質思考は、MITのシステムダイナミクスの考え方をベースにしている。現象が生まれる背景にあるモデルを描き、時間の経過とともに生まれてくるダイナミズムを読み解く。
  • 要点
    3
    作成したモデルとダイナミズムをもとに、モデル自体の構造を変えられるようなレバレッジポイント(ツボ)を見つけ、問題を根本的に解決する施策を考える。

要約

人は意外に深く考えていない

本質思考を妨げる9つのクセを見直そう

多くの人が、物事を本質から考えることができず、「思考のクセ」によって表層的に考えてしまっている。はじめに、著者は、ありがちな思考のクセを下記のように9つに分けて紹介している。

①裏返しの結論のクセ

②一般解で満足してしまうクセ

③フレームワークに依存してしまうクセ

④カテゴリー適応のクセ

⑤キーワードで思考停止に陥るクセ

⑥初期仮説に固執してしまうクセ

⑦考えている目的を失ってしまうクセ

⑧プロセス偏重のクセ

⑨主体性を喪失するクセ

まず、初歩的で、思考の入り口にも立てていないというクセの一つが、⑧のプロセス偏重のクセだ。例えば「顧客アンケートを実施すれば、顧客ニーズがどこにあるかということへの答えが出る」といったような、プロセスを回すことだけにとらわれている症状だ。

一方、努力して勉強すればするほど思考が深まらないというジレンマに陥る深刻なクセもある。例えば、SWOT分析などを使って情報を整理するところまでで思考が止まってしまうという③フレームワークに依存してしまうクセ、あるいは「差別化」「コア・コンピタンス」「CRM」などのキーワードを持ち出した時点で抽象的なレベルで思考が止まってしまう、④カテゴリー適応のクセなどの症状だ。著者はこれを「カナヅチを持てばすべて釘に見える」と表現している。ツールを使うこと自体は良いが、それだけで自動的に答えが導けるものではない。常に「So what?(だから何なのか)」を意識することが重要になる。

本質思考とは何か?

事象をモデルとダイナミズムから考える
onairda/iStock/Thinkstock

現象のみを見て、対処療法的にその症状を抑えようとすると失敗する。例えば、業績が下がった際に「コスト一律30%カット」などとするのは表層的な問題に囚われ、わかりやすい目標を掲げてしまったスジの悪い答えと言える。「一律」にカットすることで、将来に必要な研究開発や営業力まで犠牲にしてしまいかねない。表層や枝葉末節に囚われず、本質から考えることが求められる。

著者は、インプットとアウトプットの間にあるブラックボックスこそが本質であるという。現象の裏側には、それを引き起こすモデルとダイナミズムが必ず存在する。そのモデルとダイナミズムの結果として、現象が目の前に現れているのだ。

そこで、まず現象の要素の因果関係を概念図で表し(モデル)、それが今度どのように変化していくか(ダイナミズム)を見ていく。そして、部署ごとなど分解した細かいパーツを見るのではなく、全体を俯瞰し、モデルを変えることで結果として生じている問題を解決する。複雑な事象ほどシンプルに捉えることが重要だ。要素ごとに細かく分解していくと、こんどはその要素の多さに頭を抱えることになるからだ。

わかりやすい例として、広告費がエスカレートするモデルを説明しよう。A社が広告宣伝費を拡大してシェアを伸ばすと、今度はB社も広告宣伝費を拡大して失ったシェアを取り戻そうとする。そうするとA社はさらに広告費を注ぎ込む。これをモデルとして図に表すと、お互いに広告費がどこまでもエスカレートしていくループの構造になる。それを見て、この広告合戦に乗ることは得策だろうかと考えると、お互いが疲弊しきる前に、この構造(モデル)自体を変える必要があると気づくだろう。つまり、根本から問題を解決するとは、モデルを変えることなのだ。

【必読ポイント!】 本質思考のステップ

モデルの描き方

本質から考えるための一連のステップを、一つずつ見ていこう。まず、現象の裏にひそむモデルを描き出すことが必要になる。

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要約公開日 2015.04.17
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