「よい発想をしよう」と考えるとどこか構えてしまい、誰も反対しないものを探してしまいがちだ。そこで、著者は「妄想」「発想」「構想」を意識的に分けて考えるようにしている。「妄想」の段階では、できるだけ多く「常識外れで笑いがとれるくらいのアイデア」を出せばよい。妄想なのでどれだけ羽目を外してもいいという安心感がある。優れた発想は非常識の影に隠れているので、「妄想をする」ことは発想に向けた必須作業だといえる。
新しい発想とは、今までの常識からすると非現実的な危うさを含んでいるものだ。つまり、すぐに了承されるアイデアは、古くて使いものにならないのである。また、企画や戦略立案において、「あるべき姿」にとらわれていると、新しい発想にたどり着くのは難しい。過去の成功体験の中で培われてきた「常識」が存在し、それを基準にした「自社の強み」を活かそうとすればするほど、既存の事業と大差のない企画しか生まれないからだ。お決まりの「顧客の声」「あるべき姿」を追求せずに、自社の商品や新しい技術、新しい能力をもった人材を活用して何か面白いことができないかなと妄想してみることをすすめたい。
企画の初期段階では、「別にやらなくてもいいじゃないか」と考えることが新発想を引き出してくれる。例えば、「営業部強化のための企画をつくれ」と言われたら、企画書の作成プロセスを考える前に、「別に営業部を強化しなくてもいいじゃないか」と考えてみるのだ。すると、なぜ「今」強化する必要があるのか、営業がなくてもサービス部門が代行することが可能ではないかというふうに、固定観念を一気に打ち破るアイデアが出てくる。何かを改善しようという議論の際に、この一言が効果的な発想転換法になってくれるはずだ。
発想段階は、妄想の中から、ある論理性に基づきアイデアを整理していく段階である。抜け漏れや着眼点の有効性を確かめるためのチェック項目を紹介しよう。
まずは、頭を整理するために「問題」と「問題点」を区別するとよい。ここでの「問題」とは、「困ったと思われる事象」全般であり、「問題点」は、工夫すれば回避可能だったかもしれない事象を指す。例えば、重要なプレゼンの日の朝に、目覚まし時計が壊れていて寝坊したという例では、「問題」は遅刻したことや時計が壊れたことであり、「問題点」は「重要な日にもかかわらず目覚まし時計を一つだけしかセットしなかったこと」だといえる。この二つを分離すれば、議論が大幅にスムーズになるはずだ。
また、「課題」という言葉も、問題や問題点、解決策がいりまじるケースが多く、あいまいかつ危ない言葉である。著者は、「課題」の定義を「問題点を発生させないようにするために必要な施策」としている。先述の遅刻の例だと、課題は「壊れてもいいように目覚まし時計を二つもつ」といったものを指す。また、課題解決の具体的アクション群を「対応策」と呼ぶことにすると、「課題」は問題点と対応策の架け橋のようなものだと考えられる。
一つの問題点に対して課題が複数存在する場合もありえるし、その対応策も複数存在するのが普通だ。そうなると、対応策を唯一の解決策だと決め打ちするのは非常に危険であり、企画失敗の最大の原因になってしまう。多少抽象的になっても、問題、問題点と正攻法で向き合い、課題とその対応策を考える段階で、本当にそれが課題なのかと試行錯誤することが重要だ。
また、日本では企画において「事例崇拝者」が非常に多い。実現可能性から考えると、事例があることは重要だが、はたして本当に参考になるのだろうか。
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