著者は日産自動車に入社したばかりのころ、車体溶接工場を見学しているときに、上司から「火花が散っている瞬間だけが、本質的に付加価値を生み出している」ということを学んだ。ザ・ボディショップにおける火花が散る瞬間は、商品を購入されたお客様を笑顔で気持ちよく送り出す瞬間である。また、スターバックスにおける火花が散る瞬間は、最高のコーヒーを笑顔でお客様にお渡しする瞬間だ。
ブランド力のある一流の会社は、「どうやって儲けるか」ではなく、「企業は何のために利益を出すのか」を大切にする。スターバックスが特別な存在であり感動体験を生み出せているのは、スターバックスと、そこで働く人たちにミッションが深く浸透しているからだ。個人も同様だ。一流の仕事をしている人は「何のために働くのか」という明確なミッションを持っているからこそ、火花の輝きに向かって力を注ぐことができ、新しい価値を生み出せる。
ミッションを強く自覚すると、それを達成するために、自分なりのロードマップを描けるようになる。経験を重ね、成長していく過程で、ミッションを構築し持ち続け、その実現に人生をかけることが、社会を変えることにつながっていく。
企業のミッション、そして人間としてのミッションの重要性を著者に気づかせてくれたのはザ・ボディショップである。ザ・ボディショップのミッションは「社会と環境の変革を追及し、事業を行うこと」であった。このミッションは、動物実験への反対、コミュニティ・フェアトレードの推進、自分らしさを大切にすること、人権の尊重、そして環境の保護という5つの価値観から成り立っていた。ミッションの背景には、創業者アニータ・ロディックの社会の現状に対する怒りが存在している。ザ・ボディショップは、化粧品の製造販売を通じて社会変革を行っている企業だったのである。
ところが、著者が店舗を見学してみると、実態は違った。
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