元・外資系人事部長が見た

要領よく出世する人

未読
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要領よく出世する人
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要領よく出世する人
出版社
東洋経済新報社
出版日
2015年03月12日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

日系企業に勤めた後、フォード、ロイター、GE、モンサントなどの名だたる外資系企業で人事の責任者を歴任してきた著者は、どんな人が出世するのか、長年つぶさに見てきたのだという。日系企業と外資系企業では社風や制度など異なることも多いが、共通点もある。その最たるものが、「要領のいい人が出世する」ということ。これは、いつの時代の、どこの国の、どんな企業でも変わらない、と著者は言い切る。

「要領がいい」という言葉はネガティブなイメージを伴う場合も多いが、本来の意味は、「物事の処理や立ち回りがうまい」ということ。これは管理職(=出世する人)に不可欠な能力で、言い換えるなら、要領がいい人が出世するのは当然のことなのだ。

本書では豊富な実例を交えながら、要領よく出世する人たちが普段から心掛けている習慣や大切にしている考え方を紹介している。それらには、ビジネスの基礎力や人間関係の基盤の築き方など、企業人に欠かせないアイデアが詰まっている。たとえあなたが出世を強く望んでいなかったとしても、身につけておいて損のないものばかりだ。

要領よく出世する人は、要領の悪い人と比べて圧倒的に幸せに働いている、と著者は言う。ここに、本書の真意がある。物事を上手に処理し、関係者の間でうまく立ち回れるということは、働き方の費用対効果が高い。よって、短時間で成果を出せるため、結果として仕事を楽しむことができるし、プライベートも充実するのだ。「仕事が楽しくない」「プライベートが充実していない」、と感じている人たちにも読んでいただきたい一冊だ。

著者

村上賀厚(むらかみ のりあつ)
有限会社ノリ・コーポレーション代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授として、人材マネジメントや組織行動・リーダーシップ分野を担当。同志社大学商学部卒業、イェール大学経営大学院経営管理学修士取得。大阪市生まれ。
マーケティングエージェンシー2社で営業およびプランナーとして勤務後に、株式会社日本コンサルタント協会および住友ビジネスコンサルティング株式会社で人事コンサルティングを経験。
イェール大学経営大学院留学後は、フォード自動車(日本)株式会社(人事課長)、日本JDエドワーズ株式会社(人事部長)、日本モンサント株式会社(人事総務本部長)、ロイター・ジャパン株式会社(人事本部長)、GEコンシューマー・ファイナンス株式会社(人事本部ディレクター)など、世界の上場企業の日本法人で人事の責任者を務める。独立後はノリ・コーポレーション代表取締役として研修やコンサルティングを行うとともに、収益不動産の開発も手掛ける。

本書の要点

  • 要点
    1
    要領よく出世するための習慣や考え方は多岐にわたるが、中でも特に身に付けておきたいのが、経営者の視点で考えること。そのためのフレームを習得すると、さまざまな場面で応用できる。
  • 要点
    2
    出世の3カ条は、「①引き、②運、③力」。実力がなければ出世できないのは当然だが、いちばん大切なのは上司との相性「引き」である。
  • 要点
    3
    ゼロかイチかではなく、常に中庸を意識する。そのバランス感覚が出世を左右する。

要約

【必読ポイント!】 「上司の上司」の視点で考える

経営者の視点を意識する
LDProd/iStock/Thinkstock

本書では要領よく出世する人の習慣や、仕事をする上で大切にしている考え方を豊富に紹介している。その中でも特に身に付けたいのが、「『上司の上司』の視点で考える」。「上司の上司」とは、つまり経営層のこと。要領よく出世する人は、経営層の視点で考えるためのフレームを理解し、さまざまな習慣へと応用している。

ハーバード大学のロバート・カッツ教授が1955年に発表した、マネジメントの段階ごとに必要なスキルを解説する「カッツモデル」というものがある。マネジメントの最初の段階はテクニカル・スキル(業務遂行能力)が重要で、トップマネジメントになるとテクニカルよりもコンセプチュアル・スキル(概念化能力)が必要になってくる。コンセプチュアル・スキルは、将来像を描くための論理的思考、問題解決力、応用力と言われており、「上司の上司」の視点で考えるには、このスキルを身につけることが大切だ。

コンセプチュアル・スキルを身につけるフレーム

コンセプチュアル・スキルを身につけるには、以下のフレームで物事を考えることが必要とされている。

まず、社会的環境(政治、経済、社会、技術)であるPESTが、3C(自社、顧客、競合)というタスク環境に影響を与える。例えば経済においては、景気が上向きか下向きかによって需要に影響するので、設備投資をどの程度行うかの判断に影響を与える。技術では、インターネットの普及が一般消費財の小売りや証券会社に大きな影響を与える。マクロ環境であるPESTは企業経営の環境である3Cに多大な影響を与える。その中で企業が勝ち残るために必要な鍵(KSF:Key Success Factor)が導かれ、そのKSFを実現するために企業は7Sという経営要素を工夫していく。7Sとは、次の7点を表わしている。

「Shared value(共有価値観)、Strategy(戦略)、Structure(組織構造)、System(経営システム)、Style(経営スタイル・企業文化)、Staff(人材)、Skill(スキル・能力)」

このように、自社がどういう状況にあるのかを、「PEST→3C→KSF→7S」のフレームで考えることこそが、上司の上司、つまり経営層の視点で会社を見ることだ。このフレームを通して事業の構造的な特徴を把握していれば、さまざまなことに惑わされず、冷静に的確に仕事を進められるようになる。

上司との関係はこう築く

成果を上司に与える
Andreas Rodriguez/iStock/Thinkstock

「部下にほとんど仕事をやらせているにもかかわらず、うちの上司は手柄を独り占めにしようとする」。そんな愚痴をよく耳にするが、要領よく出世する人はこういった類の文句は決して言わない。「できる部下」は、まず自部門が成果を出すように尽力する。会社の上層部が自分の上司に高い評価を与えれば、その下で働いた部下として、自分も上層部から高い評価を得られるからだ。その部下の中で誰がよりいい仕事をしたかというのは、上司から人事評価を通して個別に見られる。

上層部が、あなたの上司に当たる管理職を第一に評価するのは当然のことで、人事部はもちろん、上層部の人たちもその管理職1人の成果でないこともわかっている。それを理解している人たちは上司をサポートしながら、成果をどんどん上に上げ、長期的には自分の評価も高めている。

上司の弱みを探し、フォローしている

上司の文句を言う人は大勢いるが、上司はあなたが思っているほどバカではない。

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要約公開日 2015.06.26
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