なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?

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なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?
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なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?
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出版社
出版日
2015年05月25日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

ローソンの店内をまじまじと見たことがあるだろうか。健康な野菜を育てる農法で作られた生野菜やカット野菜がずらりと並ぶ。新潟コシヒカリが使われたおにぎり。糖質を気にする人向けの、おいしい低糖質のパン。そして、わずか百数十円で買えるおいしいスイーツ。こうした風景は、誕生40年を迎え、全国に約12000店舗を構えるローソンで見られるものである。

本書は、気鋭のブックライター上阪徹氏がローソンの進化の裏側をつぶさに描いたものである。上阪氏は、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』をはじめ、読者が思わず目を見張るような切り口で、ビジネスの先駆者を緻密に取材し、その魅力を掘り起こしている。本書では、驚くべき変化を遂げるローソンの現場の最前線で活躍している人々への取材によって、ローソンが支持される秘密が次々と明らかにされていく。

1日60万個が売れる超メガヒットとなった「プレミアムロールケーキ」の開発秘話や、自社出資の農場から野菜を直送する「ローソンファーム」の全国展開、「Ponta」データ分析の活用、ヘルスケアへの進出。ローソンの取り組みの多彩さと、その裏側にある情熱と努力に驚く人も多いのではないだろうか。

前社長の新浪剛史氏に関連する、経営視点の書籍は多々出版されているが、現場を変えていった社員にスポットライトを当てた本書は、異彩を放っているといえる。小売業や流通業だけでなく異業種の人にこそ、ぜひ読んでいただきたい一冊である。

ライター画像
松尾美里

著者

上阪 徹(うえさか・とおる)
1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。アパレルメーカーのワールド、リクルート・グループを経て、95年よりフリーランスのライターとして独立。雑誌や書籍などで執筆。
著書に『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)、『「胸キュン」で100億円』(KADOKAWA)、『弁護士ドットコム、困っている人を救う僕たちの挑戦』(共著・日経BP社)、『僕がグーグルで成長できた理由 挑戦し続ける現場で学んだ大切なルール』(日本経済新聞出版社)、『成功者3000人の言葉 人生をひらく99の基本』(飛鳥新社)など。インタビューで書き上げるブックライター作品も60冊以上を数える。

本書の要点

  • 要点
    1
    『プレミアムロールケーキ』は、おいしいクリームと生地にこだわり抜き、最高で1日60万個が売れる超メガヒットとなった。女性が続々とローソンに足を運んだことで、コンビニスイーツのイメージも一新した。
  • 要点
    2
    農業生産法人のローソンファームを全国23カ所に展開し、農業に足を踏み入れることで、ローソンの客層の拡大と、危機的状況にある日本の農業の変革を目指している。
  • 要点
    3
    Pontaから得られる一日1000万人の購買データと、勘や経験を掛け合わせることで、発注や商品開発の判断の精度を高めることができる。

要約

【必読ポイント!】 驚きのスイーツ開発秘話

自らの舌で140種類の生クリームをチェック
AndreaNiga/iStock/Thinkstock

コンビニ各社のロールケーキブームの火つけ役は、ローソンの『プレミアムロールケーキ』だった。154円の売値で、このおいしさを実現したのは、商品本部本部長補佐を務める鈴木氏だ。デザートで競合に出遅れていた2009年当時、彼はメインターゲットを男性から女性にシフトするという大胆な決断を行った。

鈴木氏が取り組んだのは、百貨店や専門店のスイーツを食べ慣れている女性ならではの声に耳を傾けることだった。一番多かったのは「生クリームがおいしくない」というもの。値段は少し上がるが、生クリームを変えてスケールメリットを活かし、百貨店や専門店のデザートよりは安いという新しいマーケットを作ろうと考えた。「最初はミルク感があるけれど、すごく軽いクリーム」という求める味を目指し、半年間、140種類のクリームを自らの舌でチェックした。おいしいクリームを作ることが肝だと考え、納得した味を巨大な流通網に供給できる、釧路の乳業メーカーにクリームの納品を頼み込んだという。

おいしいクリームに気づいてもらえるスイーツとして選ばれたのは、ロールケーキだった。「有名店に負けない品質で、一本売りではなく一人前のものを作れば、世の中にない。」プレミアムロールケーキは、生地を巻くのもクリームを絞るのも、人の手で行われている。鈴木氏は、ふんわりとした繊細な生地にもこだわった。生地の温度、焼く時間、スピードなど、工場で何十回もラインテストを行った。

1日60万個が売れる超メガヒットに

当初、ターゲットを20代、30代の女性に絞るのはコンビニでは前代未聞で、鈴木氏は社内の猛反対に遭った。味だけでなくネーミングやパッケージも改良を重ね、役員会での試食という社内の意思決定の場がやってきた。社長がクリームを一口食べた直後に出てきたのは「うまいっ!」という一言だった。その後、役員全員のスタンディングオベーションとなった。

これを自信にして、新商品のPRにも人海戦術で全力を尽くした。加盟店への試食のお願いに、社員や家族への優待の配布、そしてトレンドに敏感な女性たちが集まる場へ積極的に打って出た。「お客さまやお店の人に『これ、おいしいんだよね』ということが伝わっていないと意味がない」という鈴木氏の信念の表れだ。

その結果、プレミアムロールケーキは、売り切れ続出の反響やテレビCM、モンドセレクションの金賞受賞と相まって、最高で1日60万個が売れる超メガヒットとなった。女性が続々とローソンに足を運んだことで、コンビニスイーツのイメージも一新してしまったのだ。

そもそもコンセプトが違う『MACHI cafe コーヒー』

挽きたて、淹れたてのコーヒーで気持ちがアガる
Fuse/Thinkstock

ローソンでは、スタッフが淹れたコーヒーを受け取る対面販売形式をとっており、顧客が自分で機械を操作するセルフ式とは一線を画している。

ローソンの『MACHI cafe コーヒー』をつくり上げたのは、商品本部本部長補佐の吉澤氏である。プロジェクト発足時、コーヒーメーカーに全部お願いする方法では競争に勝てないと吉澤氏は読んだ。競合他社がまねできないような商品、サービスをつくり、コーヒーを通じて会社を変えていきたいという思いがあったのだ。

そんなとき、お客さまへのヒアリングで得たヒントはこれだった。

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要約公開日 2015.07.15
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