日経ビジネス 日本経済入門

未読
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日経ビジネス 日本経済入門
出版社
日経BP
出版日
2014年11月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

日経ビジネス編集部が総力を挙げたという本書は、基礎編・理論編・実践編の三部構成で成り立ち、非常にバランスのとれた一冊となっている。経済を基礎からきっちりと学びたい人にとって、または、競争の激しいビジネスで勝ち抜くための基本知識とスキルを身につけたいビジネスパーソンにとって、最適な入門書である。

基礎編では、今更聞けない「経済学の基本中の基本」をとても分かりやすく解説。理論編では、経済学の代表的な理論を多数取り上げ、それぞれ具体例を示しながら詳細を展開。実践編では、先行きを見通すために必要な経済指標や株価指数、企業分析について触れた後、歴史を辿りながら現代の経済問題を紹介している。最後には、今後の日本経済の行方について、現在の日本の課題と将来像を議論する。

このように、多方面から「経済」を取り扱い、「経済」にまつわる様々な分野を網羅しつつ、262頁という非常にコンパクトなボリュームに収めている経済書は他にないのではなかろうか。解説にはふんだんに図表も取り入れているため、難しい理論もすんなりと頭に入るであろう。忙しいビジネスパーソンにとって、社会人として知るべき経済知識を効率よく学べる良書である。もしくは、経済学部の学生のサブテキストとしてもお勧めできる。本書を読むことで、経済ニュースの理解度がより深まることは間違いないであろう。

著者

監修者

I部、Ⅲ部
後藤康雄(三菱総合研究所主任研究員/チーフエコノミスト)
1988年京都大学経済学部卒業後、95年米シカゴ大学で修士号(経済学)取得、2011年京都大学で博士号(経済学)取得。88年日本銀行入行。金融研究所、国際局などを経て97年三菱総合研究所入社(政策・経済研究センター)。現在、独立行政法人経済産業研究所上席研究員(非常勤)、京都大学経済研究所非常勤講師、内閣府統計委員会専門委員を務める。専門はマクロ経済、金融、産業組織論、中小企業研究。主要著作に『中小企業のマクロ・パフォーマンス』(日本経済新聞出版社、2014年)などがある。

I-1、I-4、Ⅱ部、Ⅲ-5、Ⅲ-7
安田洋祐(大阪大学大学院経済学研究科准教授)
2002年東京大学経済学部卒業。最優秀卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し、経済学部卒業生総代となる。2007年米プリンストン大学でPH.D.取得(経済学)。政策研究大学院大学助教授を経て2014年から現職。編著書に『改訂版経済学で出る数学 高校数学からきちんと攻める』(日本評論社、2013年)、『学校選択制のデザイン-ゲーム理論アプローチ』(NTT出版、2010年)。共著に『身近な疑問が解ける経済学』(日本経済新聞社)、『「学問」はこんなにおもしろい!憲法・経済・商い・ウナギ』(星海社、2014年)、『日本の難題をかたづけよう 経済、政治、教育、社会保障、エネルギー』(光文社、2012年)など。テレビ番組にも出演多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちの生活すべてに関係する「経済」。その経済を研究する学問が「経済学」であり、経済学を学ぶことで、今までとは違った視点で世の中を捉え、賢い判断を下すことができるようになる。
  • 要点
    2
    GDPの拡大である経済成長は、「労働」「資本」「全要素生産性」から成る。そして、経済活動の勢いを表すのが「景気」であり、景気は「好況」「後退」「不況」「回復」を繰り返しながら循環してゆく。
  • 要点
    3
    日本は人口減少と少子高齢化が同時に急速に進んでおり、2050年には現役世代1.5人で1人の高齢者を支える状況になる。労働力の減少と扶養者の増加は経済成長の後退を意味する。

要約

【必読ポイント!】経済のしくみ-経済ニュースが理解できる基本知識

経済の基本
Stephen Rees/iStock/Thinkstock

経済とは何か。色々な定義があるが、本書では「モノやサービスの人気をお金に換える仕組み」としている。まず、モノやサービスを生み出す行為である「生産」が基本となる。例えば、「歌う」という行為は、世界的な歌手の場合、年間数十億円もの収益を生み出す。

しかし、素人が歌ったところで、何のお金も生み出さない。「歌う」という行為に、誰かがお金と交換する価値を見出すことで、経済活動に結びつく。つまり、歌うという行為に人気が加わることで、付加価値が生まれ、立派な経済活動となるのである。

さて、人気はモノやサービスの価格にも影響する。人気が高まるほど、需要が高まり、そのモノやサービスを欲している全ての人々に行き渡らなくなる可能性がある。すると、より多くのお金を支払っても欲しい、という人が出てくる。このように、価格は上昇してゆく。一方で、需要以上に供給量が多く、そのモノやサービスを売る側の在庫が余ってしまったりすると、販売元で価格を下げるなど、在庫を減らす行動に出ることもある。そのような場合は、モノやサービスの価格は下落する。

経済成長を示すGDP

GDPは、Gross Domestic Productの頭文字を取ったものであり、その国に住む人々が1年間に生み出したモノやサービスなどの合計を指す。そして、GDPの拡大は、経済成長を意味する。例えば、バブル時代とされる80年代の日本のGDPは右肩上がりで伸びたが、バブル崩壊後の90年からの20年間は、「失われた20年」とも呼ばれ、GDPもほとんど伸びなかった。一方で、中国は90年からの20年間でGDPが15倍以上に拡大し、著しい経済成長を遂げた。

GDPが大きいほど経済活動が盛んであることを示すが、必ずしもその国の豊かさとは直結しない。国民の豊かさを示す指数は、GDPを人口で割った「一人あたりGDP」で見ることが多い。例えば中国のGDPが日本のGDPの二倍になっても、中国の人口は日本の10倍であるため、一人あたりのGDPは日本のほうが高くなる。従って日本は中国より豊かとされる。

一方、日本より経済規模が小さい国のルクセンブルグやノルウェーなどと日本を比べると、一人あたりのGDPは低くなり、それらの国に比べて豊かとは言えない。

経済拡大の要因

GDPの拡大である経済成長は、次の3つの要因から成るとされる。「労働」「資本」「全要素生産性」である。「労働」とは人々が働くことで、「資本」は生産設備、全要素生産性は技術進歩を指す。

経済成長率とは、これらの労働・資本・全要素生産性のそれぞれの増加率を足し合わせたものとなる。例えば日本では少子高齢化が進み、労働の拡大は見込めず、コスト高により海外への資本移転が進む中、唯一望みとなるのが技術進歩である。全要素生産性の増加である「イノベーション」が経済成長の鍵を握っているのである。

景気とは何か
alzay/iStock/Thinkstock

経済活動の勢いを表すのが「景気」である。景気は「好況」「後退」「不況」「回復」を繰り返しながら循環してゆく。景気の上昇局面では、人々の消費が活発となり、企業の業績も向上し、働く従業員の給料も増え、それがさらなる消費を呼び込む。しかし、下降局面となると、商品やサービスの販売が低下し、それに伴い企業の生産と業績も低迷し、従業員の給与は下がり、消費はさらに冷え込む、といった悪循環に陥る。

景気の良し悪しを説明する理論は様々なものがあり、そのうち需要面に注目する伝統的な説が4つある。

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要約公開日 2015.09.10
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