経済とは何か。色々な定義があるが、本書では「モノやサービスの人気をお金に換える仕組み」としている。まず、モノやサービスを生み出す行為である「生産」が基本となる。例えば、「歌う」という行為は、世界的な歌手の場合、年間数十億円もの収益を生み出す。
しかし、素人が歌ったところで、何のお金も生み出さない。「歌う」という行為に、誰かがお金と交換する価値を見出すことで、経済活動に結びつく。つまり、歌うという行為に人気が加わることで、付加価値が生まれ、立派な経済活動となるのである。
さて、人気はモノやサービスの価格にも影響する。人気が高まるほど、需要が高まり、そのモノやサービスを欲している全ての人々に行き渡らなくなる可能性がある。すると、より多くのお金を支払っても欲しい、という人が出てくる。このように、価格は上昇してゆく。一方で、需要以上に供給量が多く、そのモノやサービスを売る側の在庫が余ってしまったりすると、販売元で価格を下げるなど、在庫を減らす行動に出ることもある。そのような場合は、モノやサービスの価格は下落する。
GDPは、Gross Domestic Productの頭文字を取ったものであり、その国に住む人々が1年間に生み出したモノやサービスなどの合計を指す。そして、GDPの拡大は、経済成長を意味する。例えば、バブル時代とされる80年代の日本のGDPは右肩上がりで伸びたが、バブル崩壊後の90年からの20年間は、「失われた20年」とも呼ばれ、GDPもほとんど伸びなかった。一方で、中国は90年からの20年間でGDPが15倍以上に拡大し、著しい経済成長を遂げた。
GDPが大きいほど経済活動が盛んであることを示すが、必ずしもその国の豊かさとは直結しない。国民の豊かさを示す指数は、GDPを人口で割った「一人あたりGDP」で見ることが多い。例えば中国のGDPが日本のGDPの二倍になっても、中国の人口は日本の10倍であるため、一人あたりのGDPは日本のほうが高くなる。従って日本は中国より豊かとされる。
一方、日本より経済規模が小さい国のルクセンブルグやノルウェーなどと日本を比べると、一人あたりのGDPは低くなり、それらの国に比べて豊かとは言えない。
GDPの拡大である経済成長は、次の3つの要因から成るとされる。「労働」「資本」「全要素生産性」である。「労働」とは人々が働くことで、「資本」は生産設備、全要素生産性は技術進歩を指す。
経済成長率とは、これらの労働・資本・全要素生産性のそれぞれの増加率を足し合わせたものとなる。例えば日本では少子高齢化が進み、労働の拡大は見込めず、コスト高により海外への資本移転が進む中、唯一望みとなるのが技術進歩である。全要素生産性の増加である「イノベーション」が経済成長の鍵を握っているのである。
経済活動の勢いを表すのが「景気」である。景気は「好況」「後退」「不況」「回復」を繰り返しながら循環してゆく。景気の上昇局面では、人々の消費が活発となり、企業の業績も向上し、働く従業員の給料も増え、それがさらなる消費を呼び込む。しかし、下降局面となると、商品やサービスの販売が低下し、それに伴い企業の生産と業績も低迷し、従業員の給与は下がり、消費はさらに冷え込む、といった悪循環に陥る。
景気の良し悪しを説明する理論は様々なものがあり、そのうち需要面に注目する伝統的な説が4つある。
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